第57話 特殊スライム
シエスタはまん丸スライムから四足歩行の狼のような形に変わり、そこからさらに細い毛のような触手が身体中から生えた。色合いはスライムのままだし、透けて見えることは変わらない。但し形だけ狼になった。
なんだこの進化は。どう考えても普通の進化じゃないだろ。シエスタも自分の身体の変化に驚き、自分の身体を見回したり身体の動き方も迷っていた。しかしなんだか戸惑いよりも楽しさの方が強いのか走り回っていた。
名前:シエスタ
種族:嵐狼スライム
年齢:2
性別:♂
ランク:B
Lv:1
HP:415/417(+200)
MP:400/413(+250)
攻撃力:505(+300)
防御力:449(+200)
敏捷:567(+300)
知力:360(+200)
精神力:355(+200)
魔力:465(+300)
アクティブスキル
【触手術】Lv8(+3)【液体化】Lv7(+3)【風化】Lv7(+2)【嵐魔法】Lv1【水魔法】Lv3(+1)
パッシブスキル
【環境適応】Lv8(+2)【気配遮断】Lv7【物理耐性】Lv5(+2)【睡魔】Lv1【魔法耐性】Lv2【気配探知】Lv1
称号
【昼寝好き】【食いしん坊】【草食スライム】【掃除夫】【子守りスライム】【安眠の父】【武器スライム】
確かにまだスライムだ。スライムだけど今までのシエスタの原形がなくなった。というかむしろ別物だ。魔石が狼種のものばかりだったからだろうか。吸収した魔石によっても進化する方向性が変わるのだろうか。もし、オークやゴブリンの魔石をあのままひたすら与えていたら豚スライムやら、小鬼スライムにでもなっていたかもしれない。それにはなってほしくないな。
「シエスタ?その姿でも戦えそうか?」
「ガウ」
驚いた。シエスタが声を出せるようになっていた。いったいどこに声帯があるのやら。とりあえずコミュニケーションがしやすくなったことだけはよしとしよう。スキルレベルも能力値も大幅に上がっていることから一人で戦えるだろう。
「シエスタは僕が動きを止めなかった敵を倒してくれ。それと見つけ次第どんどん敵を倒してくれ、いいな?」
「ガウッガウッ」
これは多分返事なんだろう。僕達は奥に進んだ。すると先程と同じ程度の集落があり、オークや猪人族だけでなく黒くしゅっとした猪人族がいた。こいつが黒猪人族なんだろう。黒猪人族は全体を見た限りでは3匹ほどいた。魔石を回収してるようにみえる。やはり上位種に渡していたようだ。
シエスタに回り込むように指示をしてから、オークの血で作った槍をオークの胸や足に刺していく。帰ろうとしていた黒猪人族は異変に気付いたのか、こちら側を見て警戒していた。だが、警戒していた方向とは逆の方向から、先が尖った触手が黒猪人族の頭を貫いた。彼らは突然の攻撃になにも出来ずに死んだ。
オークや猪人族がこちらに武器をもって走って向かってきてたので、先程とばした血の槍と倒したオークから血を抜き取り、血で人を3体つくり、殺して回らせた。もちろん抵抗することができたものなどいない。斬ろうが殴ろうが、HPの存在しない化け物には通用しない。火魔法が弱点だが、少し蒸発させられても、空気中から水分を得るか死んでいるオークから血を抜き取れば再生することが可能である。
僕は剣に血を纏わせてオークを斬りつけた。剣術でいえば素人同然だが、斬りつけられたオークの傷は軽く血が出るほどだ。それにはオークは笑っていたが、これの効力はここからだ。軽く出た血は勢いを増してひたすら出ていく。するとオークは段々と青白くなっていき、全ての血が抜けて、血が僕の剣に纏わり、より大きな剣となる。それを見ていたオーク達は逃げ惑う。当然だ。どんな小さな傷でも血が止まらないほど出ていけば大怪我と替わらない。逃げようと血人とシエスタによって蹂躙される。
その結果、オーク達は全滅した。オークや猪人族を回収して魔石も回収した。シエスタに何回も進化されたら、毎回戦い方になれるのに面倒だ。武器も回収した頃には夕方になったので、ギルド長を探しにいった。
また同じような集落を発見したので向かってみるとギルド長がオークを焼いて食べていた。こちらのことを気づいたので手を振ると、シエスタの方を見てしまい、思わず食べていたオークを吹き出してしまった。汚い。
「は?え?シ、シエスタか?ちょっと待て、なんで狼みたいな形になってんだ?確かに狼の魔石は多かったよ、でもさなんで狼になってんだ?おかしいだろ!お前のスライムぜってぇ普通のスライムじゃねぇよ!」
ギルド長は珍しく焦っていた。僕もシエスタの進化には驚きだ。もうスライムと名乗れないほどスライム感が0に等しい。確かにまだ透明だし、スライムみたいな艶と色してるけども、スライムと言っても誰も信じないレベルまできている。狼の形をしたなにかだ。
とりあえず夜になってきたので、1度補給地点に帰ることにした。それほど遠くもないので、ギルド長に抱えられて走って帰った。シエスタを抱えたギルド長は「なんだこの感触は…」と驚いていた。ついたらスズネが迎えてくれた。シエスタをみたスズネは僕とギルド長の比じゃないほど驚いていた。