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幼馴染はファイターパイロット  作者: 浅葱
本編1
12/17

第十二話 キューピッドさんはロマンス・グレー?!

飛行教導群の司令、千賀晴翔(ちがはると)一等空佐との出会いがこの後、私たち2人にとってとても大きく関わって来るなんてこの時は思っても見なかった。

飛行教導群とは、航空自衛隊における、仮想敵機部隊(アグレッサー部隊)のことで、 要撃機パイロットの技量向上などを目的とし、航空自衛隊の戦闘機パイロットの中でも翔太が言うように特に傑出した戦闘技量を持つパイロットが配属されていて、少数精鋭の言わば、戦闘機パイロットにとっては先生のようなものだ。主に各戦闘機部隊について巡回指導を行なっていて、千賀一佐はそのトップを勤めている翔太憧れの人なのだ。通常は、数年前に石川の小松基地に移駐して、小松基地をホームにしているそうだ。

翔太がこっそり教えてくれたが、千賀一佐の娘さんで防衛医科大学に在学している雅さんと、翔太のお兄さんである雅也くんは実は付き合ってるんだって。翔太の両親’Sにも、千賀一佐にもバレてないらしく、なぜ翔太が知ったのか?謎だが、それだけはバレないように、と念押しされた。(バレたくなければ、教えなきゃよかったんじゃないか?と思ったけど、それは翔太には秘密で…)

タルトを食べて、少し二人でまったりしてから翔太のお家に伺った。玄関を開けると、えらく賑やかな声が響いてきた。

久しぶりに翔太のお家にお邪魔した。翔太に促されて、リビングに入るとロマンス・グレーな風貌の男性がいた。父親’Sが霞んでしまうくらいだ。

翔太が、私を千賀一佐の側まで引っ張って行き、紹介してくれた。


「千賀さん、俺の婚約者になった、優香です。悠斗おじさんの娘さんです。」


と…。


「初めまして。翔太さんとお付き合いさせて頂いている、西條優香と申します。よろしく御願いします。」


緊張して、ご挨拶をすると、


「千賀晴翔と言います。翔太くんから聞いているかも知れませんが、防衛省、航空自衛隊の小松基地で飛行教導群に勤めています。翔太くんのお父さんと幼馴染みで、その縁があって悠斗さんとも随分昔から仲が良いんですよ。」


と言って、高校生の私に名刺を下さった。


「優香、千賀一佐に名刺もらえたなんて、凄いじゃん!レアだよ!俺でさえ、もらってないのに!」


って翔太が拗ねた。千賀さんが、仕方無いな…と行った表情をして、翔太にも名刺を1枚差し出した。


「ありがとうございます。千賀さん、(みやび)姉ちゃんは元気にしてる?」


ぺこりと頭を下げた翔太が聞けば、


「元気だと思うよ。お互い忙しくしてるから、ほとんど連絡もとってないんだよ。さっき、数馬から聞いたけど、優香ちゃん防衛医科大学目指してるんだってね。一度、うちの娘の雅に話を聞いてみるといいよ。防衛医大に在学しているから、何か役に立つかも知れないし。今度、翔太を小松基地の見学に誘ってるから、何なら優香ちゃんも一緒においでよ。翔太が憧れてるF−15(イーグル)ドライバーの精鋭達の機動も見れるから。翔太の目指す場所を、是非見に来て下さい。」


とお誘いを頂いた。

頂いた名刺の裏に、プライベートの連絡先まで書いて下さり、


「何か困ったことがあれば、いつでも気軽に連絡して。教導で出れないことがよくあるけど、その時は折り返し連絡するなりするから、翔太の事とか、空自の事とか悩んだら遠慮なく連絡してくれたらいいから。未来の空自の医官さん。」


と、言って下さった。

翔太には、


「防大一本に絞ったって、数馬から聞いたが、戦闘機(ファイター)パイロットになれるのは極一握りだ。早くにウィングマークを取りたいんなら航学の方に進んだ方がいいと思うぞ。上は目指せなくなるけど、空には長くいられる。」


って、的確なアドバイスをしてくれていた。


「千賀さん、俺はこれから先、優香にいろんな意味で心配や苦労させると思う。戦闘機のパイロットって、危険と隣り合わせ、アラートが鳴れば飛び出して行くような任務についてる人も少なくない。そんな任務についてる人たちが、生きて家族のもとに帰れる様にって思いが教導群の指導の根底にあると思ってるんだ。だから、俺のパイロットとしての最終目標はアグレッサーなんだ。」

「翔太なら、ドルフィンの5番機もいけると俺は思うぞ。何なら、俺がリードソロの課目、ローアングルキューバンテイクオフを直に教えてやるぞ!」

「俺が、ドルフィンの5番機に乗るなんて、絶対有り得ませんて。そんなん、あったら、そん時は直に指導して下さい。有り得んけど…。」

って、言ってたけど、これが10数年後、ホントになるなんて誰も思わなかっただろうな…。


夏の終わりにある、小松基地の航空祭への招待を受けて、私達はリビングを後にした。

久々に翔太の部屋に招かれた。

窓越しでは見えなかった翔太の部屋…。シックな色遣いで纏められていて、戦闘機の模型や写真が飾られていた。その中に、ドルフィンに載っているパイロットの素敵な写真が大きく引き伸ばして飾られているものがあった。


「それ、千賀一佐がドルフィンに載ってた時のやつ。ORでバリバリにローアングルキューバンテイクオフやってた頃だね。確か、一緒に百里や築城の航空祭に行った時に優香も千賀さんの載ってたドルフィンを見てるはずだぞ…。」

「えっ?築城には何度か行った事があるけど、百里には一回しか行ったことがないよね?ひょっとして私が、『翔太が戦闘機(ファイター)パイロットになったら優の事お嫁さんにしてね』って、言ったきっかけになったハートの演目やった人の中にいたって事?」

「そっ、バーティカルキューピッドを描いてた3人のうちの1人だよ。いろんな意味で伝説の5番機パイロット!技術が特に凄くて、ブルーの後にアグレッサーに呼ばれて、今やその指令になってる。千賀さんみたいな機動の出来る戦闘機パイロットに、なるのが俺の夢なんだ。」

「そうなんだ。千賀さんにお礼言わないといけないみたいだね。私達を繋げて下さった、キューピッドさんなんだし…。」


私たちのキューピッドさんは、今やロマンス・グレーになっていた、元ブルーインパルス、ドルフィンライダーだった。


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