過去から今
いろいろ変なところは指摘していただきたい。
それでは、とりあえずどうぞ!
俺は、一体何から逃げているんだっけ?
「はあっ、はあっ……」
俺は、ひたすらに走っていた。
心臓は今にも破裂しそうなほどに苦しくなっている。足は今にももつれそうで、腕ももう力が入らずに垂れ下がっているような状態だ。体中が悲鳴を上げている。
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……」
それでも走らなくてはいけない。ただ、ひたすらに、逃げなきゃ行けない。
頭が朦朧(もうろう)としてくる。走馬灯のように思い出すのは、親父の最期の言葉。
『お前は、生きて帰れ!必ずだぞ!!分かったか!!!』
親父の遺言を、守らなくては。そうだ、ああ、逃げなきゃ。
足場の悪い荒地を、ただ、走って、走って、走って走って走って走って―――
「あ、やっと、城壁が、見え―――……」
ふと見えたのは、大きな影。
上を見れば、血に染まった牙。挟まった服の切れ端は、親父のそれで―――……
「ああアアぁああアア!!!!!」
視界が、闇に染まった。
◇
「うわぁああ!!」
「朝から何だ!うるさいわ!!」
響く罵声。ベットから飛び起きる。油汗がハンパない。
「!……ああ、また夢かよ……」
昔の夢を見てしまったようだった。
部屋の窓から差し込む日に目を細めつつ、ごそごそとベットから這い出る。
「ったく……飯ならできてるぞ。さめないうちに食え。」
階段を下りれば、台所には、とにかくムキムキで、浅黒くて、顔にはやけどの跡が見え隠れする、暑苦しいおっちゃんからの優しい気遣い。
その名も、ラインドロフ・イシルクツア。
名前を逆から読んでみよう。本当に暑苦しい。うん。
『武器屋の親父』と呼ばれる、鍛冶師だったりする。
いつも『家事師』としか思えない。作る武器といっても、包丁ばかりである。
朝には、なぜかいつも多種多様のパスタを繰り出す猛者である。
なんだかんだで、美味い。
これがかわいい女の子とかならいいのになあ……。
そんなことを思いつつ、食卓を囲む。本日は手抜きの骨頂、塩パスタ。
…調理がうまいといっても、手抜きはどうしようもない。流石にまずい。うん。まずい。
ん?どんな味かだって?パスタと塩だけで食ってみれば分かるさ!
月に一度出るか出ないかのレアパスタを食べつつ、外の小鳥のさえずりに耳を傾ける。
ただ、ひたすらにのどかな朝だった。
……パスタがまずかったが。
◇
少年が「壁の向こう」から生還したのは、5年ほど前の話。
少年は、あのときに死ぬ運命にあったはずだった。
化け物は、少年の中で眠り続ける。
目覚めの日は、そう遠くないのかもしれない。
書いて思ったこと
塩パスタってなんだよ