第73話 血吸いの刀
これだけ獣人のこと書いてるのにけもフレみてないんですよ、どう思います?
僕とギルド長の止まらない獣人愛は白熱した。しかしリサさんとスズネのビンタによってその語り合いは終わった。なぜビンタされたかは話が長かったからだそうだ。
「つまり、Sランクになるということはそれ相応の責任があり、国のための戦力としても責任があるということだ」
「なるほど」
「まぁ冒険者は自由だから戦争には参加しないということもできるが、相手は獣人を奴隷にする国だ!絶対に許せない!決して羨ましいわけではない!」
「そうです!別に羨ましいわけではないんです!」
こうして僕とギルド長は再びビンタをくらった。
「話は変わるが、ソウタは王に挨拶しに行くことになることは先程言った通りだが、ついでに魔物の素材の運搬をしてもらいたい」
「どこに持っていくんですか?」
「各ギルドにだな。道中にあった街だけでいいが、結構な距離あるからな。それに強い魔物の素材は貴重だからな」
「わかりました。寄り道した街に渡せばいいんですね」
「そうだ。まぁ後で資料の方を渡しておく。この話はスズネにも言ってある」
「なぜスズネもなんですか?」
「スズネはソウタと仲が特にいいからな。あと神の加護持ちということで同伴してもらうことにした。奴隷ではない獣人はこの国には何人かいるが全員保護している。国で把握するためのものだな」
日本でいえば絶滅危惧種を保護するためとか、数匹しかいない動物がちゃんと生活できているのか、生き残っているかの生存確認をするとかだな。
「わかりました。話はこれで終わりですか?」
「そうだな。あとは装備を揃えておくことを忘れないようにな」
「わかりました」
僕とスズネはギルドを後にしてジパーズのところに行くことにした。僕はジパーズに借金を払い終わっていない。いくらしたんだろうなこの装備。
店に入るとスズネに好機の目線が送られる。僕はついでにちらっとみる程度だ。ジパーズのところは相変わらず熱く、熱気がすごい。ジパーズは剣を鍛えていた。
「こんにちは、ジパーズ」
「おぅ、坊主か。狩りの方はうまくいったか?」
「はい。結構儲けましたので、代金の方を払いに来ました」
「そうか、50万リノじゃが大丈夫か?」
「全然大丈夫ですよ」
「こんにちは、ジパーズさん」
「おおぅ!スズネちゃんじゃねぇか!どうしたんだ今日は?」
おいおい、僕とスズネとのテンションの差が激しすぎだろ。剣もなげだしちゃったよ。その剣大丈夫なの?
「今日はソウタの代金を払いに来ました」
「そうかそうか。代金はそこに置いといてくれ」
「わかりました。あとこの剣見て貰いたいんですが…」
「んん?おいおい、どうしたらこんなぼろぼろになるんじゃ」
剣をそんなに使ってるつもりはなかったが、血を纏わせたり、首を狩ったりはしたもののさほど乱用はしていない。
「ちょっと黒猪人族狩ってたらそうなりました」
「あぁ黒猪人族か。あいつらは意外と皮膚も筋肉も硬いからな。無理矢理斬ったらこうなっても無理はないが、手入れをちゃんとしていればこんなことにはならんじゃろうなぁ…」
ジパーズにちらっと見られたが、僕は思わず目をそらしてしまった。手入れのことなんてなんにも考えてなかったなんて言えない。ジパーズは頭を掻きながら「しゃあねぇなぁ」と言いながら奥の方に向かっていった。
僕はそわそわしているとジパーズが赤黒い刀のようなものを持ってきた。
「お前にはちと勿体ない気がするが、わしが造ったこの刀をやろう。ただちゃんと代金は貰うぞ」
あっ僕はやっぱり代金を払うんですね。その赤黒い刀は黒い鞘に納められていた。それにしても刀か。周りを見ても刀を持ってる人を見たことがなかったが、ここにも存在するんだな。よく戦国もののゲームで見たことがあるが、実物をみるのは初めてだ。
「この刀は血を吸うことによって刃こぼれを修復する。この刀に使われた素材は吸血鬼の牙と血と魔力だ。刀身に牙を砕いた粉と血とミスリルを練り込んで鍛えた後に魔力を染み込ませたものだ。吸血鬼は割りとドワーフと気があってな。吸血鬼は血の味わいにこだわりを持ち、ドワーフは酒に命を懸ける。それほど飲み物や食に関して言えば共通点があるんじゃよ」
それって呪いの類いじゃないの?血を求めたりしない?スズネもちょっとブルっとしてるけどホラーの類いじゃないよね?
「だ、代金はいくらですか?」
「うむ、ミスリルと技術費じゃからのぅ。412万リノじゃ」
内訳として技術費が30万でミスリルが2kgで310万、吸血鬼の素材は血と物々交換で50万、竜皮と鞘とデザイン費で22万だそうだ。
「あ、それくらいなら払えますよ」
「んん?ずいぶん余裕じゃな。今回どのくらい儲かったのかのぅ?」
「今回は7800万ほど稼ぎました」
代金を渡したら、鞘のベルトの調節をしてもらった。ベルトは竜の皮を使ったものだそうだ。
「ずいぶん儲かったんじゃな」
「そうなんですよ。あとSランクになりました」
「ほぅ。出世したもんじゃな」
「おかげさまです。あっそうだロイヤルスイートビーのハチミツ好きですか?」
「なにぃ!?ハチミツまで取ってきたのか!わしは蜂蜜酒を自分の好みにつくるんが好きなんじゃよ!」
ここにもいたか。ハチミツって中毒性ないよね?