ポポロ村
4
川をくだっていくと家が見えた。
そこまで走っていく。
わぁ。たくさん家がある。
小さめの似たような家が、ここから見える限り、6つか、それ以上。
どの家も裏手に畑がある。
「どうした?お嬢さん」
ビクンとして飛びはねる。
後ろから声が掛けられた。
「ポポロ村になんか用かい?」
振り返るとおばあさんがいた。
「わー」
なんとなく逃げた。
村に入っていって、角を曲がる。
ボフ
と言って何かにぶつかった。
「あう」
5
見上げると紺色の服を着た女の人がいた。
40才くらい?
「この子は?」
「さあ?私にも分からないよ」
近くのおばあさんと会話する。
紺色のおばさんが屈んだ。
「君の名は?」
「……わかんない」
6
「記憶喪失……か」
「珍しい。そんなことあるんかい」
「知っている子かい?」
「いんや。こんな子はガリシア城下町にもいやしないはずだが」
「そうか」
後ろのおばあさんと話している。
「きみ、始めの記憶は?」
「すぐそこの、草原」
「ふむ……きいたことがある。転移かもな」
7
「てんい?」
「書物によると過去にそういうことがしばしばあるらしい。草原で目覚めた者には記憶がなく、そして魔法の素養があるらしい」
「さすが詳しいね、マリアさん」
マリアさんと呼ばれたおばさんはわたしに話しかけた。
「ちょっとおいで」
「え、うん」