第75話 やはりゴブリンは嫌われている
シエスタとアッシュがついてきてくれなかったので、スズネと森に向かった。スズネのレベル上げもついでにしたいと思っている。狩りイベントではスズネはほとんど戦っていない。行きは抱えられ、砦ではマスコット、帰りも抱えられていた。何のレベルが上がるというのだ。
「この刀の試し切りをするけどさ、スズネもレベル上げしよっか。レベル結局あんまり上がってないでしょ?」
「そうね、狩りイベントに何しに行ったのかって言われたらハチミツを食べに行ったって言うわね」
ハチミツの話を振られても上げないからね?そんな目で見ない。
試し切りにはいつも行く方向ではなく、カシワ村とは反対側に向かうことにした。ちなみにカシワ村は西側にあり、今回向かうのは東側だ。川の下流方面は何があるかわからないが、それも楽しみにしておく。
草原を歩いていくと久しぶりにスライムを見つけた。日向ぼっこをしていたのか、微動だにしない。もしかしたらこのスライムもお昼寝好きかもしれない。
「スライムね」
「そうだね、スズネでも倒せそうだよ?」
「まかせなさいっ!」
なぜそこで胸を張るのか。スズネは鉄扇で叩きつけると、スライムは凹み鉄扇が軽く沈んだ。スライムには効かなかったようで、お昼寝を邪魔されたことを怒ったのか、触手を伸ばしてスズネに絡み付こうとした。スズネは鉄扇を引き抜いて距離をとった。
おしいっ!もう少しで触手プレイになってたのに、本当に残念だ…。
「ソウタ今残念そうにした?」
「滅相もございません!」
「本当?」
スズネに疑われたが、スライムが触手を伸ばしてきていて今はそれどころではないため、追及はされなかった。ふぅ…よかった。
スズネは鉄扇に狐火を纏わせた。スライムはぷるぷる震えて怖がっていたが、スズネは構わず鉄扇を振り下ろした。スライムは逃げようと飛び跳ねたが、直撃した。スライムは狐火に燃やされて後には魔石だけ残った。
「どうよっ!」
「うん、すごいすごい」
「なんか適当に言われたような気がしたんだけど…」
スズネはどや顔していたが、適当に返すとちょっといじけてしまった。僕はスズネよりもスライムのことが気になっていた。
スライムってこうやって死ぬんだ…。結構残酷だな。蒸発したぞ。スライムってあんまりいないけど、もしかして日向ごっこしすぎて蒸発してるんじゃないの?
草原を抜け、森に入っていくとゴブリンがいた。ゴブリンは獲物を探すようにうろついていた。僕らのことを見つけると、持っていた木の棒を振り上げて走ってきた。
僕はレベル差がありすぎてゴブリンがゆっくり向かってきているように見えた。スズネに狩らせるために振り上げた腕を肩の根本から刀で切り裂いた。
ゴブリンは一瞬何が起こったのか分からず、狼狽えていたが、腕がないのに気がついた。ゴブリンはなにかよくわからないことを叫びながらスズネに向かって走っていった。僕には勝てないことがわかっていたのか、弱そうに見えるスズネを襲った。
「グギャガァァァアアア!」
「うるさいっ!」
スズネは鉄扇でゴブリンの頭を殴り飛ばした。ゴブリンはスズネに飛ばされて木にぶつかり、そのまま崩れ落ちた。スズネはふん!と胸を張っていたが、張ったところでないものはない。ゴブリンはなんとか意識を保っていたらしく逃げようとしていたが、スズネは止めで狐火で燃やした。
「どうよっ!」
「いいと思うよ」
「でしょっ!」
「いいけど、これはゴブリンが集まってくると思うよ」
「え?」
ゴブリンの焼けた臭いはとても臭い。これで他の魔物は集まることはない。むしろ逃げていく。しかしゴブリンは仲間の死臭や焼けた臭いに集まってくる。
スズネはゴブリンの臭いに鼻をつまんでいた。やはり臭かったようだ。そんなことをしていると森の奥からゴブリン達がやってきた。僕らのことを見つけると笑いながら襲いかかってきた。スズネは臭さから逃げるために草原の方に向かっていった。僕は後始末をすることにした。
ゴブリン達は木の棒を振り回しながら来たので、エアロックで動きを止めて首を落とした。すぐに片付いたが、臭いに集まってくるゴブリンを全て倒さないと後でまた同じことが起きてしまうので、殺したゴブリンもまとめて燃やしてから強風で臭いを飛ばすと奥から次から次へとゴブリンが木の棒を振り回しながらやって来た。
スズネはうわぁ…っと言いながら遠くで眺めていた。これは仕方がないことだ。ゴブリンを狩るには一番効率がいいのだ。刀の試し切りにはちょうどよかった。
血を吸うとは聞いていたが、ゴブリンの血は好きじゃないようで、全く吸ってるようには見えない。ゴブリンが好きなのはゴブリンしかいないようだ。
ゴブリンが来なくなったのでゴブリンを全て燃やして、悪臭をまとめて遠くに飛ばした。スズネは臭くなくなったので戻ってきたので、悪臭を飛ばした方向ではない場所に向かった。