表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失踪記録  作者: 釜ヶ崎愛
5/10

北海道での記録①

毎日、誰かの怒号が飛ぶ会社だった。

売上目標、いわゆるノルマの未達成に対して、とんでもない罵倒を浴びせている。

こんな商品を売るために皆生きているわけではないのにと悔しい思いでいっぱいだ。

目標さえ達成できれば怒られずに済む。

生きているために働いているはずなのに、働くために生きている感覚しか湧かない。


この会社は毎月、社員に売上目標を自主的に設定させてくる。

ただ、自主的と言っても経営層が考えた数字が上から降ってきて、それを部長の判断で誰がどの程度、負担するか決めることが自主性と言われているだけだ。

普通は勤続年数や経験、担当しているお客さんの会社規模で負担する数字は決まるが、性格がねじ曲がった部長は、嫌いな奴に大半の売上目標をなすり付けて、お気に入りの奴には確実に達成できるように数字を操作する。

そうすることで、部長のお気に入りの目標達成率は目に見えて良くなり、出世が出来る。

一方で、いつまでも達成できない巨額ノルマを背負ってしまった社員は数か月たたないうちに消えていく。

ついこの間も飲み会で部長の要求した通りに酒を注げなかった弱気そうな新入社員をこの方法で、1週間で辞めさせている。

俺も過去に何度も標的になっては耐え、数字ではなく媚を売ることで生き抜いてきた。


もうこの環境には、うんざりだ。


辞表を提出した。

部長は相変わらず「お前みたいな奴は他へ行って通用しない」だのと抜かしている。

退職を認めないこと、有給休暇は使用させないことを口酸っぱく言ってきたので、録音したうえで人事部に全く同じ内容の辞表と音声記録を提出し、会社を無断欠勤した。


俺は賃貸を解約して、会社から電話が来ないように番号を変えた。

もう誰とも話したくもない、関わりたくなかった。

万が一、警察に捜索願を出されないように「戻ってくる」と実家に手紙を出した。


中古の大型バイクを購入して、北へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