サイドＡ なお
この小説は女性同士の恋愛を書いております。
サイドＡ なお
プロローグ
私は時々考える。
小指には運命の人と赤い糸で繋がっているという・・・。
でも、いったい何人の人たちが運命の赤い糸に気づき、
糸とたどり、運命の人に出逢えたのだろうか・・・。
運命の赤い糸を自ら切ってしまった人は、もう二度と度運命の人とはめぐり逢えないのだろうか・・・・。
この細く長い小指。
あなたの赤い糸は、誰と繋がっているのだろうか・・・。
それとも、誰とも繋がっていないのだろうか・・・。
あなたは一生女と女の間を渡り歩き、
独りで命を終えていくのだろうか・・・。
私はあなたの幸せを願いながら、
あなたの孤独を祈る・・・。
からませたあなたの白い指に、
私はそっとキスをする。
１−１
うるさい。
まわりの人々の声。
誰がなにを言っているのか、全然聞き取れない。
音楽もうるさい。
さっきから足も痛い。
椅子に座りたいのに、どれも塞がっている。
私はここに来たことをこのお店に入って５分もしないうちに後悔した。
いくら男に捨てられて落ち込んでいる私を慰めようとしても、ここはないと思う。
隣でキスをし始めた恋人たちにぎょっとしながら、友人を探す。
友人はちゃっかりカウンターで知らない人と楽しそうに会話をしている。
まんざらでもない顔しちゃって、なによ。
その人、女のひとよ！
女に口説かれて、嬉しいの！
この変態！
先に帰る・・・と友人に告げるため、キスをしている二人の間をわざわざ通ってカウンターに向かう。
片方の女が私にウィンクをして、また恋人の唇を塞ぐ。
腕の中に恋人を抱きながら、よくやるわ・・・。
友人の所に行くきにもなれず、そのままその女に中指を突き立てながら出入り口に急ぐ。
友人には後で電話でもすればいい。
電話にでれば・・・の話だけど。
ドアの取っ手に手をかけようとした瞬間ドアが開き、桜の花びらと一緒に風が入ってきた。
そして彼女が入ってきた。
両隣にいる女の子たちよりずっと綺麗な笑顔で、ドアの前に立っている私を見ている。
私は動けず、ただ彼女を見ていた。
白いシャツからのぞく鎖骨がきれいだな・・・と思った。
「もう、帰るの？」
私に言っていると思わず、私は後ろを振り返ったが後ろには誰もいない。
間違いない。彼女は私に声をかけているのだ。
私が口を開く前に、彼女の細い指が伸びてきた。
髪にそっと触れる。
私は思わず、ぎゅっと目をつぶる。
「花びらついてる」
耳元で彼女の女性としては少し低めのハスキーな声が聞こえる。
指が髪をなで、頬をなで離れていく。
「はい、取れた。気をつけて帰ってね」
私の手に桜の花びら一片をのせ、彼女は両隣りにいた女の子と一緒にお店に入る。
私の横を通るとき、わずかに彼女の手が私の手に触れた。
私は後ろを振り返って彼女を目で追わないように、慌ててお店を飛び出した。
おかしい。
あの日からずっと彼女の声が、白い細い指が頭から離れない。
彼女が同じ女性から見ても綺麗だから？
彼女が同性愛者だから、ただの興味？
きっとそうに違いない。
私は自分の心に芽生えた気持ちに無理やり理由をつけて、気がつかないようにした。
この気持ちは危険すぎる・・・。
「なお、今夜空いてる？」
昼休みの社員食堂。
友人がＢセットランチを受け取りながら、私の肘をつっつく。
「空いてるわよ。半年先だって空いているわ」
「そう、よかった。え・・っとね、彼女がね、一緒に飲みましょうって言っているの。またあのお店に行かない？」
友人の口からでた「彼氏」ではなく「彼女」という言葉に驚いた。
席に着きながら、私は周りの人を気にしながら声をひそめる。
「彼女って・・・。あんた彼氏はどうしたのよ」
「別れたの。私が今好きなのは彼女だもの。・・・あの夜ね、知り合っていろいろ話をして。
価値観とか趣味とかもぴったりと合ってね。・・・それで・・・そのまま・・・・・・・・」
後の言葉を濁す友人。顔が心なしか赤い。
「・・・まさか。・・・・したの？」
友人が恥ずかしそうに頷く。
「・・・彼女最高なの。女同士だから感じるポイントも分かっているし。なんといってもね、エッチした後ね、彼女ずっと私を抱きしめて口説くのよ。そんなこと男にはできないわ」
「・・・好きなの？・・・・・・その、女性が・・・・」
「なおったら。違うわよ、女が好きなんじゃない。彼女が好きなだけ」
幸せそうな友人の笑顔に、私はそれ以上口を出すことができなかった。
人の気持ちは人それぞれ。
出てきそうになる溜息をから揚げを口に入れることで抑えた。
「お願いよ、なお。一緒にあのお店にいこう？・・・まだ二人っきりだと緊張するの」
私が振られたとき、友人は真夜中にもかかわらずタクシーで駆けつけてくれた。
そんな友情を返すだけ。
ただ、それだけ。
「わかった。付き合ってあげましょう」
見え隠れする気持ち。
かすかな期待。
私はそれに流されないように、ぎゅっと手を握る。
「ありがとう！お礼にビール一杯おごる！」
友人は私のからあげを１つ口にいれながら、二コリと笑った。
読んでくださってありがとうございます。
私自身バイシェクシャルです。
異性愛とは違う同性愛には複雑なドラマがあります。
そんな同性愛の恋愛をせつなく、時には熱く語りたいとおもい書きました。
読んでいるあなたが少しでもせつなく、気持ちが動いてくれたら幸いです。
まだこの小説は続きます。
今後とも読んでいただけたら嬉しいです。
