第74話 思い通りにいかないソウタ
ジパーズにハチミツを沢山あげた後、新しい刀の試し切りをしに、森にいくことにした。アッシュは腹ペコだろうし、シエスタも多分ついてくるだろう。まずはシエスタを宿に呼びにいった。
いつも食堂にいるのでシエスタを探しにいってみた。するとそこには宿の女将さんの娘さんと戯れていた。
「シエスタ、すごいすごい!」
シエスタは娘さんを体から伸ばした触手で高い高いをしていた。シエスタは「今日もリテラは元気だなぁ~」と呟いていた。
意思というか言葉がわかるって素晴らしいね。はっ!?これってシエスタの触手で幼女を絡めてる!?こ、これは触手プレイと言っても過言ではないのでは!?
そんなことを考えてると隣にいたスズネにジト目で見られた。あれ?顔そんなににやけてたかな?
シエスタの方を向くと、シエスタに「考えが念話でとんできてるんだけど」と言われてしまった。なんだって!?いや、でも念話ができるのは従魔だけなのでは!?
「ど、どうしたの?スズネ、僕の顔になにかついてるかな?」
「ついてないけど、リテラちゃんのことを見てにやついてることだけはわかったわ」
くっ…やっぱりにやついていたか。だが、内容まではばれていないはずだ!シ、シエスタ言うなよ!
「ガルゥ!(言えるかぁ!)」
おっと念話ではなく吠えられてしまったか。まぁ僕にしか伝わらないけどね。
「シエスタどうしたの?」
リテラはシエスタの方を見つめて首を傾けていた。
「ガルゥっ(なんでもないよ、リテラ)」
シエスタは触手をぐるぐるゆっくり回してリテラを回す。触手がついているが、リテラには飛んでいるような感覚だろうか。リテラはキャッキャ言いながら楽しんでいた。
シエスタに森へいくか誘ったが、リテラと遊んでるので今日はいいとのことだ。シエスタは実は幼女しゅ…「違う!」。
シエスタは行かないので、アッシュを誘うことにした。さぞかし寂しがっていることだろう。ギルドに着くまでずっとスズネにジト目で見つめられた。
うん、これはこれでありだな。でも、僕はシエスタと違って幼女しゅ…「だから違う!ソウタだけが幼女趣味!」。なんで突っ込みが!?僕が考えてることは全部念話で配信されてるのかな?
ギルドに着くといつもはスズネにだけ視線が集まるのに珍しく僕にも視線が集まった。
「聞いたぞソウタ、お前Sランクになったんだってな!すげぇじゃねぇか!おめでとう!」
強面のお兄さんにめっちゃ誉められた!目が会う人みんなから岩ってもらった。すごいうれしい。
「ありがとうございます!今日はみなさんにプレゼントを送りたいと思います!」
集まってきた冒険者達にハチミツを配った。すると先程よりもテンションが上がった強面のお兄さんにお礼を言われた。うん、ちょっと怖いな。
僕はスズネを連れてアッシュのもとへ向かった。すると、モントさんやモンカさんに餌付けされていた。
「ブモゥ!(おいしい!)」
「そうかそうか、食え食え!それは俺らは食えない部位だからな!いくらでも食っていいぞ!」
モントさんは解体した魔物のうち捨てる部分をアッシュに与えていた。モンカさんは現在解体中だが、アッシュの食いっぷりににこにこしていた。
「おぅ、ソウタか!久しぶりだな!」
「モントさん、お久しぶりです。アッシュにご飯あげてくれてるんですね、ありがとうございます」
「おぅ、こいつはいいやつだな!なんでも食べてくれて処理に困るいらない部位を全部平らげてくれたんだぜ!」
「アッシュはまだ子供なので育ち盛りなので、ご飯をくれることは僕の財布にとってもありがたいことなんです」
「おいおい、こいつまだ子供なのかよ!まぁ子供だろうが大人だろうが、処分確定の部位をうまそうに食ってくれるなら、いくらでも食ってくれてかまわねぇよ!ガハハハハっ」
アッシュは育ち盛りというのは本当だ。食べたら寝て食べたら寝てを繰り返している。それに年齢は0歳だ。魔物の歳のことはわからないが、子供だと言うことは理解できる。
「アッシュ、今から森に行くんだけど、一緒にいくか?それともここでご飯食べる?」
「ブモゥ!ブモォォオオ!(ご飯食べる!ここのご飯たくさんあっておいしい!)」
「そうか、ならモントさんとモンカさんの仕事の邪魔しないように食べるんだぞ」
「ブモゥ!(わかったぁ!)」
「モントさん、モンカさん、仕事が一息ついたら、これよかったら食べてください。狩りのときにとってきたハチミツです」
モントさんはハチミツを受け取ってすぐに魔法の鞄にしまった。解体には鮮度が大切だからな。必要なものなんだろう。
「おおぅ!ありがとな!てかソウタはアッシュの言ってることわかるんだな!」
「そうなんですよ、テイムのスキルレベルが上がったらわかるようになったんですよ。ちなみに今食べてるものはおいしいので、森に行かず、ここでご飯を食べてるそうです」
「そいつはすげぇな!まぁ俺達も助かってるから、いつでもここにきていいからな!アッシュ!」
「ブモゥ!(ここのご飯おいしい!ハチミツ!)」
アッシュはハチミツ欲しさに僕のことを見つめてきたが、今はご飯もらってるからなぁ。いつでもあげるとわがままになると困るから我慢してもらおう。
「ハチミツはモンカさんとモントさんが食べろって言ったらだぞ」
「ブモゥ!(わかった!)」
アッシュは元気よく返事した。
そして僕は肩をぽんぽんとスズネに叩かれて慰められながら森へ刀の試し切りをしに向かった。