ぼうけん
33
結局ピノと一緒に旅をすることを許されたみたい。
「そもそもマリアに療養のためにポポロ村を勧めたのは父上なのさ」
「そうなんだ」
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黒い牛型の魔物が現れた。
「風よー鋭い剣となり魔を切り裂け」
ピノの手にうす緑色の剣のようなものが現れる。
「風の刃!」
走り抜けながら魔物を一刀で斬り倒した。
「すごーい。はやい」
「風は探求と流動をエネルギーとするんだ。素早さは大切な要素だよ」
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そうしてピノと色んな国を巡った。
そして東の果てにある魔王城にたどり着いた。
凄く、どんよりしているの。
暗く雲がたちこめていて。
紫色の沼とかがあって。
「こんなところにいるから気が病むんだわ」
「そういんものか」
「そういうものよ」
進もうとするとバチって音がして弾かれた。
「結界が張ってある……」
「解けないの?」
「僕の魔法ではどうにも……転移魔法は一度行った処しか行けないし」
「うーん。マリアなら何か知ってるかも」
「それじゃ一旦ガリシア城まで戻るね」
「うん」
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「マリアー、ただいまー」
「お初にお目にかかります。ガリシア王子ピノです」
ーー
「それでね、城に入ろうとしたらバチってなって」
「結界が張っていて入れなかったんです」
「ふむ……。私が行った頃は、結界はなかったわね」
「そうなんだ。じゃ入れない?」
「いや、私はそこまで転移魔法で飛ばすことができるわ」
「それが出来るなら始めから……」
とピノが言う。
「魔王は私よりも強い。経験が足りないとあっさり殺されるのがオチだからね」
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「ちょっと待て……ロッドを持ってくる」
しばらくしてマリアがロッドを持ってきた。
杖の根に輝く石がはまってる。
「このロッドは貴方が持ちなさい。ユリア」
「うん、ありがとう、マリア」
「このロッドには私の祈りが込められている……魔王の呪いに少しでも太刀打ちできればいいが」
「うん……マリア、少し痩せた?」
「気にするな」
「大魔道士マリア……転移させられるなら頭数は多い方が」
「いや、ピノ君。多分魔王と戦うならまず魔法使いでなければいるだけ邪魔だろう。それに魔力の質や耐久力がない魔法使いが行っても似たようなものだな。魔王に上手く使われるのがオチだ」
床に魔法陣を描きながら、マリアは言う。
「君たちなら出来ると信じているよ……魔王に心を呑まれない様にな。忘れるな。どんなときでも一人じゃないことを」
「マリア……」