森に行ってみます
僕は天を仰ぐように空を見上げた。
まだ日は高い。僕は、次の標的を探し辺りを見回すが、この辺りには他のスライムはもう見かけない。しかし、僕は再び《魔眼》を発動し、あたりの魔力を検知する。するとまた魔力の反応をとらえた。
「あっちか。よし、行こう」
僕はその方向に向かってまた駆け出していた。
その速度は先ほどと同じ。僕は風を切るように走り抜ける。すると草原の奥の方に、群れとなして固まっているスライムが見つかった。多分、群れているわけではないのだろうが、とにかく僕はそれらに向かって《シャドウナイフ》を大振りで、正確に放った。
「「「キュィィ!!」」」
共鳴し合うように絶叫が響く。 僕はすでに絶命し、粘液としてそこにしまったスライムの残骸を見やる。
「これで終わりかな」
僕は達成感とともに、早過ぎたと思った。
「うーん、早過ぎたかな。これから、どうしよう?」
僕は考える。さすがに早過ぎたため、僕は暇を持て余しているのだろうと。せっかくこの世界に来たのだから、ほかにも色々とみて回るべきだ。例えば、と僕は辺りを見回す。《魔眼》を使って、本来の視力を拡張させると、先には木々が生い茂る森のような場所を見つけた。
「あれは、森だよね?」
僕はそれを見て、行ってみようと思った。
「よし、行ってみよう」
こうして僕はまた歩き出していた。今田は走る必要もないため、普通に行く。
◇◇◇
森の目の前までやって来た。見事に整備された道が目の前にそびえる。僕は全体像を見るように、上を見る。高い気が生い茂り、最初の方以外には、光が届ききっていない。
「結構広そうだなー。よし!」
僕は、口元を引き締め、森の中に入る。
◇◇◇
森の中には、木々の葉の間から差し込む光が照らしてた。そこまで暗くはなく、穏やかな森と言った具合だ。僕はこの森に入ってからは周りを観察するようにして意識を飛ばしている慣れない土地では何が起きるかわからないからだ。
バササ!木葉が落ちる。僕はそちらに意識を向けるのと同時に、《魔眼》を発動する。すると、鳥のようなものが何かを感じ取ったかのようにその場から離れて行くのが見えた。
(どうしたんだろう?何かあったのかな)
僕は疑問を浮かべた。しかしまだ、気配を完全には飛ばさない。僕は鳥が飛んで言った方へと歩いて行く。そうして、少し広いところに出たのだった。
◇◇◇
そこには、光が差し込んでいる。他よりも一層強くだ。円を描くように広いそこには、切株が一つある。
しかしこんなに穏やかなところなのに、魔物などがいないのには何か理由があるのかどうか、やはり疑問が絶えないでいた。
「やっぱり、何か変だよね。こんなに静かな森って…少し、不気味だ」
僕はそう言葉を漏らした。その時だ。僕は若干の魔力を感じた。眼で見たのではない。肌で感じ取ったに過ぎないのだ。
「何か来る!ちょっと、強い魔力」
僕は魔力のする方を見やる。するとそこは獣道になったような場所で、そこからこちらに向かってドッドッ!と何かが走って来る音がした。僕はそちらを呆然と見たままだ。決して警戒していないわけではない。
そして、向かって来たものの姿は、『イノシシ』だった。固そうな体毛に覆われていて、長い牙がある。それが、こちらに向かって魔力を放出しながら向かって来たのだ。
「あっ!来た。でも……それじゃあ、僕には勝てないよ」
僕はそう呟く。そして、体の重心をほんの少し右に傾け、まっすぐ向かって来るイノシシ型の魔物の攻撃を躱す。ひらりとその場に漂う幻影のように、ゆらりと外套が揺れる。
「困ったなどうしよう。そうだ!」
僕は立ち止まる。するとこちらに向かって走って来る。その速度を早め、こちらへと勢いよくだ。
僕はそれを見越して、そこに立ち止まった。
そして、
「…………」
無言でそこに佇む。しかし違うところはある。警戒心を最大限解放しきった姿。殺気を放つように、そこに佇むのだ。特に何かをするわけでもない。魔力をなるわけでも、そして魔法を使うわけでも、攻撃するわけでもない。ただその場にいて、相手を微動だにせず、その場に留めているだけである。そして、その動きはやがて止まる。
力を抑えなければ、これだけで失神してしまう場合や、気持ち負けしてしまう可能性だってあるが、僕は普段から殺気なんて放っていないし、一時期は、狂ったように、使っていたがそれからは怖くなってかあまり使わなくなった。逆に僕は、耐え凌ぎ、全く寄せ付けないようにする方へと重点を置き直したのだ。
だから僕の殺気が強烈ではないものの、それなりの力を持っていたことには少しだけ驚き、そして納得もしたのだった。
ドドド!と迫り寄って来るイノシシ型の魔物。
僕はそれに動じることなく、ただ前を睨み見るだけ。そして、3メートル、2メートルと近づいて来る魔物だが、その瞬間、ピタッとその動きを止めた。
「…………」
僕はその場を離れない。しかし、手にはすでに《シャドウナイフ》を手にしていた。
そして僕はその牙に向かって、その刃を振り下ろした。しかし、その刃はほんの少しかすっただけで、牙には小さな傷しか付いていない。なぜならば、《シャドウナイフ》は、本日は『影を固め、刃にしたもの』のため、光を透過する。それに寄って、魔力を抑えることで、ほんの少しだけがする程度に抑えたのだ。なぜ、抑えたのかは、無駄な戦闘を避けるためでもある。
「さあ、行って」
僕は優しく、いつも通りに声をかけた。
その言葉を理解したのかはわからないが、本能的か後ずさるようにこの場を去っていく後ろ姿を見送って、僕はこの森を出たのだった。
少し内容に行き詰まりが早々に出て来ました。
そのため、少し文字数がまた減るかもしれません。
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