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光の黒魔剣士は異世界で冒険します!  作者: 水定ユウ
第2章 王都の黒羽
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閃虎

久々な感じです。

それからもう夏休みです。

また新しい小説を書こうかなと思います。


薙刀を構え装備した僕は、目前の敵に向かって不敵にも笑って見せた。

久々に心地よく戦えている。

そもそもが、僕の使う流派は多対一戦を想定とした実践的なものばかりなので、この状況は五分と言えよう。


逆にだが、ゴブリンロードの方はその鋭利に備わった犬歯を剥き出しにした。

鬼の立ち振舞いを果たして、僕に向けて地響き並みの咆哮を授ける。

それを、なんてことないそぶりで直立不動で体感した僕は、一旦腰を下ろす前動作を行うと後ろに下げた左足を一気に地面を蹴って飛ぶようにして加速させる。


その直後。僕の頭すれすれをゴブリンロードの左拳が通り過ぎた。それを確認した僕は目を逸らさずゴブリンロードの腹部を狙って薙刀を振り下ろした。


(確かユウタの技もこんな感じだったっけ?じゃあ、僕も)


刹那。薙刀の挙動が変わった。

振り下ろしていた湾曲した刃を、真っ直ぐにしたのだ。つまり、次へと変化した。その変化のさまは一瞬で、なめらかなものだ。

手首のスナップを利かせて、無理なくこなしたその動作こそ魔獣無双流には本来ないものだ。こんな汎用性に飛んだような技の冒涜はあまりしたくはなかったが、少しばかりはアレンジを加えてみるべきだろう。


「魔獣無双流汎用術ー『一角ノ突(いっかくのづき)』!」



そう名乗ってみせた。

そして振り向きざまに今度は湾曲した刃を振りかざした。

するとそれを強靭な二の腕でガードされる。


グギッ!っという音が響いた。

軽い衝撃が腕をつんざく。両手のが麻痺して薙刀を落としそうになったが、直後には右拳が地面をかち割るように振り下ろされてしまったので、仕方なく後ろへと後退した。


「やるな。じゃあ、これはどうかな?」


僕はその言葉を放ちながら、息を吸い込み吐き出した。それに合わせて駆け出す。


タイミングを逃さないように気をつけながらも、薙刀を前に構えて、隙を作らない。

それをドンピシャのタイミングで合わせるようにして目前へと振るわれる拳をギリギリで回避すると、右脇腹を上がるようにして二連撃を繰り出す。しかしこれは決して、魔獣無双流ではない。本当の目的は、別にあった。


僕は真後ろを目指していた。

ゴブリンロードの死角となる位置。しかしそれが目的ではなく、攻撃に転じはしなかった。だがそれでも決して攻撃の手を緩めてはくれず、大粒の小石が打ち鳴らされた拳によって爆砕された。


爆風のようになって襲いかかるその衝撃波をこれはあえて利用して僕は吹き飛ばされる。

そしてその手が掴んだものこそが、本当になしたかったことだ。そう、僕の手には剣が握られていた。


そうそれは先ほど弾き飛ばされてしまっていた僕の剣だ。

その剣を手にとって、構え直す。握りを強くして態勢を立て直し前を向き直ると、今度は睨むような視線を向け威圧する。しかし全く効果はないらしい。


「まあ、無理だよね」


頬を書きながらそう呟くと、ゴブリンロードは太い右足を前に出した直後には左拳を猛烈な速さで振りかざしてくるのが見えた。

その動作は本能そのもので読むことは簡単だった。


「そいっと」


軽く頭を傾けてその攻撃を回避すると、それに合わせて右足を踏み出して左足で地面を蹴ってストライドを決める。


「喰らえよ」


僕は懐へと潜り込んだ。

そして剣戟を繰り出す。


まず繰り出したのは『刺突ー一角』だ。

剣先を懐へと押し込む。そしてそれを引き抜き、納刀後には即座に抜刀する。『居合ー燕』だ。神速域にまで達するその抜刀術を繰り出しては、今度は剣の腹で左腕を払いのけて、同じく左足の膝の皿を利用して高く舞い上がると、振るい上げた剣でその左腕を斬りかかる。

