不吉な予報
道をテンポよく走り抜ける。
町の中心街にはいろいろな露店が出ている。
いつも訓練所にまっすぐ行こうと思うのに、よく焼けた芳しい肉の香りや、甘酸っぱい果物の放つフレッシュな空気、掘り出し物の埋まっていそうなガラクタの山、他にも興味を引くものばかりだ。
最初のころはいつも散財してしまい、遂に財布を持っていかないようにしたのは懐かしい。
誘惑を断ち切って、走り続ける。
訓練所が、目前に見えた。
◇
再びラインドルフ宅玄関先
「ねえ、そういえばあんた知ってる?」
おばちゃんが声を潜め、神妙な顔をする。
ラインドルフも、真剣な顔になる。
「なんだ?そんな顔して話すのは、セラをうちに運んできたとき以来じゃねえか?」
「そうねえ……もう5年くらい前かしら……ってそうじゃなくて、
城壁の外の『あいつら』がこれまでにないくらい増えてるのよ!」
「何っ『あいつら』がか!?……もう100年くらいそんなことなかったろう!?」
ラインドルフが声を荒げる。
「ちょっと、そんなに大声ださないの!……私にしか多分感じれていないと思うわ。
『千里眼』なんてスキル、もってるの私くらいだと思うし」
「おいおい、あんたそんなレアなスキル持ちだったのか?何でパスタ売りしとるんだか……」
あきれたように言って、やれやれと首を振る。
「ちょっと!そんなことはどうでもいいのよ!!
……とにかく、ここが危険になるかもしれないのよ。城壁が高すぎるせいで、軍も廃れて動ける状態じゃないだろうし……とにかく、気をつけとかなくちゃいけないわよ」
「ああ、そうだな……気をつけよう」
ラインドルフは大きく首を振る。
それで満足したかのように、おばちゃんの顔が元に戻る。
「それじゃ、また明日ね!!パスタ売りしに行くから~!!!」
「おうよ!またな!!」
明るく返事を返す。
唐突に告げられた不吉な情報。
おばちゃんを見送った後、ラインドルフはその場に立ったまま考える。
(おいおい、それが本当で、もし、壁を突破されたらどうするんだ?今のこの国は平和ボケなんだ。もはや軍も便利屋に近いものになりつつあるし……大丈夫なのか、この国は?)
ふと、空を見る。
晴れた空の向こう側には、暗雲が立ち込めていた。
今回書いて思ったこと
おばちゃんすごい人かも