遡る過去
「な、なんで…俺がもう一人…」
『まだわからないの?僕はもう少し若い頃の君だよ。僕は中学生の頃の君。まだ思い出せないの?君が何年間も苦しんだ頃の事を…』
「や、やめろ!やめてくれ!!」
その時俺は全てを思い出したのだった。
僕は小学校5〜6年の頃ずっと虐められていた。すごく辛く、親も毎晩喧嘩ばかりで、相談なんか出来ず1人で抱え込み、先生も信じてれず、1人孤独に過ごしていた。毎日がすごく辛くて泣きたくて孤独で。でも、そのおかげで勉強がはかどって私立の中学を受験して、無事受かりそのおかげで親も仲直りした。そこには小学校の人は1人もいなく、弱い自分を消そうと一人称を僕から俺に変えた。そこで海とも出会え、それはよかった。しかし、勉強はガタ落ちし、母方のお祖母様は病気で亡くなり…特にこれといったいい思い出もなく学生時代を過ごして来た。しかし俺は今更何故これを思い出させるのか…?
『やっと、思い出したみたいだな』
「あぁ…初心に戻った気がするよ…嫌な意味でな。なんで今更これを思い出させたんだよ…」
『それが分からないならまだ帰れないな…思い出せよ。君のお祖母様が亡くなった時に出て来た、お前宛の手紙を…さ』
お祖母様の…手紙…?
「お母さん…何で親孝行もさせてくれないのよ…」
母が隣で泣いている。俺だって悲しい。それに親孝行をしたかったのならもっと早くしておけばよかったのに…
「凌…少しこちらへ来なさい…」
お祖父様が俺を呼んでる。
「はい。お祖父様。何でしょうか」
「まぁ、座れ。…ばあさんの引き出しから凌宛にって出て来たんじゃ。これはお前に渡しておく。」
お祖父様の手に握られていたのは少し色あせた古いノートだった。
「お祖母様が…僕にですか?…ありがたく頂戴いたします。」
「ここで見るといい。わしは少し席をはずでのぉ。」
襖は閉められ8畳半の部屋に1人になった俺はノートのページを開いてみた。そこには、僕へのメッセージや詩、一言などがたくさんお祖母様の字で書かれていた。
・人の事を悪口言う人こそ言うことを気にしているもの。
・世の中心の優しい人はほんの一握り。その一握りに入りなさい。
・幸せと不安は紙一重。もちろん、好きと嫌いも紙一重。
・嫌なことをする人は嫌なことが帰って来る。人に感謝されることをすればその分自分に返って来る。
などと、ずらっと今の俺の心に響く言葉が沢山書かれてあった。その時俺は目から涙を抑えることは出来なかった。その場でいろんな思いがこみ上げて来て、優しかったお祖母様が実際いない実感や、今までの苦労。泣けなかった自分相談する人のいない孤独さ。それをお祖母様は全部分かっていてくれた優しさ。俺はその日涙が枯れるほど泣いた。その時、後ろで亡くなったお祖母様が見守っているような気がした。