孤独を愛した少年の話
……自分は弱い。
もともと人と関わるのは苦手だったんだ。
……それなのに自分はその世界に飛び込んだ。
その世界で自分は、自分から行くことはできない……と言うよりしないのに、相手から来てくれることをただひたすらに期待して待っていた。簡単に言うと構ってほしかったんだ。
もちろんそんな気持ちを誰かが気づけるわけがない。だから来てくれないのは当たり前だった。……けど、期待してしまうのだ。誰かが自分の言葉に反応してくれることを。
しかし現実はやっぱり甘くない。なにも反応がないことを理解して傷心する。そして、それをわかっていながらも同じことを繰り返していた。
そんななか、仲良くなった人が数人できた。その人達と話をしているとすごく楽しかった。そっちの世界に行くことがとても楽しみで仕方がなかった。
けど、忙しくなって自分がその世界に行く頻度が減り、入り込む時間も遅くなった。
最初はあまり気にならなかった。早くその世界に入ってみんなと話をしたいと思ってた。けれど……。
……いつからだろう。苦しくなってきたのは……。
何の気無しに世界に入り込んでまっ先に視界に入ってくるのはみんなの会話。とても楽しそうにしているみんなの姿。
いつのまにか仲良くなっていた人同士での、自分にはわからない相談事。自分を除く複数人でのふざけた談笑。
それを見て、理解する。自分が入り込む余地などないことを。自分が思っていた以上に自分という存在がみんなの中で希薄だったことを。
気にしないようにしようとも思った。けれど自分がそこにいるだけで心は苛まれていた。
だから自分は逃げたんだ。
自分はその選択肢を選んだ。輪の中に入り込む努力をするのではなく、輪から遠ざかったんだ。努力をしてまた傷つくなら、もう苦しまないよう逃げたほうがいいと判断して……。
……自分は弱い。
もともと人と関わるのは苦手だったんだ。だったらもう……ひとりの世界に閉じこもろう。
こうして自分はこっちの世界の殻にこもることにした。こっちならば自分のやりたいことに集中できる。理想や自分の気持ちを洗いざらいさらけ出すことができる。
例えこれが間違った選択だったとしても、この選択が今だけはこの傷ついている心を癒してくれるから。
……さあ綴ろう。自分の理想も思いも……。すべてをこの、創造の地で。
しゃがんでいた自分は立ち上がると、一歩を踏み出す。
真っ黒だった闇の世界が、壁から剥がれていくかのように消えていく。
視界に広がるのは自分の創り出した世界。まだ完成していない創りかけの物語。
「この世界の先を創りあげないと……」
そう呟いたあと、歩きだす。まだ未完の、世界の端へと。
「この世界をボクの理想に……」
狂気に満ちた笑顔を浮かべながら。