始まりの街の冒険者
二話目です。
一話、2000〜4000ぐらいを目安に頑張ります。
時々更新です。
世界は一変した。目を開けると、そこに広がっていたのは広大な草原。僕の真上には、木陰を作る大樹が一本だけ生えていた。
草原には色とりどりの花が咲き、整備されているであろう、茶色の土が一本の線を描く様に伸びている。あれは、道なのだ。
「ここが、僕のやって来た異世界?」
辺りを見渡すと、平和そのものだ。
たまに馬車を見かける。つまりここは、そこまで発達していない世界だということが伺える。僕は遠くを見やる。そこまで遠くを見ることはできないので、一旦木の上に登ると、そこから《魔眼》を発動した。
《魔眼》それは僕の持つ魔法の一つだ。眼に魔力を集めることにより、魔力を感知することができる。しかし、制限もあるため、微弱な魔力しか感じることはできなかった。しかしこれでわかったことがある。
「えっと、あっちから複数の魔力を感じる。人が、獣か、はたまた魔物か。わからないけど、ここでじっとしていても仕方ないよね」
僕は木からゆっくり降りると、魔力のする方へと歩いていく。そのために、まずは僕は道に出ることにした。そのために、僕は草原を簡単に横断したのだった。
「けど、何も持ってないや。どうしよう、魔物か何かが現れたら……」
僕は不安になったので、極力戦闘は避けようと考えた。そしてその期待は叶い、そもそもが魔物がいるかわからないが、僕はなんとか道に出た。
◇◇◇
そのまま道なりに進んでいく。その際、馬車に会うことはなかった。そして、町までたどり着くのには、そう時間はかからなかった。
「えっと、ここが……【アルカリウム】?って街かな?」
僕は、街への入り口を見た。そこには門があり、門番と思しき、兵士の人たちがいた。そして一人一人の身なりと持ち物チェックをしている。それも、門は一つではない。複数だ。そしてそこには大勢が並んでいる。特に多いのは、荷馬車でやって来た商人と思しき人たちであった。
(僕も並ばないと)
そう考えて、そのうちの一つ、普通の歩行者がいるところに並んだ。
そして思った以上に早く、僕の番までやってきた。
「次の者」
「はい」
「名前と身分を証明するものは」
「フェイ・ダルクリオンです。身分を証明するものは……その……」
僕は眼前にいる少し痩せ気味の兵士の人と目があった。その人は、首をかしげるわけでもなく、僕が戸惑っていると追い返すわけでもなく言った。
「身分証を持っていないのか。ならば、これに触れてもらおう」
「これは?」
その兵士が取り出したのは一枚の灰色の石版だ。
そこにはいくつもの文字が書かれており、ちょっと学んだだけの僕にはなんと書いてあるのか読めなかった。そのため、説明が入る。
「これは、悪事を働いていないかを見極めるための【魔導具】だ。反応がなければ通って良いが、次からはなんらかの証明書を持ってくるとこんな面倒なことはしなくてもよい」
「あっ、わかりました」
僕は手をおけばいいのかと一瞬迷ってから、その石版に手の平を置いた。
すると、眩く一瞬だけ強い光の粒子が浮き上がった後、その色が青色に輝いた。
その様子に戸惑っていると、兵士の人は「前科なし。問題ない」とだけ呟いて、そそくさと僕を門の中へと入れたのだった。
◇◇◇
なんとか問題なく入った僕は、まず街の様子をざっと確認した。たくさんの人、種族問わず行き交っている。これを見るだけでも、かなりの情報収集となった。僕は、着込んだ外套を翻しながら街を見て回る。
中央通りってぽいところでは、様々なものが目に入る。リンゴのような物を売るお店や、盾と剣とが交差する看板を吊るす店。様々だ。街ゆく人の格好はというと、布製のものだ。しかしたまに、違う格好を見やる。
「あれは、何だろう?」
僕が注目したのは、他とは身なりが違う甲冑を着込み、腰に剣を携えた人や皮の衣服に、方にはこれまた分厚い皮。そして、腰には幾本ものナイフが吊るされていた。
僕は街行く人に声をかける。
たまたま通りがかった気弱そうな青年だ。
「あの、あの人たちは?」
「ああ。【冒険者】のことかい?」
「【冒険者】?」
僕はあまり故郷では聞き馴染みのない言葉に少し首をひねった。確かユウタも言ってたっけ、【冒険者】って言う人たちがいること。
「あの、あの人たちは今からどこへ?」
「うん?知らないよ。でも、多分依頼を受けたんじゃないかな。そもそも、君知らないの?この街は冒険者の街ってこと」
「冒険者の街?」
僕はそのことを聞いて思った。
(そうか、この街に来るってことは、冒険者になる人もいるってことだ。そうすれば、身分証も、それに収入も入る。それに『強くなれる』近道かもしれない)
僕はそう思っていた。この世界に来た一番の目的は『強さを見つける』こと。そして、『その意味』を探すことにあるのだ。だったら、何を迷っている。僕ならできるはずだ。今はあまり力はなくても、僕はあんまり強くないけど。僕でもできるかもしれない。守ることができるかもしれない。
ただ、そう思っていた。
「あの、【冒険者】になるにはどうすればいいんですか?」
「ああ!君も【冒険者】になりに来たのか!だったら、この先に【冒険者ギルド】っていう大きな建物があるからそこに行くといいよ。なに、すぐにわかるから」
「あっ、えっと、ありがとうございます」
見た目によらず、迫力のあるその青年に押し負けてしまった。
僕は、その人に道順を教えてもらった。始めて来た世界の初めてな街。それに文字もイマイチ理解しきれていないせいで、よくわからないけど、親切に教えてくれたおかげで僕は前に進む。その際、しっかりとお礼を言うことを僕は欠かさなかった。
「あの、ありがとうございました」
「いいよ。頑張ってね」
「はい!」
僕は軽く礼をした後に、ティラミさんから言われたことを思い返した。まあ、癖でつい出てしまったことだ。忘れることにしよう。でも同年代の人にも、普通に話す。その心情を胸に前へと進むのだった。