#001 転生 ①
どうも、GAPです。
これから、よろしくお願いいたします。
最初に知覚したのは眩しさだった。浮遊感に包まれて、静かなる安息。暖かさと少しばかりのむず痒さに身を委ねてしまいそうになる。
俺は何故此処に?
しかし、その疑問向き合う間もなく、ソレは現れた。
「ふぉっふぉっふぉっ、初めましてじゃのぉ、名も亡き者よ」
「…アンタ、誰?」
「む? ああ、儂か。儂は、神じゃの」
「痛々しいですね」
「……………殺すぞぃ、とまあ、死んどるんじゃけどなぁ。お主は」
俺はやはりなと思いつつ、神(笑)に話の先を促す。
「まあ、本題に入ろうかの。お主には転生してもらうつもりじゃ」
「………何故?」
「ふくく、簡単じゃよ」
少しばかり神は溜めて、悪巧みをする餓鬼のように言った。
「暇潰しじゃよ」
「何っ!?」
俺はつい、言葉をあらげて魔法学校の校長のような外見の神につかみかかる。が、すらりとかわされ、眠らされた。
「ふぉっふぉっふぉっ、さぁ、始めようかの。『神々の暇潰し』の仕込みじゃ!」
神は嗤い、人は躍る。
まさにソレである。
白に塗りつぶされている世界に俺は降りたった。 そして、目の前には無数の球体。
俺は何故か知らないが、ソレを知覚した瞬間に、手で掴み、喰っていた。
[個体名:■■■はEXスキル【全知自我】を取得しました]
[個体名:■■■はEXスキル【天衣無縫】を取得しました]
そんな声が聞こえたような気がするが、気のせいだろう。そんなことよりも、このウマい球体を食べるべきだ。
[個体名:■■■はEXスキル【戦時無双】を取得しました]
[個体名:■■■はEXスキル【神速脚冷】を取得しました]
[個体名:■■■はEXスキル【疾風迅雷】を取得しました]
[個体名:■■■はEXスキル【火炎煉獄】を取得しました]
[個体名:■■■はEXスキル【絶対零度】を取得しました]
[個体名:■■■はEXスキル【羅刹修羅】を取得しました]
[個体名:■■■はEXスキル【絶対防御】を取得しました]
etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.
俺が周囲に存在していた球体全てを食べ終えたときだった。
突如して、既知でありながら、未知の感覚に襲われる。
肺が、心臓が、血管が、細胞が、ありとあらゆる組織が、酸素をよこせと叫んでいる。
呼吸をしようにも、喉がつまり、吐きそうになる。
思考の冷静さすら奪いかねないほどの激痛が走る。
ままならぬ感覚。もがき苦しむしかない感覚。それら全てに強かに締め付けられ、意識すらも混濁していく。
そして、遂に泣いてしまう。
泣いたとたん、酸素が送り込まれ、激痛が消える。
だが、俺が思ったのは、みっともないということだ。大の大人が泣きわめくことに対する嫌悪感。それが確かにあったのだ。
それから客観時間、三年が過ぎた頃、ようやく俺の自我が形成される。泣きわめく赤子の自我から、俺の自我へと代わる。
はっきりと見えるようになった眼が乏しい光源の中、捉えたのは古めかしい格好をした修道女だ。そして、乏しい光源は、見間違いでなければ蝋燭の火だ。
「ムーマくん、はい、あーん」
そう言ってスプーンでスープをすくいあげ、こちらに向ける修道女。
ムーマとは、俺のことだろうか?
そして、気づくのは、この室内にはどうも電化製品がないということだ。
そもそも、現代社会において、電化製品が一つもないということは、どういう事なのだろうか?
時代遅れ? いや、違う。あり得ない。
なら、田舎? いや、それもないだろう。俺の祖母に会いに行ったとき、確かに“いろり”らしきものはあった。しかし、きちんと、電気や水道も通っていたし、ましてや、蝋燭で電球の代わりをするなど、停電時のみだ。いや、停電時でも、懐中電灯があったが。
ならば、一体どういう事なのだろうか?
『転生』。
あの神(笑)はそう言っていた。それに、『神々の暇潰し』とも。
「好き嫌いはいけまちぇんよー」
うざい。じゃなくて、五月蝿い。
そう思っていると、修道女が俺の口の中に、無理矢理スープを突っ込んできた。
熱くもなく、冷たくもない。というより、ぬるくなってて美味しくない。
「あいだぶぶーば!」(訳:美味しくねーよ!)
「おー、美味しかったでちゅか? 良かったでちゅねー」
「ばぁ…」(訳:はぁ…)
内心、溜め息すら赤ちゃん語に変えられるのかと思いながら、周囲を見渡す。
本当に、こは別世界、または過去なのだろうか?