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私のことを信じないで下さい〜令嬢の小さな反抗が奇跡を起こす〜

作者: はち


私の名前はシルビア=アローラ、一応公爵令嬢だ。

なぜ一応なのかというと、お母様が亡くなった後に来た後妻と子供達にそれはもう煙たがられ、お父様も見て見ぬふり。

屋敷にいても居場所もない名ばかりの令嬢だからだ。

そんな私が向かっているのは大公家。

皇帝の命により私は大公の元へ嫁がされる。

今日はその為の顔合わせの日。


「アローラ令嬢、こちらで少しお待ちください。」


バタンッ


侍女が強くドアを閉めるなんて…普通の令嬢なら激怒するだろうな…うん、全く歓迎されてないね。

でもそれでいい。だって私は脇役だから。

この世界は前世で私が読んだ小説の中なのだ。

皇帝の命令で結婚させられた大公。妻は皇帝のスパイで大公家の情報を全てリーク。そんな状況に頭を抱えていた頃、ヒロインと出会い、恋に落ちた。

ヒロインと出会った彼はすぐに妻と離婚、皇帝と対立する事になったが周辺諸国の力を借りて帝国との戦争に勝ち、ハッピーエンドを迎える。

…つまり私は皇帝のスパイになり、これから大公の妻となる脇役なのだ。


―コンコンコンッ―ガチャッ―


青みがかった黒い髪に、燃えるような赤い瞳。

24歳という若さで数々の戦争に勝利してきたガラル大公国の大公ヴィンター・デル・ガラリア。この物語の主人公。


「お初にお目にかかります。アローラ公爵家が娘。シルビア・アローラと申します。」


「ヴィンター・デル・ガラリアです。お待たせして申し訳ない。お座りください。」


一旦お茶を飲んで落ち着く。さて、本題に入るとしますか。


「単刀直入に申し上げます。大公閣下、私のことを信じないで下さい。」


「…令嬢、それはどういう意味ですか?」


とくに取り乱さない辺り、さすがだわ。


「数日後、皇帝陛下との謁見があります。その時私はスパイとなるよう持ちかけられるでしょう…ですが断ることなどできません。」


「…そうでしょうね。」


なぜ断れないのか…理由は聞かないのね。


「ですので…絶対に私を信じないで下さい。大公家のことは何も教えず、監視もつけて貰って構いません。」


「わかりました。一つ聞きたいのですが、なぜ令嬢は私にそれを?」


「きっとこれが、私の人生最後の反抗になるからです!」


私が皇帝に逆らえない理由…それは隷従の契約をされてしまうからだ。

隷従の契約は、術をかけた相手の出した条件をクリアすれば解除できる。けれど私は一生解除する事ができない。

なぜなら"大公に愛される事"が私の解除条件だから。

だから原作でも、抗うことなどできなかったのだ。


「それでは、用も済んだので帰ります。大公閣下、これからよろしくお願い致します。」


「…馬車まで見送ります。」


私…なんでこんな世界に転生しちゃったのかな。

もっと…幸せな世界がよかった…。


「…令嬢。お気をつけて。」


「えぇ。お互いに。」


ーーーーー


数日後、皇帝との謁見で私は隷従の契約をさせられた。

そしてその1週間後には大公家へと向かわされていた。


ーーーーー


大公家へ着くと、使用人達が整列して待っていた。

さすがに礼儀として出迎えてくれるのね。

そして大公が私の元へとやってきた。


「改めて、これからよろ「話があります。」


挨拶も途中で遮られたかと思ったら、ぐいっと手を引かれて執務室まで連れて行かれる。


「あ、あの「何故言わなかったのですか?」


「へ?」


「あの時、あなたは皇帝のスパイとなる事を断れないと言っていた。私はなにか脅されているのか、としか考えてませんでした。それなのにまさか、禁術である隷従の契約をさせられるなんて…。」