禍々しい黒いオーラを放つその剣には当然ながら魔法を付与させていた。そして斬り捨てる。


血しぶきの雨が僕の額や頬を掠め取り、握りを甘くもした。

吹き飛んだゴブリンロードの左腕。しかしそんなこと、一切気にするそぶりを見せないこの鬼は、僕に向かって余った右腕を繰り出す。

だがしかしそれを落下を利用して回避すると、転がるように次の攻撃を開始するために再びゴブリンロードの正面に立つ。懐へと即座に移動した僕は、次の技を取り掛かる。


剣を構え直す。

まず繰り出したのは右袈裟斬りからの下からの斬り上げ。

次は、左斬り上げを挟んだの唐竹。即座に繰り出される攻撃に合わせるかのように、妨害の拳が飛んでくるがそれを遠心力を利用して回転しながら回避すると、左薙を突きつけた。


「はあー、せいやぁー!」


最後。強烈な突きを見せつけた。


「魔獣無双流剣術ー『箕作(みつくり)』」


繰り出して見せた連続攻撃に少し息を荒げて乱した。

しかし今だに動き続けるその巨体は、僕に向かって拳を振るう。それを後ろに飛んで回避する。


「全く……休ませてくれないんだね」

「ぐるうぅぅぅ」


息を整えさせてもくれずに、僕はため息混じりにそう嘆く。それを聞くかもなくゴブリンロードは無慈悲に拳を振るう。それを剣の腹でガードすると、僕は一旦距離を取り地面をすらせた。


そして再び剣を替え直すのだが、もう同じでは通用しないだろうと思った。よって次の策に出る。これが今僕が出来る全力で、この場において僕の思いついた最後の技だ。


まずは態勢を低くする。

そして剣先を前側に向けるように倒してから横に薙を払う。そのまま呼吸を整えた。


(一、二、三、四……)


目を閉じて空気の微妙な振れ幅を肌で感じ、ピリピリとする刺激を聞き取る。

こちらへと近づいてくる足音に耳を傾けること数秒。僕はそれが自分と相手の間合いに入った瞬間。


ー全力で地を蹴り進めたー


それはほんの一瞬。

単純な速さであるならば、『居合ー燕』の速度など軽く凌駕してしまう。しかしそれだけではない。その瞬間に起こったものは、刹那の炎。轟々と立ち込める紅蓮の炎が一瞬にして立ち込めた後、炎と炎とが導火線となりスパークを生む。


すると一瞬にして弾けてしまう。

だがそれでよかった。僕はゴブリンロードの真後ろに立ち、重心を傾け低くなった体を起こした。すると、ゴブリンロードの体は傾きそして地面についた。そして起き上がることはなかった。


「魔獣無双流剣術煉獄牙ー『閃虎』」


とっても静かにそう一言だけ呟いた。



◇◇◇



「師匠。この技、こんなにも体に負荷がかかるなんて聞いていませんよ」

「そうですね。私も知りませんでした」


師匠は淡々と言葉を連ねた。

この人は規格外にも程がある。普段は繊細。しかし戦闘時にはその繊細さに豪快さが足される。

全くこんな獣人聞いたこともない。


この人がこの国へと流浪の旅人としてやってきて定住するようになってからはや数年の月日。その頃から僕はこの人に弟子入りした。そして今まで一度も勝った試しがない。


本当に圧倒的な力を誇る。

単純な魔法以外の技術であればこの国に勝るものはいないだろう。そんな人だった。そして今僕はこの人から煉獄牙と呼ばれる型を習っている

これにはどれも炎のエフェクトがなぞり、そして獰猛極まりない技ばかりで、体にこたえる。


「だがこの技を習得すれば、君はますます強くなるだろうフェイ」

「でもそれであなたに勝てるんですか?」

「だが、それでもやることに越したことはない。相手に勝てるか?ではなく、勝つ!という気迫が大事だ」

「そんな」

「が最も大切なことは、基礎をしっかりとすることと、それから……」


そこで意識が戻ってきた。

これは僕と師匠との修練の日々だ。まだまだこんなものではないが、この技にはそんな意味がある。もっと修練と基礎をしっかりしないと、最近怠けてたから。そしてもう一つは、守るべきもの(・・・・・・)の存在なのだ。

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