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光の黒魔剣士は異世界で冒険します!  作者: 水定ユウ
第2章 王都の黒羽
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ゴブリンロード


「魔獣無双流小太刀術ー『地獄蜘蛛』!」


二対の短剣が、ゴブリンの体を引き裂く。

手足の関節の動きを奪って切り裂く。そんな動きが一瞬の間に乱れるような攻防が巻き起こったのだ。


その場で起きた攻防の末、息を一切切らすことはなかった。

そして周りを見渡す。そこにには血飛沫をあげ倒れ行くゴブリンの死体と、劣悪とした環境下における血みどろの死骸の山だけであった。


異臭を発して嗅覚を異常に刺激する。

鼻を鳴らしてその匂いを吸い込んだ。この匂いの渦を作り出したのは僕自身だ。

そして踵を返すようにして振り返る。

鋭い眼を向ける矛先にいたのは、それは大きな虚影。その影はボクの視線から見ても、随分と退屈そうにしていた。その影は揺らめく。灯した火種が小さいからだ。


「後はお前だけだ。ゴブリンロード」


そう述べた先にいた影。それはゆっくりと腰をあげ立ち上がる。立ち上がると、座っていただけでもかなりの高さがあったが、ざっと見るに五メートルは余裕である。

それは立ち上がると大きく息を吸い込む。そして、鼻を鳴らして口を大きく開ける。


グゥォォォォォォ!


けたたましいサイレンのような図太い声。

洞窟の中が振動で揺らめいて、いまにも崩れてしまいそうでならないハラハラ感があった。まるで地ならしのように感じた。

そしてゆっくりとこちらへと歩みを寄せる。手には物騒な大剣を構え、それを右手で地面を引きずらせながら持ち歩いていた。


その裸体は腰蓑を一枚着ただけで、ほかのゴブリンと違って黒く染まっていた。この前と同じような気がする。ゴブリンキングよりも迫力と年季を感じられた。


長年培って養ってきた、濛々たる気迫からは殺気立ったものを感じた。その轟々たる思いは振動となって、ボクの体を襲った。

魂を震わせ、心を踊らせる心火を灯すには十分と言えるだろう。


「さあやろうか。って、おっ!」


僕が新たに外套から真新しい剣を構えた途端に、ゴブリンロードはその巨体とは裏腹に猛烈なスピードで迫りよった。

瞬時に剣をしたから上へと流すように斬りかかり、軌道を変えると今度は流れる様な右袈裟。そんな動きを見て、確実に反応ではなく知識で動いているように見えた。


その剣の軌跡を僕は後ろに思い切り飛んで躱す。

剣の軌跡は全て見えた。難なく躱すと、今度は僕の方から反撃する。


「はっ!」


思い切りよく剣を振るう。

左薙で、相手の剣にかかる力を利用して押し返すと、それをさらに九十度真下へと斬り伏せる。


それを僅かな時間でやってのけ、守るのではなく息の根を止めるように前へと出た。そして剣に魔力を全力で振るう。

黒く禍々しい刀身が完成し、魔力で編んだ《シャドウブレード》の剣が作り出された。


そして今度はそれを下にして、左に斬り上げた。

刀身が触れたところは燃え広がっている業火のように焼け(ただ)れ、空を追い求める。ボクはそんな状態をきっちりと、そしてしっかり対峙するように魔力を充填させる。

これも師匠の技で、


「魔獣無双流剣術ー『黒太刀魚(くろたちうお)』」


僕自身はこの魔獣無双流の動物達に会ったことすらないし、見たこともない。

前に何度か彼に教えてもらったが、既に現存せず存在が全ての世界から消滅しているため、その世界唯一の生き残りである彼の持ち合わせの知識の限りではとてもわかりやすかったが、この技にどう活かされているかは誠に不明である。


しかしながらその一撃は、誠にゴブリンロードの肩越しから胸筋にかけてを一筋の線を作り出し、血を滲ませた。溢れ出る血しぶきの雨。それがボクの表情を曇らせる。


だが、ボクはこの瞬きの一瞬の間を決して逃しはしなかった。


この一瞬の隙を見て、好機と考えて次の剣術を違える。

今度のは何を隠そう技ではない。純粋極まりない僕自身の腕だ。右、それから左と次々に袈裟斬りを喰らわす。

続けざまに今度は、左から斬り上げて右へと下ろしそのまま下から上へと突き上げるようにして斬り上げる。そこから間をおかずに今度は唐竹、もとい真一文字を叩き込む。


するとどうやら流石に効いたらしく、ゆっくりと膝をつく。

そのがら空きとなった背後を狙って今度は斬りかかろうとした瞬間。ゴブリンロードは大剣を地面に突き刺して大きく仰け反り、攻撃の動作を物理的に潰す。

そんな動きに対処して、追撃を迫るために一瞬身を避けた瞬間。今度はゴブリンロードがその大きな拳を僕へと振るってきた。


「うわっ!」


そんな動きには到底対処の使用がな、簡単な受け身の体制をとったのだがそれでも痛みがあった。背中を強打したらしい。そのせいで、少しな痛みがあるが如何やら骨は折れてはいないみたいだし、砕いてもいないようだ。だけれども、流石にバランスを少しばかり崩すこととなって、少し経つまでに時間がかかる。


「っ。はあ、はあ、はあ。結構痛いな」


僕は息を荒げながら、叩きつけられた体を起こす。

手が少し痺れ、痙攣し汗で滑って剣が滑り落ちた。


その隙を狙って、今度はロードの方が攻撃を仕掛ける。

大きく振るう大剣は、僕の命を狙って振り下ろされる。が、しかし。その一瞬のラグを見つけ出して回避した。


背後にあった岩肌の壁が、ボロボロになって見るも無残にこぼれ落ちた。

土が溢れる最中に、同時になって剣がはじき出された。おそらく濁流となって押し寄せた土砂に似た何かが、剣を飲み込んで弾いたに違いない。


土に飲まれずに弾き出された剣を拾い上げるべく立ち上がったが、その手前には怒りではない何かに囚われたと思われるロードが鎮座している。

それを見て、より好戦的な衝動が伺えた。

僕は剣を拾うことを諦め迎え撃つ事にする。


しかし僕はもう予備の剣を持っていない。

なので致し方ないが、僕はプランを変えた。そう、剣に槍、小太刀ときて次に取り出したのは、薙刀だった。外套の中から、槍と同等の長さを誇る柄が現れるとその先には三日月型の湾曲した刃が揺らめく陽炎のようにほんのりと煌く。

ボク自身。あまり薙刀との縁はそうない。むしろ、ユウタの方が馴染みは深いだろう。そんな鋭利な武器を手にした。


構え方は師匠に教えていただいた。

あまり慣れてはいないが、とりあえず習得はした。しかしよくこんな武器まで売っていたものだ。


それを構えてこう宣言。


「さあ、魔獣無双流の極意をその身に刻めよ!」




まあまあです。

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