「…言ったところで、何か変わるのですか?」


あの時、あなたは何も聞かなかった。

もう私は一生皇帝の奴隷だ。

だったら何も望まない。何も期待しない。


「この話はもう終わりにしましょう。」


きっと初対面の時に彼は私に監視をつけたのだろう。

そこで私と皇帝が隷従の契約をしたことを知った。

原作では彼が隷従の契約のことを知ることはなかったのに。


「すみません。私と皇帝の問題に…あなたを巻き込んでしまって。」


「……」


何も答えることはできない。だってその通りなのだから。

家族にも愛されず、皇帝の奴隷となり、無理矢理結婚させられ、そしてヒロインが現れたら離婚される。

こんなにひどい設定…作者は鬼だわ。


「契約の解除方法で何か私に手伝えることは「閣下、言ったはずです。この話はもう終わりにしましょう、と。」


解除方法は教えられないって知ってるでしょうに。

口にしようとすると声が出ないし、文字で書こうとしても手が言うことを聞かなくなる。

それに"大公に愛される事"なんてないんだから。


「結婚式当日まで部屋で過ごしますので、ご安心を。」


いつのまにか執務室の前に来ていた侍従長と侍女長に案内され、大公妃の部屋へ。


「何かお申し付けがあれば仰ってください。」


「基本的に1人でいたいから、侍女達は外に椅子を用意してそこで待機していてくれる?何かあったらベルで呼ぶわ。」


「…承知いたしました。」


近くに人がいると、それだけ皇帝へ与える情報が多くなってしまうから。


「一体私が…何をしたっていうのよ。」


疲れが溜まっていたせいか私はそのまま眠りについて、大公との夕食をすっぽかした。

そして次の日から引きこもり生活が始まった。

朝食と夕食は大公と一緒にとり、昼間は本を読んだり、刺繍をしたり、縫い物をしたり、昼寝をして時間を潰した。

これが引きこもりニート生活!最高!と思ったがいつまで続くかわからない生活なので慣れてはいけない。


コンコンッ


「「奥様、よろしくお願いします!」」


そして何故か侍女達が続々とやってくるようになった。

気まぐれに縫い物や編み物をあげたら、噂を聞きつけた侍女がまた訪ねてくるという連鎖。

あげく、好きな人に自分で作ったものをあげたいから作り方講座を開いてくれと…。

まぁ、お茶菓子を用意して恋バナしてるだけだし、皇帝に聞かれて困る話はないからいいけど。


「奥様、お庭がとっても綺麗ですよ!お散歩しましょう!」


「閣下からのお許しが出たらね。」


「お庭の散歩くらい、大丈夫ですよ!」


「うんうん。今度聞いておくわ。」


「そう言って、聞かれたことないですよね?」


「そういえば結婚式まであと数日ね。当日はよろしくね」


「それはもう!奥様のことをキラキラに輝かせます!」


「そうだ!今日は全身マッサージしましょう!」


まるで自分のことのように楽しそうな侍女達。

話を変えた事に気づかれなくてよかった。



ー結婚式当日ー


「すごい。本当にキラキラしてる。」


侍女の言った通り、全身キラキラに輝いている。

お肌もつるピカ。化粧も上品に。ドレスに無数に散らばる宝石。装飾品は大公妃が結婚式で代々つけているものらしい。

こんなもの…つけさせてもらってもいいのか?


コンコンッーガチャッ


「迎えに…」


「?大公閣下?どうされました?」


「いえ、とても綺麗です。」


「あぁ、ドレスも装飾品もとても綺麗ですよね。用意していただきありがとうございます。では行きましょう。」


「…はい。」


参列者のない簡易的な結婚式。

誓いの言葉の後は新郎新婦がお互いの指輪に口付けをするだけでいいらしい。正直よかった。

その後は姿絵を描いて終了。


「ふぅ。やっと終わったぁ〜。」


「お疲れ様でした。少し早めの夕食にしましょう。」


「っ!着替えてきます!」


その日の夕食は私の好きなものばかり出た。

そういえばいつのまにか好みを把握されている。大公家の使用人達は凄いな。


「では、私は少し仕事が残ってますので。また後で。」


「あ、はい。また後で〜。」


ん?また後で?何故?

…………

あ。今日は初夜か。世間体を気にして一緒にすごすのかな?

