眩しい人と一緒に
ああ、眩しい……なあ……
なぜかいつもアランさんを見るとくらくらしてしまう。
いや、イケメンすぎるからだろうな。うん。
「おーい、ちゃんと意識はあるかな?それじゃ、今日の訓練始めるよ~?」
よし。ちゃんと訓練しようか。イケメンフェイスなんて気にするな!俺!
「おっしゃあ!やったるわ!そのイケメンくだいたる!」
木刀を突きつける。
「毎回その仇みるような目はやめないかい!?」
……そんなのしらない!
互いに木刀を構える。
俺の構えは右下に持つ構え。受け流しの構えだ。
対するアランさんは俺の顔を貫くような正中の構えだ。
もう3年ほど繰り返しても、いまだに慣れない独特の緊張感が走る。
アランさんとの距離は木刀で3本分くらいだ。1歩で近づくのは厳しい。
「それじゃ、いくよ、セイ君!」
アランは刀を振りかぶる。軽快に踏み出された足は、その幅を一気になくしていく。
「毎回思うけどどんな脚力してるんだよ!」
上から迫る刃を下から跳ね飛ばす。
「よいしょ!」
刃を戻すまもなく、首筋に振り下ろされる。
軽く体を縮める。頭上に鈍い風切り音が通り過ぎる。
「っらあ!」
「っふ!!」
俺の横に振り切られた胴への刃は後ろに大きく飛びのかれることで避けられた。
その距離、およそ10メートル。
「ちょと、今のは反則だろ!どんだけ飛びのいてくれてんの!」
「普通だよ、普通。セイ君にもこれくらいしてもらいたいけど、ね!」
地面がえぐれるほどの力で跳んだ、アランのまっすぐな突きが迫る。
「言われずともお!」
その突きを半身に右に避け、相手の刃に自分の刃を伝わせ、左にそらす。
大きく前に踏み出し、そのまま顔面向かって木刀を叩き込む!
「やばい!」
刃をそらすために勢いは少々落ちてしまっているが、腰の振りを加えた威力は、十分すぎるほどであった。
さらに、アランの跳躍による勢いも乗っている。
「その顔面もらったアアア!!!イケメン面よくだけろおォォォ…」
……コン。
だが、アランの顔に当たった刃にはその威力がなくなってしまっていた。
「!?っどうしたの、セイ君!」
力なくセイの手から刃は零れ落ち、前へと倒れる。
とっさにアランはセイを支える。
セイの表情は、苦痛に染まっていた。
「本当にどうしたんだよ!セイ君!セイ!?」
◇
そのとき、強大な『化け物』が、町の外で目を覚ました。
〈腹が減ったぞ!ヒト共はどこにいった!〉
牙をむき出すソレは、しっかりと町を見据え、
〈あそこだな?待っていろ、俺のエサども!〉
超えられるはずのない町の城壁を、駆け上り始めたのである。