20
クッキーを半分以上食べたあと、これ以上はやめておこうと布を包み直し鞄にしまう。
座っているのにもじっとしているのにも疲れて、立ち上がり体を伸ばし、軽く辺りを散策する。
誰か探しにきてくれないかなと耳を澄ませていたけど、聞こえるのは草木が風で揺れる音だけで、やっぱりもう帰ったって思われてるのかなと考えていると髪が引っ張られる感覚。
「うっわぁ………髪が絡まってる。」
髪を抜けないように手で掴みながら確認すると、元々癖のついていることもあり、なんかよくわからないくらいごちゃごちゃに枝に絡まっている。
リルに貰った髪飾りも葉とかついてて……これ以上汚れたりしないようにと外し、軽くゴミを落としてから鞄に入れてから髪の絡んだ枝を掴んで上下に振る。
ガサガサと揺れるだけで取れない、まあそれもそうかもよく目を凝らしてみるが、もう結構暗くなっていてどうなっているのかよくわからない。
「う〜〜〜ん???これ切ったほうが早い??」
でも切ると朝起きると髪が鳥の巣みたいに広がるんだよね……まあ長くても絡まると鳥の巣だけど……。
どうしよう……うーん、でも身動きとれないのは……。
「…………よし!頑張って無理だったら切る!」
解くにはまず光が欲しい。明るく照らさないとよく分からないし。
光……火、は燃え広がると色々と危険すぎるから、こう……光の……シャボン玉?
シャボン玉はダメか、すぐに割れると手間がかかる。
となると……そうだ、光る蝶々とかどうかだろう。
いやそれなら蛾にしよう。蝶よりも蛾の方が翅を開いて止まっているイメージがある。
翅を閉じてるよりも開いている方が明るいだろう、たぶん。それはそうと蝶は面白そうだから今度試してみようと思う。
「よし!どんな魔法にするかイメージしないと!」
目を閉じて、頭の中で想像する。
光る翅を持つ綺麗な蛾。その翅は青く透き通っていてまるで色付き硝子のようで、とても綺麗。
それが夜の森を飛んで明るく照らす、ヘンゼルとグレーテルのお話で、ヘンゼルが拾い集めた月明かりで光る白い小石のように、明るく優しく光りだす。
頭の中でイメージが決まると、後はそれを強く願うだけ………なんだけど。
「…………集中できない。」
私が不器用なのか、集中しないと魔法を使うことができなくなる。
使うことがというか、ちゃんとイメージした通りにならない、といえばいいのだろうか。
昔、一度だけそれで失敗をしたことがある。
それから失敗しないように確実にできるものだけ……と決めてやってきたこともあり、すぐに切り替えるかができない。
今無理に発動するのはまた失敗するかも……と手を下ろしてため息をつく。
集中出来ないなら髪を切ることもできないし、明かりも用意できない。
いざという時は、申し訳ないが枝を折らせてもらおう。
引っかかっている枝は細いもので、私の力でも折ることができそうだ。
でも出来るだけそれは避けたいなぁ……。