おしろ
27
城下町の先にはおっきい門があって、兵士が両脇にいる。
「あのー」
「何の用だ」
「魔王討伐のために旅に出てる者なんだけど」
「君みたいなお嬢さんが?ご冗談を」
「じょうだんじゃないって」
いっこうに開けてくれない。
しばらく遠くでどうしたものかと考えていると兵士がいなくなった。
今の内に入ろう。
28
門の先には石畳が続いている。両脇にはお庭がある。
そこで前の扉が開いて、別の兵士が現れた。
「そこで何をしている」
逃げよう。
お庭の方向に駆け出した。
29
お庭にはカフェテラスがあって、少年が座っていた。
わたしはそこで何もないのにつまずいて転んだ。
「何事だい?」
「これは王子様!城に侵入者が現れまして」
「この少女が?」
「は、はい」
「まぁ間違えて入り込んだんだろう。下がっていいよ」
「はい」
すごすごと兵士たちが引き下がる。
王子様と呼ばれた少年はわたしに手を差しだした。
「僕の名はピノ。君の名は?」
「ユリア」
30
「どうしてここに?」
「わたし、魔王を倒すために王さまに会いにきたんだけど、兵士が信じてくれないの」
「君が?」
「うん。わたし、水の魔法使いなの」
「へぇ。僕は風の魔法使いだよ」
「ピノも魔法を使うの?」
「うん。この国の王家は代々風の素質があるんだ」
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「僕も旅に出るところだったんだ」
「そうなの?」
「うん。そうだな、せっかくだしいっしょに行かないか?」
「いいの?」
「父上に進言してみよう」
32
「出会ったばかりの少女と魔王を倒しにいくだと?」
「はい」
「正気とは思えん。そもそも水の魔法使いかどうかも怪しい」
「僕はこの娘の瞳を見ました。嘘をついているようには思えません」
「嘘じゃないよ。マリアにちゃんと習ったもん」
「なぬ……マリアとな?大魔道士マリアのことか?」
「マリアはマリアだよ」
「ふむ……ユリアとやら、お主どこからきた?」
「ポポロ村から」
「成る程、それで……」