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約束  作者: 月夜 宵
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「そんなの気にしなくていいんじゃないか?いろいろする手間が省けるなら、ラッキーじゃないか。」


一緒に住んでいる父は、その疑問を相談したときにさして気にも留めずにこう返された。そのなげやりな言い方と、なんとなく同じような口調で返されたことに少し苛立ちを覚えたのは内緒で・・・


「・・・店長、卯月アサヒって人、知っていますか?」

「君のお父さん?もちろん知っているよ。俺の幼馴染」


初めて疑問を口にした時の衝撃。世界は広いのに、世間は狭いという先人の言葉は本当にどんなときにも適応されてしまう言葉なんだと痛感。嫌な予感はしていた、だから口に出してみただけなのに・・・そう口にした店長の如月さんはなんか嬉しそうに笑っているし。日頃からお店をするだけあって、人当たりのよさそうなニコニコ笑顔を張り付けたままの眼鏡おじさんな人だけど、2年くらい一緒に仕事をして、本当にうれしそうなときの顔と営業スマイルの違いは見分けがつくようになってきた。


「如月?お前今更気づいたのか??」


 父はそんなことを返してくる始末。

さも二人はずいぶん前からそのことに気づいてきたみたいに。

ヨルのあまり細かいことは気にしない、人のことは詮索しない父親譲りの性格のせいでもあるが、ヨルが「SToNe」で働きたいと思ったことは全くの偶然なので仕方がない。

ヨルは短大を卒業して二十歳から5年間、保育士として近くの保育園で働いていた。毎日仕事場と家の往復で、遊びに行く気力も起きさせないくらい日々が苦しい時期が続いて・・・仕事の合間に飲むコーヒーの香りと苦みが、口に入れる一粒のチョコレートの甘みが、全身の細く張り巡らされた細胞にまでいきわたり張りつめていた緊張感を少しだけ解してくれるあの解放感はすごいものだったなと今も覚えている。いつも辞めたい、いつか辞めたい、やめられない、怖い。いつ辞めてやろうか・・・仕事終わりに頭をめぐる思考のループを巡らせていた時に、このお店を知った。

その日は早番だったけれど、いつものように仕事が終わらなければできない雑務、製作物の仕上げや書類制作を終わらせ、保育園を出たのは終業3時間後の時過ぎ。


世間のお母さんを尊敬する。仕事が終わって子どもを迎えに行って、一息つく間もなく子どもと旦那さんのご飯、お風呂の世話、後片付け、洗濯、掃除。自分の時間が少しも取れない。旦那は手伝ってくれない。もう何もかも投げ出して逃げてしまいたい。そう話していたお母さんがとうとう子どもを連れて離婚した。そんな話が仕事中に舞い込んできたので、それについての情報を自分の中で整理しながら歩いていた。日頃から自分で何もかもしなければ気が済まない性格をうかがわせるお母さんだったので、もう少し上手くできないかな?肩の力を抜いたらどうかな?と思いながら世間話という名の愚痴を聞いたことがあるお母さんだったが、旦那さんも比較的話やすそうな人だったし、お願いすればいろいろやってくれそうだけどな・・・離婚を回避する方法はなかったんだろうか・・・職場で先生方と話をしているとき、そんな持論をぶつけてみると、賛同してくれる先生もいれば「外面だけでは見えないことも多いのよ・・・」と、意味深に嘆くふりををして見せる既婚者の先輩。


外面だけではわからない・・・確かにもっともだと思った。

子どもと遊べて楽しい、癒される職業だねとよく言われる。人によるのかもしれないが、外部からは想像もつかない色々な見えない作成書類に、大切な子ども達を一日預かるということの重大さ、子どもの正直な言動により傷つく毎日。しかしそれよりなにより怖いのは、女の多い職場でのプライドのぶつかり合い。モンスターペアレントが恐れられる教育業界だが、保護者なんかより仲間の保育士の法が何倍も恐ろしい。

どの職場にもある、キャリア社会で女の強い職場は、老若に関わらずプライドの塊のような女性がごろごろしている。

自分のことをそんなに説明する気は無かったが、ここまで力説しなければ気が済まないほど、前の職場は強烈だった。そしてそのことを、少しでも多くの人に知ってもらいたいということは、保育士ならば誰もが思っていることだと思うから、ここで言わせてもらいたい。




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