大剣使いのエルフ
その日、いつも以上にハードスケジュールであった。
しかしだ、その元凶となった彼女はどこか楽しげだった。身体中から、溢れ出る緑色をした魔力のオーラが見え隠れする。それを見た、僕は感心した。この人は、きっと相当の魔法の使い手であることは、《魔眼》を使って、魔力量を見るだけでもわかる。しかし何故かは分からないが、背中には巨大な剣だ。
(何で、剣を背負っているんだろうか?確かに、近接戦好きみたいだけど……あの物騒な大剣は何でだ?しかもあの大剣、普通じゃない。機械的すぎる。少し、面白いな)
僕はそんな風に交錯しながら、物事を考えていた。
それを気にしたのか、エルフィーは突然こちらを向いた。先頭を歩いていた彼女は、「どうした?」と聞いて来た。僕はそれに対して、「何でもないよ」と返した。
「それよりもさ、エルフィー、少し聞いてもいい?」
「何だ?」
「エルフィーって、絶対に魔法が得意だよね?」
「その心は?」
「圧倒的な魔力量と、質。《魔眼》を使えば一瞬で分かるよ」
「流石だな、フェイよ。君のその眼は、本当に凄いし、面白い。私の種族と直結する答えになっているな」
「種族?じゃあやっぱり……」
「ああ、当然だ。こう見えても、私は人間ではない。少しだけ魔力の多い種族。エルフというものだ。分かるか?」
「はい。分かります」
そう言った。すると、少しだけ驚いたようだ。僕が本当にあっさりと受け入れてしまったからだろうか。拍子抜けしてしまっている。僕が、一言返すと、言葉が飛んできた。その言葉は、とてもあっさりとしていた。
「い、いやすまない。まさかここまで、あ、あっさりと受け入れてしまうとは。まったく、大したものだよ、君は」
「そうですかね?僕にはそんな考え方はなかったです」
(そんなにエルフって珍しいかな?……わからないけれど……)
などと考えてしまった。
「まったく、君はどこまで噛んだいなんだ。いや、ただの無知なのか?」
「それはひどくないですか?」
「そうかもしれないな、すまない」
そう、笑って返された。僕は起こる気もしなかったが、一応として怒ったように返した。すると、そんな態度をされたので、少しだが驚いた。そしてらエルフィーは、僕に向けて何故かは理由は分からなかったが、剣を差し出した。とても大事そうに、丁寧に研がれていた。
「あの、これは?」
「見てみろ。面白いぞ」
僕はそれを受け取ると、小さくではあるが、「おっ!」と声が漏れた。すると、「重たいだろう」と言われた。確かにそうだった。
また限りでは、普通の大剣。しかしだ。刀身の部分と、柄の部分には、その間を取り持つようにして、異様な形をした丸い物体が付いていた。絶対に稼働することがわかる。それは、機械的なものを表すのには、絶対的であり十分すぎるのであった。
そして僕は、それを両手で握る。すると、ズッシリとした重さが伝わり、重心が前に倒れそうになる。それを必死になって、身体を使って、足に力を入れた。そして、それを振るって見せた。すると、エルフィーは感心するように見えたし、そしてまた驚いているようでもあった。
「凄いな。すぐに慣れてしまうとは……それの名前は、大輪丸。私は、そう呼んでいるが、本当の名前は違うぞ」
「大輪丸……彼の暮らしていた国と同じような名前だな」
「えっ?」
「いや、何でもない。忘れてほしいな」
「ああ、それは構わないが……しかし他にこの剣について、何か変わった所はないか?」
「変わった所ですか?ありますよ!この剣、絶対に変形しますよね?彼なら、喜びそうだ。あとは、そうだなそういうのが好きな人にとっては」
「おお、流石だ」
エルフィーのその言い方から察するに、どうやら図星のようだ。しかし卑屈にはなっていない。むしろ光栄のようだ。
「おお、この剣のことがわかってくれるものが他にいたとは思わなかっだ。祖国の者たちは誰一人として、この剣の真価について、考えてもみなかったが。やはり、同じ剣士でも君のように、優れた者でなければな」
「えっ?!何で、僕が剣士だと?」
「そんなの決まっている。剣について知らぬものが、剣については語れるまい」
「あ、ああそんな理屈ですか……」
「そうとも」
僕は呆れてしまった。多分、相当剣に詳しいはずだ。しかしそれだけではない。きっと、近接戦については、他の者の右に出るものはいないとも思えるような気迫を感じる。それが、先程剣に触れた瞬間に僕の中に流れてきた。そんな気がした。だから僕は、彼女にこう言った。
「あとは実力を見るだけですけど、僕はもう認めていますよ。貴女の実力を」
「そうか?でも、せっかくだ。私の剣さばきを見ていてくれ」
「いえ、僕も戦います。ついでに、僕の腕も見てくださいよ」
「心得た。それでは、行こうか」
「はい!」
僕は大きく返事をした。
そして歩き出す。向かうは魔物の討伐だ。何を討伐するのかは、二人で相談しあった結果、ゴブリンとなった。ゴブリンとは、小型の鬼の事であり、体皮は緑色をしていると聞く。僕の知る限りではそうだし、フレアに聞いた限りでも間違いはなかった。だから、きっと大丈夫だろうと思っていた。この時までは。
◇◇◇
「さてと、ここのようだな」
「この森の何処かにいるんですね」
そう言いながら、僕達がやって来たのは、森だった。特に固有の名前はないが、その森は広い。そして、魔物の巣窟とかしている。そして今回討伐する予定のある、ゴブリンもまたその内の一体であることに変わりはなかった。だから僕達もそのために、討伐目的でやって来た彼らかにしてみれば、敵でしかない。しかし、それが依頼とあっては、引き受ける他なかった。だから僕は容赦はしない。と、言っている側から、ふと隣を見てみると、そこにはエルフィーがいることを把握した。そして彼女は、魔法を行使した。そして、森中に広げた魔力の帯を、広げていく。そして一言、「見つけた」と呟くと、僕に向き直り、こう告げる。
「向こうにいた。急ごう」
「う、うん。それはいいけど」
「如何した?」
「いや、なんてない。さあ、行こう!」
「わ、分かった」
そう言い合いながら、僕多々は駆け出した。そして走って森を抜ける。そしてそこは、広い草原が広がりその中央には、確かにゴブリンがいたが、その真ん中にはひときわ大きなものもいたことを僕達はここで初めて知ったのだった。