じゃあ夫婦の寝室を使う事になるのね。

私、自分の部屋以外の場所わからないけど。

まぁ侍女達がなんとかしてくれるでしょう。


「奥様。閣下がいらっしゃるまで起きてて下さいね。」


「は〜い」


なんだかすっごい磨かれた。

そのおかげでポカポカして眠い。

閣下はいつも遅くまで仕事をするっていうから…まだ当分来ないはず………。

ハッ…ダメだ…ソファーで座って待って…な…きゃ…。


「…眠ってしまったんですね。今夜はあなたと話がしたかったのに。」


あぁ、閣下が来たのね。起きなきゃ。


「…閣下…?」


「眠ってていいですよ。ベッドまで運びます。」


そう言って優しく抱き上げて運んでくれる。

動かずにベッドに行けるなんて楽でいいなぁ。


「ありが…とう…ござ…ます…」


「眠いでしょうから、喋らなくていいですよ。私が勝手に話してますので朧げに聞いてて下さい。」


「はい…」


「まずは、正式に夫婦となったので敬語はなしで。これからはお互い名前で呼び合うこと。」


名前で呼ぶことを許してくれるのね。

原作では徹底的に閣下と呼ばせていたから意外だわ。


「それから、もっと自由に出歩いて色んなところを見学してもらって構わないよ。侍女達が自慢して騎士や侍従達が君に会いたがっているんだ。」


まったくあの子達ったら…どんな噂をしているのか。

私はどうせすぐ居なくなるのだから、何も必要ないのに。


「そういえば、1人の侍女が君に謝罪したいと言っていたよ。顔合わせの時に無礼な態度をとってしまったと…。」


あぁ、扉を強く閉めた子ね。別に気にしてないのに。


「それから…」


その後も彼は暫く話し続けていた。

私は眠くて何も返事を返さなかったけど、彼の声が心地よくていつのまにか本当に眠りについてしまった。


「シルビア…君のことをもっと知りたい。」


ーーーーーー


朝起きると目の前にイケメンが眠っていた。

こんな無防備でいいのかな…まぁ私には何もできないけど。

そっとベッドを出て部屋へと戻る。


「…わざと隙を与えたのに…何もしないのか」


この日から、私と大公の関係性が少しずつ変わっていった。


「シルビア、たまには身体を動かさないと。乗馬に行こう」


「シルビア、公都を案内するよ。」


「シルビア、手先が器用なんだって?俺にも作ってくれ。」


「シルビア…騎士達にお菓子をあげたそうじゃないか…俺にももちろんあるんだよな?」


「シルビア、庭園に行こう。君の瞳と同じ色の花を植えたんだ!」


あれ?…おかしいな…大公ってこんなだったっけ?

