プロローグ
初投稿。
目が覚めたとき、ガラス越しに満点の星空があった。
都会の色(光)に染まっていない、月のほのかな光の身が照らし出す空。
その空は、普段見慣れているあの明るいけれど、どこか濁ったような藍色の空とは比べ物にならない。
ただ満点に散らばる星々の光に、空らを従えるように輝く月が映る。
その景色を見たときの感動は、どういっていいものか。あの時の幼かった俺には思いつかなかった。
どれだけ、そうしていたのか。起きたか、と父の声が前の椅子から届く。
星をよく見ようと窓際に寄った身じろぎで気付いたのだろう。父の声は平坦ではあったがどこか愉しげだ。
ここの空は、凄いだろうと父は言う。俺はそれに無言で返した。
父に顔を向けたときに、星から目を離してしまったらあの星空が消えてしまいそうで。
父は、そんな反応を特に気にすることはなかった。変わらず、前を向いてハンドルを握っている。
俺が、返事をしないからあきらめたのだろう。僅かな振動を持って地上の景色は動いていく。
地上の景色が動いていても、変わらず空に書いた絵は変わらない。快晴で良かった。
雲一つない景色の、それを多々目に焼き付ける。窓に切り取られた景色だけれど、いつまでも飽きもせず見ている。
着いたぞ、そんな声がかかってきたのはどれくらいの時間がたったのだろう。
いつの間にか止んだ土の上を走る音は消えていて。自然、俺は外に飛び出した。
父が声をかけるより先に駈け出していた。ここに連れてこられた理由なんてとうに頭の中になんかなくて。
ただ、この星空が一番よく見える場所を探して。上を見上げながらただ駆けた。
「上なんか向いて危ないぞ。人にぶつかったらどうする。」
そうして、ぶつかってからそんなことを言われたのだ。