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幼馴染はファイターパイロット  作者: 浅葱
本編1
1/17

第一話 lock-on

隣に住む幼馴染の柘植翔太(つげしょうた)は、幼い頃に一緒に行った航空自衛隊の基地で行われた航空祭で空を飛ぶ戦闘機に憧れ、戦闘機(ファイター)パイロットを目指す為、進路を防衛大に決めたと報告して来た。


幼い頃、


『翔太が戦闘機(ファイター)パイロットになったら優の事お嫁さんにしてね』


と私が言った事なんか忘れ去ってるんだろうなぁ〜と、勉強机から窓越しに見える翔太の部屋の窓をぼんやり眺めていた。

翔太の部屋の窓がカラカラと鳴って開けられた。


「優、何ぼんやりしてるんだ?」


翔太が窓から身を乗り出して聞いてきた。


「うん、進路悩んでてね。やってみたい事は幾つか有るんだけど、一つに絞り切れないって言うか…。決めかねてるんだよねぇ〜。そっちは、防大の合格圏どうなの?」

「どうだろ?一応今のままなら、推薦枠を取れそうだけどダメだったら一般採用受けなきゃダメだし…。申し込み期間が被ってるから一応両方申し込む予定。防大の場合は入試っていうか、採用試験だからA判定でも安心は出来ないよ。実際に、A判定でも落ちた人がいるって話だし。身体測定もあるから、勉強だけじゃなくて身体の方も鍛えとかなきゃなんないし。結構、大変だよ?で、優がやってみたい事って何なの?」


窓越しに話せば誰かに聞かれるかも知れない…。


「まだ、親にも話してないから、翔太こっち来て?」


部屋に誘うと、


「女の子の部屋に男の俺が行ってもいいのか?ほら、彼氏とか居たら、疑われるじゃん。」


翔太が遠慮がちに聞いて来た。


「翔太、彼氏いたら誘うと思う?それに、今は彼氏いらないかなぁ〜。夢があるし…」

「分かった。ちょっと待ってて。そっち行くから。」


翔太が窓を閉めて部屋を出た。

2分もしないうちに我が家のチャイムが鳴った。

両親が共働きの我が家、慌てて部屋を飛び出し階段を勢い良く降りて玄関を開けた。

中学の途中までは私の方が背が高かったけど、翔太は2年の後半からグンと身長が伸びて今では見上げなきゃいけない程高くなっている。


「翔太、今身長いくつ?」

「俺?春の健康診断の時が180だったかな?」

「高っ!昔はおチビさんだったのに、今や逆転して見上げないとダメになっちゃった。」

「そんな事ないよ。ほら?」


翔太が私の両脇に手を入れグイッと、自分の目線より高い位置まで私を持ち上げた。

突然の事で驚いて、ジタバタして照れた私をそっと翔太が降ろしてくれた。


「優、お前軽すぎ…。ちゃんと飯食ってるか?」

「うん。3食プラスおやつも欠かさず食べてるよ。軽いって言うけど、体重はもう少し落としたいかな?って思うくらいだけど。」

「そっか、ちゃんと食ってるなら良いけど、体重落としたいんならおやつは控えた方がいいと思うぞ。」


痛いところを突かれた。

そろそろ進路を決めなきゃいけないって頃眠れなくって、何の気なしにカーテンを開けたら翔太の部屋にデスクライトの灯りが付いているのを見つけた。小さい頃から、戦闘機(ファイター)パイロットに憧れていて、その思いは大きくなっても褪せる事がなく、必死に勉強しているのを感じた私も負けてられない!って奮起し机に向かった。要領が良い方だった私は、根を詰めて机に向かうことが苦手で当初手持ち無沙汰でつまめるおやつを片手に翔太の部屋の電気が消えるまで机に向かって居た。お陰で、普通に集中して机に向かう事も出来る様になったが、おやつがある方が勉強が捗る様になってしまい、ついついおやつが手放せなくなってしまっていたのだ。


「勉強のお供には、おやつは必須だもん!」


不貞腐れて頬を膨らませる。


「玄関じゃ何だし、どうぞ。先に私の部屋に行ってて!」


勝手知ったる幼馴染は、自分のスリッパをシューズラックから取り出して履き階段を上がって行った。

私は、キッチンに寄ってグラスとお茶のボトルをお盆に乗せて部屋に戻った。


===============================


私の名前は、西條優香(さいじょうゆうか)

お隣に住む柘植翔太とは、同じ産院で同じ日に生まれた。

両親同士が懇意にしていた事もあり、思春期になるまではお互いの家に行ったり来たりする事が頻繁にあった。思春期になれば、お互い異性を感じ、昔ほど行き来をする事は無かったが何かあれば、お互いの部屋の窓越しに話したりしていた。