もっと孤高の狼みたいなはずが…なんか大型犬みたいだ。

まぁ、平和だからいいか。


「うわ…趣味の悪い招待状」


金色に輝く招待状。もちろん皇帝からだ。

帝国の建国祭の招待状であり、私のスパイ活動の報告の日。

といっても報告するほどの重要なことはなーんにも聞かされてないから平気だろうけど。


「閣下、私に監視をつけて下さい。」


「わかった。…ところでいつになったら名前で呼んでくれるんだ?敬語もだけど。」


「そうですねぇ。もう少し経ったらですかねぇ。」


「君ってはぐらかすところあるよな。」


まぁそんな話は置いといて。

正直怖い。隷従の契約は自分の意思とは関係なく、手や口が勝手に動いてしまうから。


「シルビア…」


「幸いなことに、大公家の重要なことは何も知りませんので大丈夫とは思います。ですが信用しないでください。当日になったら私は自分のことを制御できなくなるので。」


「シルビア…そうじゃない…そんなことじゃなくって」


「閣下、準備がありますので失礼します。」


なんであなたがそんな辛そうな顔をするの…。

辛いのは…私の方よ…。

人がせっかく関わらないようにしてたのに…情が湧いてしまった…みんなを裏切る事になったら…私は私を許せない。


ー建国祭当日ー


「ヴィンター・デル・ガラリア大公閣下、並びに大公妃のご入場です。」


眩しいほど煌びやかな会場。

私達を鋭い目つきで観察する皇帝。

ファーストダンスが終わり、その時が来た。

帝国の貴族達が大公に群がり、その隙に皇帝の侍従が私の元へやってくる。


「久しぶりだな、アローラ令嬢。いや、もう大公妃か。」


「ご無沙汰しております。陛下。」


右腕に黒い刻印が浮かび上がる。隷従の証だ。

そこから、私はポツポツと大公家のことを話し出した。

なるほど。意識はありながらも、全く逆らえないのね。

これは精神的に辛いものがあるわ。


「ふん。大した話はないな、まだ警戒されているのか。」


「申し訳ございません。」


「まぁいい。次回に期待しているよ。君が"大公に愛される事"はないだろうから。」


「はい、陛下」


バタンッ


皇帝が出ていき、1人控え室に取り残される。

一体あと何回こんな事が起きるのだろう。


「監視さん私は少しここで休むわ、閣下にそう伝えて。」


どこにいるのかわからない大公家の監視に向かって言い放ち私は少し横になった。

ん…また抱えられている。この安心感は大公ね。


「〜は…〜で」


誰かと話しているみたい。

誰だろう…なんだか聞いた事あるような声…懐かしい。

まぁ、誰でもいいか…今は眠いから…。


「大公閣下…私は皇帝からあてがわれた後妻が怖くてシルビアを蔑ろにしてしまった…決して許されることはないでしょう。だからせめてこの子がこれ以上苦しまないように、何かしてやりたいのです。我が家門の力を全て利用してもらって構いません。どうか、この子を救ってやって下さい。」


「彼女は私の妻ですから、救うのは当然のことです。ただ公爵、その発言は反逆と捉えられても仕方ないですよ。」


「構いません。私が言えた義理じゃないですが、親は子供のためならば何を犠牲にしてもいいと思えるのです。」


「そうですか…ではまたご連絡します。」


「よろしくお願い致します。」


ーーーーー


目が覚めるとまたも目の前にイケメンが寝ている。

一緒に寝るなんて、社交が疲れたのかな。

あんなに一気に囲まれて、皇帝とは心理戦を交わして、神経すり減るか…。

それよりお腹空いたなぁ。結局昨日何も口にしてないし。

部屋に戻って運んでもらおう。


「シルビア」

「あ…起きたんですね。なんでしょう?」

「俺は皇帝を討つことにしたよ。」

「………はい?」

「だから俺は「なんで!なんでそんな大事なこと!私に言うんですか!?」

「シルビア」

「私のこと、報告受けてないんですか!?私は皇帝に全部話してしまうんですよ!?」

「シルビア」

「意識はあるのに全く抵抗出来なくて、ここであった事全部話してしまったんですっ…もしそれで、みんなに何かあったらって…不安で不安でたまらないのにっ!」

「シルビア!落ち着け。」


ぎゅっと強く抱きしめられる。もうダメ、泣きそう。


「大丈夫、大丈夫だから。」

「何がっ…大丈夫…なんですかっ…」

「シルビア、解除の方法があるだろう。」

「だからっ…それは言えなっ…んっ」


え…キ、キス!?


「なっ…ななななっ…なにをっ…」

「シルビア…愛してる。」


パアァッと身体が光りだし、隷従の証が浮かび上がる。

見たこともない手錠と鎖が出現したかと思ったらバキンッと壊れ消えていった。


「君の解除方法は"俺に愛される事"だったんだろう?ならなんの心配もいらない。だってもう君のことを愛しているんだから。」


うそ…そんなはず…だって大公はヒロインと結ばれるはずなのに…。でも、隷従の契約が解けたってことは…。


「本当に…私のことを…?」


「…もうずっと前から好きだった。けれど君を困らせたくなくて、解除方法を探っていたんだ。そしたらまさか、こんな条件だったなんて…もっと早くわかっていれば君が苦しむ事もなかったのに。」


