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ことたまのセカイ  作者: ななし
11/13

魔王城ー中



城6


魔王が組んでいたあしをほどいて立ち上がる。


「なら、始めようか。処刑の時間だ」


魔王の背中からニョキニョキとコウモリの翼みたいな黒い翼が生える。片方の翼だけで大人二人分くらいある。


そして魔王の右手に黒い炎が見えた。


「我が憎しみの炎。人間を滅ぼす刃となれ」


魔王の右手首から血が固まった色の(ブレード)が生えた。


「ユリア!一旦下がって!あいつは多分空を飛ぶ。一旦僕が迎えうつ!」


「う、うん」


城7


魔王の翼が揺らいだと思うともうそこには居なかった。


後ろを振り返ったら天井の隅にいて、また見えなくなる。


とても目で追いきれない。


「風よ。飛ぶ鳥を落とせ!」


ピノの風魔法がそこら中でかかる。


このはやさにピノは辛うじて追い付けてるようだ。


わたしの目にはいきなり現れたと思った魔王がガクンと凄い勢いで地に堕ちた。


ピノの魔法が当たった!やった。


と思ったけど魔王は地を蹴ってピノまで一足で跳ぶ。


「風の刃!」


ピノの手にうす緑色に発光している剣が現れ、魔王の炎の刃とつばぜり合う。


「反応がいいねぇ、オージサマ。訓練の賜物かな。しかし、魔法を同時に複数は発現させられないみたいだな」


「くっ黙れ。剣の訓練は幼少の頃から」


「バカが」


つばぜり合いが始まる。


魔王の打ち込みが激しく、ピノは刃を合わせるので精一杯で反撃にでれていない。


でも、魔王の背中があいている。今がチャンスだ。


「ウォーター・スプラッシュ」


わたしの手から水流を出す。


「ファイヤー・ウォール」


魔王の前の地面から黒い炎が吹き出して、わたしの水が瞬く間に蒸発した。


白煙の中で、


ザシュッ


とした音が響いた。


「場数がちげぇんだよ」


白煙が晴れるとピノが倒れていた。頬から血を流して。


「ピノ!」


「まずこいつだよなぁ、風の王子。俺が魔法同時発動にビビった挙げ句蒸気で視界が遮られるという変化に対応できずにこのザマだ」


魔王がピノの傷ついた頬を踏みつけた。


「グズが」


「こいつ……ピノを離せ!水よ、あいつを……」


……?水が、出ない。


「お前もお前だ。感情に流されて魔法を操れていない。」



城8


「ま、こんなもんか。もういい。燃えろ。苦痛を感じながらな」


体が黒い炎に包まれる。


熱い。痛い。


「憎しみと殺意は黒炎魔法にとってはプラスだが水魔法にとってはマイナスでしかない」



ーー


何だか色んなことを思い出した。


ピノに会って。


その前はマリアに会って。


水魔法がんばったけど、ダメだったね。


「水は、命と癒しのエネルギーを扱う。」


「それを忘れないで」


あっ。


そうか。



城9


ゆらゆらと体が揺れている。


隣にピノも横たわったままで居る。


わたしたちの体は水の膜の中に居る。


目の前には杖の魔石がひとりでに浮き上がっていた。


そして、


パン


と音がして、水の膜が弾けた。


同時に、魔石も、粉々に弾けた。


わたしは着地した。


ピノは目を閉じたまま横たわっている。でも気を失っているだけに見える。傷口からはもう血は流れていない。



城10


「何だぁ?お前ら。仲良く火葬してやろうと思ったのに」


玉座の前に居る魔王が言う。


わたしはキッと魔王を見据える。


「……マリアの魔石か。そして目つき、が変わったな。まぁそうでなくちゃ困る」


「あなたは、かわいそうな人よ」


「あ?」


「一人ぼっちで、独りよがりで。そんなだからひとりなんだわ」


魔王はしばらく驚いたみたいに目をまぁるく開けた。


「くくく…これはこれは。面白いことを言う。最っ高に、ぶちのめしたいと思うぜ」


魔王の口元が歪む。魔王の右手がみたことない黒い炎の揺らめきが集まる。


もう、迷わない。


言葉は魔法。


言霊に、想いを乗せて。


「闇の炎よ」


「水よ」


「にっくき人間を焼き殺せ」


「かの者の胸の悪をうて」


「ファイヤー・ストーム!」


「ウォーター・スプラッシュ!」


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