魔法使いの少女
とりあえず、僕らは手近にあった席へと移動した。
そこで僕はリアの様子を伺っている。先ほど見た金貨に魅了され、驚いたのか一瞬固まってしまっていたからだ。
「リア、大丈夫?もう平気」
「ええ、大丈夫よ。ごめんなさい、私金貨10枚なんて見たことなくて、大金だもの」
リアは完全に正気に戻り、落ち着きを取り戻している。リアの目からは金に対しての執着の念は一切感じない。よって、落ち着きさえ取り戻せればあとはいつも通りだと踏んだのだ。
「それにしても、金貨10枚か……だいたい銀貨500枚ぐらいだったよね。銅貨なら5000枚か…確かに大金だ。僕だって、この金額は目を丸くするよ」
「そうよね。…じゃあ、分けましょう、と言っても、ほとんどフェイのお手柄だものね、フェイが配分は決めてね」
僕はそう振られて、迷うことなく金貨5枚を受け取った。そして残り半分はリアの目の前へと移動する。
その光景に疑問を持ったのか、リアが「なぜ?」と言いたいようにこちらへと顔を向ける。
「フェイ、こんなにもらっていいの?どうして、私よりもフェイの方が活躍してたのに」
「僕はそんなこと気にしないよ。二人で倒したんだ、だったら二等分するのが筋じゃないの?」
「普通はそうかもだけどね、今回はほとんどがフェイ一人で倒したようなものなのよ!あのとき、フェイがいなかったら私……」
「その時はそうかもしれないけど、現に今ここにいるんだ。過去のことに囚われていても、前には進めないよ。そう思うのなら、これからリアが僕が困ったときに力を貸してくれればいいよ。それにパーティメンバーをほっとけないしね。まあ、過去に囚われてるみたいな僕が言っても説得力はないね」
僕は少し俯き加減に縮こまる。
過去に起きた暴走それが、たまによぎることがある。しかし僕だって変わったのと心に強く頷き返した。
「うーん、私にはフェイのことはよくわからないけれど、フェイが困った時は私が助けるからね。それと、ありがとね」
「うん」
そう言って、リアは目の前に置かれた金貨を大事そうに皮袋の中に入れた。僕はそれを見て、今日はここで解散した。
◇◇◇
次の日、僕はいつも通りギルドへと足を運んだ。ギルドのスイングドアを越えると、そこにはいつもとは違う光景が広がっていた。
「うわー、可愛い」
「君、いくつ?お姉さんたちが、冒険者としての役目を教えてあげるね」
「魔法使いなんだ。偉いねー」
円を描くようにして、何かを語っていた。僕は歩きながら中を見ようとすると、そこには一人の少女がいた。周りで繰り広げられる光景に疲れているのか、動揺しているのか眠たそうな眼差しを周囲に向けている。そして、その少女はぱっと見ではあるが、人形のように整った顔を持つロリっ子と呼ばれるものであった。そしてそのロリっ子の少女はとうとう口を開いた。
「あの、そろそろ失礼しても……!」
恐縮したように、落ち着いた口調で声を出した。はたから見れば、冷たいような言い方かもしれないものだ。しかし、その声の主はそう告げた後に、何かが引っかかったかのように声を高めた。
僕はその光景を気にせずに歩き去るのだが。
◇◇◇
僕はクエストボードの前で、立ち止まりリアの到着を待つ。来ないのであれば、一人で依頼を受けるだけなのだが後ろから聞いたことのある声がしたので振り返る。そこには、リアが立っていた。
「ごめん、待った?」
「いいや。僕も、さっき来たところだよ」
そんなたわいもない会話をしたところで、僕らは別の声の主に声をかけられた。
「あの、少々よろしいでしょうか?」
「えっ?あっ、さっきの…」
僕はついそう言ってしまった。そこにいたのは、先ほど輪の中で呆然としていた少女だった。その少女は12〜13歳ぐらいに見える童顔の少女で、眠そうな目の色は、赤みがかっている。特徴的なのは、肩までかかるセミロングの黒髪の前髪、具体的は肩にかかるあたりの色だけが鮮やかな金色をしていた。その少女は、絵本などに登場するような大きな魔女のかぶる帽子をかぶっていて、腰には杖が刺さっていた。
そしてその少女は、僕らにこう話しかけて来た。
「あの、私をお二人のパーティに入れてもらえませんか?」
「「えっ?」」
僕とリアの言葉が重なった。突然のことだったので、どう反応するべきかと悩んだのだ。しかし、僕はすぐに平常を取り戻し、聞き返した。
「えっ、それはどうして?」
「はい。私は、先ほどの光景を見ていたあなたならばわかると思いましたが、もうあんな風にマスコット扱いされたりするのが嫌なのです。それに、私は先ほどあなたを見た瞬間にこれまで感じたことのないような魔力の流れを感じ取ったからです」
「えっ、それって…まさか……」
僕は少し迷ってから聞いた。
「君は、魔力の流れが見えるの?」
「はい。普段は見えませんが、強力な魔力に出くわした場合には、突発的に映り込みます。それが、何か?」
「いや、君も見えるんだと思って」
「と、言うとあなたも?」
「うん。……わかった、僕は賛成だけど、リアはどう?」
僕は納得してリアに聞き返した。
魔力の流れを見ることができた。それでいて、僕らにはかけていた『魔法での戦闘』。その二つを兼ね備えている逸材だ。それに僕の性格上、少し見過ごせなかった。
「私はいいよ。フェイがいいって言うんなら、それに私さっきからこの子が入ってくれたらなーって思っていたしね」
「それなら良かったよ。改めて、僕はフェイ= ・ダルクリオン。フェイって気軽に呼んで」
「私は、リアよ。リア・リミシア」
僕らがそう自己紹介した後に、少女は一礼し今度は自分の名を告げた。
「私はフレイア・サンシャルアと言います。親しい人たちからは、フレアと呼ばれているので、私のことはフレアと呼んでください」
そう淡々と告げていた。
「私は見ての通りの【魔術師】なので、きっとお役に立てると思います。不束者ではありますが、どうかよろしくお願いします」
なんだか妙に丁寧な口調だ。強要とかではなく、習慣的でそれが普通で自分の個性だとでも言うかのように精錬されていた。
「こちらこそよろしくね、フレア。これから依頼を受けるけど、いいかな?」
「はい。是非」
そうコクリと小さく頷き返した。冷淡でいて、静かな物言いが妙に似合う彼女の実力を知るのはここからである。
綺麗にまとまった作品にできそうです。
『星霜のジョーカー』も少しずつ軌道修正していきたいです。両方とも、評価お願いします!




