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作者: VISIA

週末夜のデートプラン(仮)


10:00~待ち合わせ→映画観賞


12:00~昼食(5時間耐久)


17:00~ディナー(3時間耐久)


20:00~自宅でTV(バラエティー~星空番組)を観ながらの

夜食(ジャンクフード8時間耐久)


28:00~締め(GIGAMAX)

 出掛け先の和式トイレで用を足して、壁に設置された尻洗浄ボタン(強)を押す。


 そして、ソワソワしながら洗浄開始を待った。


────洗浄が始まると、尻穴に針金が刺さるような、連続した刺激が続く。


 刺激的な洗浄を済ませ、“水流止めボタン“を押す。


 その時、ボタン上部の点字に興味を惹かれた。


 他のボタン上部の点字と比較しながら、何とか読んでみると、


『とめ』


という点字の表示だった。




 夜になって漸く家に帰還し、最初に向かった洗面所で、脱いだ汗臭い靴下を洗濯機に叩き込む。


 ついでの習慣で、洗濯機の前面に体を預けて喫煙していると、その洗濯機のボタン上部にも点字を見つけた。


 スマホで検索した対応表を見ながら点字を読み始めると、時間を忘れて夢中になっていた。


 更にネット検索を重ねて点字式スマートウォッチを見つけ、そのシンプルな機能美に惚れ、衝動的に注文する。


 そして、左手首に商品の姿を想像して、暫くニヤけていた。



 その時、手の甲に現れていた湿疹が点字として読めるのに気付き、


『いいね』


と読めて、大笑いした。



 週末夜のデートの時、恋人の口元の黒子を、試しに点字で読んでみると、


『ぺ』


と読めた。


────その点字の話を、恋人に伝えてみる。



「2人で見ている星空が、全て点字に見えてきた」


と、恋人は笑っていた。


「あのオリオン座は、点字で読める?」

「ええと、左から読むと“カトニサワヤ“かな。」


────個人の見解です。


「えー本当?じゃあ……こっちの双子座は?」

「カジョニカ。他に、この蟹座が“アカワア“で、おいぬ座が“ギョギョ“だね。」


「ギョギョギョ…なんてね。」

「ははは。」



 突然漂ってきた爽やかな秋桜の香りに身が包まれ、心臓の鼓動が高まり、抑えきれなくなった。


 次第に、お互い口数が少なくなり下を向いて数分が過ぎた頃、自然に脂ぎった手を繋ぎ合う。


 そして、お互い気持ちが高まって、ギュっと抱き締め合った。




 その時、腹を腹で押された恋人は、牛の鳴き声のようなゲップを、自分の耳元で限界まで出し切った。


 恋人のゲップは、菜の花の香りだった。香りは、部屋の隙間(北)から広がって北の世界を包む。


────北の世界の人々は幸せを感じ、涙を流した。



 恋人は同時に、甲高い象の鳴き声のような屁を、自分のエアコンの風上で限界まで出し切った。


 恋人の屁は、秋桜の香りだった。香りは、部屋の隙間(南)から広がって南の世界を包んだ。


────南の世界の人々は幸せを感じ、涙を流した。



 それら2つの香りは、自宅を中心に混ざり合い始め、連鎖的に化学反応が起き、やがて全世界が “謎の匂い“に包まれる。


────全世界の人々は、目を点にして、同じ向きに首を傾げた。



 その世界の中心で、お互い首を傾げながら目を閉じ、初キスに挑んだ。


 その後、色々あって遠距離恋愛となった。


 時々送られてくる恋人のメール付属の画像には、食べ物に囲まれて幸せそうな恋人の笑顔が写っていた。


 世界を転々としながら、菜の花や秋桜の香りが漂って来るたび、幸せと寂しさを感じて涙が溢れてくる。


 そして、その後は首を傾げて顔を洗っていた。

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