転生(?)と結婚
忙しくて更新が遅れることもあります!
温かい目でご覧ください!
今日は夏休み最終日。
人によっては明日からの学校を楽しみにしたり、たまりにたまった宿題を前に絶望したり。
サ〇エさん現象の強化版が学生に降り注ぐ。
しかしそんな中でも学校を楽しみにしているわけでもなく、宿題を残しているでもない。
いつもと同じように夕飯をコンビニで買って帰ろうとしている少年がいる。
彼の名前は佐藤恭弥。
何の変哲もない高校三年生である。
しかし、勉強の合間に来ているわけでもない。
中学一年生の時に両親が事故で死に、引き取ってくれた祖父も去年死んだ。
身寄りのない彼にとっては、大学なんかに行かずに就職するのが当然であった。
両親や祖父が亡くなったときは、ふさぎ込みもしたが、こじらせるようなことはしなかった。
実は中学の時にラノベの世界に入り込み、学校では一人でも家に帰ればずっと本と向き合っていた。
報われているとは到底言えない自分の現実を、ラノベという仮想の世界に入ることで少しは忘れて楽になれたのかもしれない。
当時心の支えが欲しかった彼には、ラノベが大きな心の支えになったのだ。
しかしお金もない今は、新しい本を買うこともできずに、毎日起きてご飯を食べて外に出てご飯を食べてぼーっとしてたまにラノベを読返して、コンビニに行ってご飯を買ったり。というロボットのような生活をしていた。
今日も何もなかったなと思いつつ、ポケットからスマホとイヤホンを取り出し、いつもの道をのんびり歩いている。
結構な音量で聞いているので外の音など聞こえることもない。
自分の世界に入ると言ったらこれも一つの手なのである。
「・・・ぃ ・・・ ぃ・ぉ」
聞こえないはずの声が聞こえて不思議に思い、聞こえたほうを向く。
中年のおじさんが必至な顔でこっちを見ている。
不思議に思ってイヤホンを外すと、全体を聞き取ることができた。
「おい! あぶねぇぞ!! 早く避けろ!!!!」
ブーーーーーーー
後ろから迫りくる音とともに。
「は?」
そう言った瞬間背中から全身へ大きな衝撃が走った。
一瞬何が起こったかわからなかった。
一瞬世界がゆっくりに見え、自分を跳ね飛ばしたであろう軽トラックと中で居眠りをしている中年くらいの男が見えた。世界の速さが戻った時には自分の体は大きく飛ばされ、アスファルトの道路に打ち付けられていた。
だんだん感覚が覚醒していき、全身が動かないことがわかると同時に体に全身がかかり、声に出ない悲鳴を上げた。
「~~~~~~~~~~ッッッッ!!!!!!!」
痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い
イタイイタイイタイ
イタイイタイイタイ
イタイイタイイタイ
苦しい苦しい暑い苦しい
イタイイタイ苦しいいあああああ
助けて助けてだれかだれかだれか父さん母さん父さん母さん父さん母さん
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
そう思っている間にも体は動かせず、その代わりに地面に深紅の池を作っていく。
過度なストレスに体中体液にまみれて、関節はほとんどが曲がってはいけない方向に曲がり、これは無理だなと周りの人もあきらめていった。
恭弥を轢いた軽トラは先の電柱にあたってピーピーなっていた。
そしてだんだん意識が薄れていく・・・・・・・・
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「うっ....」
目を覚ますと恭弥は仰向けに倒れていた。
「知らない天井だ」
実際は天井ではなく空なのだが、これを言わないと始まらないらしい。
あたりを見渡すと、上には雲一つない空 前には何もないだけの世界が続いている地平線、足元には真っ白な床が広がっている。
恭弥も自分がいる場所が外(?)だという明らかにおかしい状況に困惑している。
「どこだ?ここは。」
しかし、恭弥は振り向いた瞬間に絶句する。
ワンルームの部屋があって、その中にある部屋でだれかが寝ているのである。
場違い感が否めない。
「あの~すみませ~ん!」
この状況に困惑しつつも、この人が何か知っているのは間違いないと思って、恭弥はその人に声をかけた。
「ン~~~......」
起きた人と目が合った
「・・・・・・」
「・・・・・・」
恭弥はその女性のあまりにきれいな顔に目を奪われた。
日本では絶対にありえないほどの美少女なのである。
透き通るようにきれいな白い髪の毛。
みずみずしく赤ちゃんにも後れを取らないようなきれいな肌。
丸くくりくりした黒い瞳にすぅっと通った鼻、ぷっくりとして健康的な唇。
恭弥の身長が175センチで見下ろすくらいだから、身長は160センチくらいだろうか。胸は大きいわけではないがないが小さい訳でもない。美形ってやつ。
100人に聞いたら120人がかわいいという非の打ちどころのない容姿。
しかしそれは、その美少女も同じであった。
恭弥もまた、相当なイケメンなのである。
学校では前髪を長くしていてその素顔を見た人はいなかった。
高校入学当初に話しかけるなオーラ全開だった恭弥が、後から友達を作るのはほぼ不可能であった。
しかし就職活動をするために身だしなみはしっかりしろと言われ、前髪を切り、その素顔は