私にとっては、翔太は初恋の男の子で、それは今も変わっていない。

翔太の身長が伸び始めた頃から、ちらほら告白されたと言う噂を耳にしたが、誰とも付き合う気はないと断ったと聞いて、ちょっとホッとしたのは秘密だ。



部屋に入ると、立ったまま部屋をきょろきょろと見回している翔太が目に入った。


「座ってたらよかったのに。何か珍しい物でもあった?」


と聞けば、


「女の子の部屋に入るって、初めてだし…。こんなんなんだ…って見てた。それに、優の部屋からは俺の部屋ってこう見えるんだなって…。」


照れ臭そうに翔太が答えた。


「翔太、初めてって言ったけど、何度も私の部屋に来たことあるでしょ?そんなに変わってないと思うけど?」

「いや、その頃とは視点が違うと言うか、ほら、気付かなかったトコとか色々あるんだよ!」


クッションを渡してラグの上に座る様に言えば、翔太は私のベッドを背もたれにして胡座をかいてクッションを抱え込んで座り込んだ。テーブルにお盆を置き、


「お茶でよかった?炭酸なら冷蔵庫にあるけど?」


と聞けば、


「お茶でいいよ。身体作るために、極力ジュース類控えてるから。」


と返事をして来た。

コップにお茶を注いで手渡せば、一口口をつけてから、


「で、優がやってみたい事って何?悩んでるんなら、相談乗るよ?」


重い口を開き、まだ誰にも話したことのない夢を翔太に話した。


「二つあるの。やって見たいなって思う仕事。一つはお医者さん。なれるなら、救命救急医目指したい。」

「うん。もう一つは?」

「笑わないでよ…。放送ディレクター。いつか、自分が考えた番組を作りたい。」

「そっか。文系と理系綺麗に両極端に別れた職種だな…。」

「そうなんだよねぇ〜。高校2年の今まで翔太みたいに真剣に考えて無かった自分が恥ずかしいよ…」

「そんな事ないんじゃない?俺は、小さい頃から戦闘機(ファイター)パイロットになりたかったって夢があって、それが夢じゃなくて叶えれる可能性が見えたから防大に絞っただけだし。航学に進むって言う事も考えたけど、将来の事考えたら防大に行って幹部候補生学校に進むのがベストだって考えただけ。いつか、嫁さんもらう事も考えたら、奥さんには不自由ない生活させてあげたいし…。」

(もう結婚の事まで翔太は考えてるんだ…。翔太の奥さんになる人は幸せだなぁ。それが私だったら、嬉しいんだけど…)

「凄いね!もう、結婚の事とかまで考えてるの?翔太、えらいねぇ〜。」

「茶化さないで。嫁さんにしたい人には、ちゃんとウィングマークを取ってからプロポーズしようって決めてるんだ。」

(プロポーズのタイミングまで決めてるんだ!翔太に思われた人は、本当に幸せになれるよ)

「翔太のプロポーズが上手く行くといいね!私も、上手くいくように祈ってあげるよ。」

(ホントは、上手くいって欲しくないけど…翔太が幸せになれるんなら祈るよ)

「その時、撃墜判定(キルコール)出来るといいんだけどな…。って、俺の話は、どうでもいいから‼︎優は、どっちの道に進みたいの?」

「お医者さんになるには、学費が沢山要るでしょ?しがないサラリーマン家庭のウチじゃ、正直厳しいと思うんだよね。放送ディレクターを目指すなら、芸術工科大学系に進むのがベストっぽいけど、こっちも狭き門だし…。悩むんだよねぇ〜。」


クッションに頭を擦り付けてもじもじしていると、


「優、パソコン借りてもいい?」


翔太が勉強机のサイドテーブルに置いてあるノートパソコンを指差した。


「ん?どうぞ。」


と言えば、立ち上がり充電ケーブルを外してノートパソコンをサイドテーブルから持って来て胡座をかいた足の上に置き起動させた。


「パスワードは?」

「誕生日…」


手短に答えた。同じ日に生まれたから、翔太の誕生日って言えないのが残念。

キーボードをパチパチ打って、マウスパッドを操作し頷いて画面を私に見えるようにテーブルに置いた翔太。


「学費の不安は、防衛医科大学校に進めば給料も出るし心配要らない。ただ、俺ら防大と同じ様な訓練があるから、体力的な面の問題が有るかも知れないけど…。それに、希望する救命救急ってのが選択出来るかわからない。資格を取ってから、規定の年数自衛隊にいれば償還金を払う必要もない。って制限がついちゃうけどね。離れた場所だけど、俺と一緒に、自衛隊で働いてみる気ない?」


真剣な目で翔太が言った。


「俺と一緒に?って、どう言う事?」

「優、 lock-onさせて貰っていい?」

「どう言う事よ?」

「こう言う事…」


テーブル越しに身を乗り出して来たかと思うと、唇に温かいものが触れた。

西條優香、 lock-onされちゃいました。

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