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失踪記録  作者: 釜ヶ崎愛
6/10

北海道での記録②

会社から逃げて1週間がたった。

あれだけ威勢が良かった上司も俺を追いかけては来ないらしい。

辞めてしまってから寝起きがとてもスッキリするようになった。

今まで重かった体が、別人のように軽くなった気がする。


俺はバイクと共に日本列島を北へ旅していた。

地図もなく道路標識に従って、国道を走り続けた。

町を抜け、森に入り、集落を通り、また町にたどり着く。

そんなことの連続だった。

走っている時間は常に何かを考えている。

仕事の失敗、成功、同僚の顔、学生時代の友人たち、親、兄弟。

過去のことをずっとグルグルと考えてしまうことが俺の悪い癖だ。


いつの間にか青森県に入っていた。

初夏に差し掛かって、日差しが徐々に強くなっていく。

一方で、山から流れてくる風は冷たい。

俺は数日風呂に入っていないことにふと気が付き、地元の銭湯に出向いた。

「あんた、どこからやってきたの?」

地元の老人に話しかけられた。平日に成人男性が来ること自体が珍しいのだろう。

出身地と目的のない旅であることを伝えた。

「そういう人生に迷ったやつはたまにいる。北海道へ行くと良い、仲間がいるはずだ」

本州で行き場がなくなった奴らが仕事を求めて札幌に集まるらしい。

開拓民しかいないから人間関係は薄く、無駄な付き合いがない分、生きやすいだろうと。

昔の価値観で話している様子だったが、北海道は悪くないと思った。


津軽海峡を渡り、函館に来た。

海鳥が港に集まり、路面電車が町中を走っている。

北海道と言っても土地勘が全くない。

主要都市間でどれほどの距離があるのかさえ知らなかった。

まだ、冬まで時間がある。

夏の間に北海道を回って定住できそうなところを見つけようと思った。


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