「……」


「シルビア…もう何も怖がらなくていい。何も我慢しなくていい。今まで思っていたこと全部言ってごらん。」


「なんでっ…なんで私なのっ…家族からも愛されず…皇帝の奴隷になって…いつか離婚する相手と結婚して…私が一体何をしたって言うのよっ…」


「君はなにもしてない、何も悪くない。」


「誰とも関わりたくないっ…私と関わったことでその人に何かあったら…私は自分を許せないっ…」


「絶対にそんな事させないから。大丈夫。」


「私…ずっと…誰かに助けて欲しかったっ…」


「じゃあ、シルビア。俺のことを信じて。もうこれ以上絶対に君が苦しむことはないから。」


「うんっ…」


ーーーーー


数ヶ月後、戦争が起きた。原作よりもかなり早く。

しかもお父様が力を貸したらしく、決着はすぐについた。

皇帝は処刑、帝国は解体され周辺国に吸収された。

お父様は離婚して南国の方へと旅立ったらしい。


ーーーーー


「わぁ!このお茶、美味しいですね!」


そして今、私の目の前にはヒロインがいる。

原作を捻じ曲げてしまったからなのか、大公とヒロインが出会うことはなかった。

しかも今は私を溺愛してしまっている…。

これはまずいと思い、ヒロインを探し出したのだ。


「それで、私をお探しになっていらっしゃったとか?」


「えーっと…何から話せばいいやら…」


「やっぱりあなたも転生者だったんですね。」


「えっ…てことは…」


「はい!私も転生者です!というかこの小説の作者です。」


えぇぇっ!?


「まずは…謝らせて下さい。私の設定のせいで、長い間辛い思いをさせたことでしょう。」


「はい…それはもう…」


「実は…あまりにも酷い設定だったので書き直そうとしたらこんな事になっていて…ならせめて何かできることはないかと色々探っていたのですが…結局原作とは違うことばかり起きたので…これは何かあるなと思ってました。」


「そうだったの…。」


「創作だからと気軽に考えた設定で、あなたを苦しめてしまい申し訳ございません。」


「まぁ…私もまさか小説の世界に転生するだなんて思ってなかったですし…。」


「もっと責められると思っていたのに…優しい方ですね。」


「優しいだなんて…私のせいでヒロインと主人公が結ばれなくなったのに…。」


「むしろこれでよかったんです。あなたが幸せでいてくれるのが、私はとっても嬉しいのですから。それにこの世界に来て、そばで支えてくれた方がいるんです。私はその方に惹かれているので。」


「そうですか…。」


その後はお互い転生前の話をした。

もう随分昔のことになってしまったから…なんだか懐かしかった。


「それじゃあ、大公妃様。本日は楽しい時間をありがとうございました。またお話ししましょう!」


「えぇ、是非また。」


ヒロインを見送っていると後ろから抱きしめられる。


「随分と楽しそうだったじゃないか。」


「ふふっ…気の合う友人ができたの!」


「そう…でもこれからは俺との時間だ。」


ヒョイっと抱えられ連れていかれる。


「あなたって…私のこと抱えるの好きね〜。」


「俺だけの特権だからな〜。」


今日ヒロインと会って胸に引っかかっていたものがとれた。

やっと心から…彼にこの言葉を言える。


「ヴィンター」


「っ!今、名前っ!」


「愛してるわ」


初めて、自分からキスをした。

うわ!すっごく恥ずかしい!

すぐに両手で顔をかくして彼のことをチラ見すると、首まで真っ赤にしている。


「ぷっ…ふふふっ…いつも自分からしてくるくせに!」


「自分からと君からとじゃ全然違う!名前も初めて呼ばれたし…」


「ずっと言えなくてごめんなさい。でもやっと、あなたに伝えられる…愛してるヴィンター。」


「俺も、愛してるよシルビア。」







その後、彼女は誰からも愛される大公妃に。

そして大公は、大陸一の愛妻家として有名になった。


〜end〜

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませていただきました、面白かったです
[良い点] 元のヒロインにしわ寄せがきて性悪になったり不幸になったりする作品が苦手なので、ヒロインかつ原作者が善良な人で幸せになってくれて良かったです。
[一言] 作者がヒロインで、設定を酷くし過ぎたと幸せを喜んでくれる人でよかった。これでどうして設定どおりにならないのよと喚いてたら大変だった。
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