凛としたさわやかイケメンだった。
しかしその美少女が見惚れたのも一瞬、今の状況を理解したのである。
人と接した経験が少ない彼女からしたら、寝ているところを見られたらそれは悶絶ものなのである。
「~~~~~~~~っ!!!」
「あの!大丈夫なんで!落ち着いてください!」
恭弥が声をかけたことで少し落ち着いたのか2,3回深呼吸してから恭弥と向き合った。
「あ、あの。先ほどは失礼しました。私の名前はレフィーアと申します。」
「あ、俺は佐藤恭弥って言います。いきなりなんですけど、ここはどこなんですか?」
「あっ!ここは神界です。言ってみれば転生する人がここに来る?みたいな感じです。」
「それで、レフィーアさんは誰なんですか?」
「私は女神です!」
「女神にも睡眠が必要なんですね。」
自慢げに言うのでちょっとからかってみたくなってしまった恭弥である。
「もうっ!それは忘れてください!」
それは無理だろと思いながら恭弥は続ける。
「ははは、すみません。それで俺はこれからどうなるんですか?」
「今までいた世界に記憶をなくして転生するか、地球ではファンタジー(?)でしたっけ、剣と魔法の世界にてんs『剣と魔法の世界で』...え?いいんですか?何も説明してないですけど。」
「当り前じゃないですか!地球に戻るなんて愚問中の愚問ですよ!」
「え?そうなんですか?今までここにいらっしゃった方は迷わず元居た世界でしたけど。」
「おかしいでしょそれ!どんな人ですかまったく!」
知りもしない人に理不尽な怒りをぶつけるテンションが上がってきた恭弥である。
それもそのはず、何度も見てきた異世界転移が現実に起きそうなのだ。
「大体500年位前でしたね、なんでしたっけ、なんか織田ノブナガさんでしたっけ?すごい強そうな人でしたよ。」
まさかの知っていた人であった。あの人でしょ、
たぶん天下布武
しかしここでふと疑問に思ってしまった。
「え?レフィーアさんって500年以上前から生きてるんですか?てことは今『恭弥さん?』......な、何でもないです。」
「よろしい!」
美少女に目だけ笑ってないをされるとさすがに怖い。
「それで?向こうはどんな世界なんですか?魔物とかいるんですよね!冒険者ギルドとかも!そして何より俺の能力は??」
「ちょ、ちょっと待ってください!そんなに楽しみなんですか!?はっちゃけすぎですよ!
と、とりあえず、あなたにこれから行ってもらう世界は、ナチュシスタという世界です。もちろん魔物もいますし、それを狩って生活する冒険者という職業もあればギルドもありますよ。あと能力のことなんですが...」
レフィーアが言いよどんだことで、能力はもらえないんじゃいか?という不安に包まれたが、杞憂だった。
「わ...」
「わ?」
「わたしとっ..け..結婚してくれませんか?」
「.........は?」
さすがにこれには理解に苦しんだようだ。出会って少ししかたってない超絶美少女にプロポーズされたのだから。
「い、いやならいいんだす!」
噛んだ。しかも顔ももう沸騰したかのように赤く、熱くなっている。
「いや、ちょっと待って、なんで?ていうか、なんで俺?」
「わ、私だって寂しいんですよ!こんな場所にずっと、ずぅーーーっと長い間一人でいて!昔はいたほかの神様や女神様達だって、ここに来た人とどこか行っちゃうし。。。ひぐっ。。。もう一人になるのは嫌なんです!ユウトさんは話してても面白いし。。。それにかっこいいし...私だって、下の世界にも行ってみたいんです!」
恭弥は、急に泣き出したレフィーアにあっけにとられていたが、だんだんと親近感がわいてきた。
自分が過去に経験した感情と一緒なのである。
おいて行かれる側にしてみれば、それまで仲良かった人が、その存在をすべて否定するように、急にいなくなるのだ。
その時の喪失感と絶望感は、経験した人にしかわからないものがあるだろう。
レフィーアもそうなのだ。それまで仲良かった人が急にいなくなって、その上話し相手もいない。
恭弥の場合は心の支えがあったが、ここでは違う。本当に彼女一人しかいないから。
恭弥はこれからの人生で大切な人を作らないようにしようと思っていた。
大切な人がいなくなるということは、何度繰り返してもなれることはない。
だから彼は、また大切な人を作って、その大切な人がいなくなるということをもう二度と経験しないように。
しかし彼のその意志は一瞬で崩れ落ちた。
自分の意志は弱いななんて思ったりもしたが、それよりも、自分と同じような経験をした彼女をここに取り残していくという選択肢は恭弥の中では消え去っていた。
神様を守るというのもおかしな感じだが、絶対に守ってやろうと思った。
そして、自然と手が出て、彼女の頭を撫でていた。
「あっ.....」
レフィーアは驚いて恭弥の方を見た。
「安心しろ、約束する。俺はこれから絶対にレフィーアを1人にしない。だから困ったり辛かったりしたらなんでも言え。俺ができる限りのことをしてやるから。だから...その..だな.....俺でよかったら、結婚してくれないか?」
そう言って真っ直ぐレフィーアのことを見つめた。
そして彼女はその瞳に涙をためながら今までで1番の笑顔で言った。
「はいっ!!!!」
その瞬間、恭弥とレフィーアの体が輝いた。
なんか女の子のセリフって難しいんですよね。