第52話 刈りイベント
砦で休みになった僕はさほど疲れることはなかったので、スズネと砦の探索をすることにした。
スズネをみる砦の人達は皆にこにこしていた。この世界の住人は獣人が大好きなのだろうか。強面だろうとなんだろうと、スズネを微笑ましく見ていた。
「畑や店もあるけど、あんまり面白そうなとこはなかったわね」
「まぁ砦だからね」
砦の探索でわくわくしてた僕らはあまりにもなにもなかったため、テンションが下がっていた。住人も街と同じでケモナーばっかだったことぐらいしか特に必見すべきところなんてなかった。
「あれ~?ソウタとスズネじゃん、どうしたの?こんなところで?」
セレナさんが後ろから話しかけてきた。振り向くとなかなか奇抜な格好をしていた。ピンクのズボンに黄色のシャツだ。やはりこの人は馬鹿なんだろうな。
「砦の探索してたんですけど、あまりにもなにもなくてとりあえずふらふらしてました」
「まぁ~砦だからね。それより暇なら砦の周りの木を刈るの手伝ってよ」
「木をですか?家でも建てるんですか?」
「そんな感じかなぁ~、まぁ暇ならついてくるといいさ」
セレナさんはのんびり歩いていったので僕たちもついていった。砦の外に出ると結構な人がおり、知ってる人達もいた。話を聞いてみると暇だから来たそうだ。砦の休みの日は木を切って領地を広げてるらしい。
「では、今回の暇潰し砦の領地をどこまで広げられるか競争を始める!これは報酬はでないが、俺らの暇は潰せる!砦には歓楽街もなければ、遊ぶところもない!俺らのやることは木を刈って暇を潰すだけだ!」
ギルド長が仕切っており、狩りイベント同様にとりあえず盛り上げるようだ。というかギルド長他の仕事ないのかよ。
「俺がなぜ暇にしてるかというとアイテムボックス持ちのおかげで急いで解体しないといけない魔物がいないからな!仕事してないわけじゃない!決して主の愚痴を聞くのがめんどくさいとかそんな理由はない!さぁ!木を刈りまくるぞ!」
「「「「「おぉ~っ!」」」」」
冒険者は斧で木を刈ったりはしない、各々でやり方があり、魔法で切ったり剣で切ったり、素手で木を根ごと引き抜いたりしていた。僕は風魔法で切り飛ばしていた。
これ、ありったりの風魔法飛ばして流れ操作して勢い強めたら、もっとたくさん刈れるのではなかろうか。ということで風魔法使える20人でウィンドカッターを一方向に飛ばしてもらい、勢いを20mまで強め続けたら、ちょっとした道ができあがった。
僕のことを半信半疑だった冒険者達は最初は「しょうがねぇなぁ~」とか言っていたが、一度やると「こりゃあ楽だ!もっとやってくれ!」と言っていて、次第に人数が増えていった。
今では56人にまで増えている。ウィンドカッターをやるのが24人と支援魔法で威力をあげるのが10人で、切った木を回収するのが14人で、切り残しで必要なところだけを切り、他は焼いたり抜いたりするのが7人だ。
あとはひたすら進んでいくだけだ。これをやっていたら、全員が同じようにやり始め、気付いたときにはこれが本職のチームになっていた。ギルド長もそれを指揮していた。切った木をまとめたり、土をならしたりしていた。
昼休みとなり、切った木は1万は越えるほどとなり、木の加工班・木の回収班・木を刈る班・土をならす班・魔物を狩る班に分かれた。それから夕方までの流れもできた。
「今回の功労者はソウタだ。さぁ、今日は砦の周囲500mはいくぞ。前は街までの木を刈っていたが、今回は周囲を伐りまくって砦を広げ、いずれ俺たちの歓楽街ができることを祈って丈夫に仕上げるぞ!」
歓楽街という言葉に雄叫びをあげる男達とそれを冷たい目でみる女達の図ができたが、もしや美容施設もできるのでは?ということを思い浮かべたのか、にこにこしだした。
昼休みが終わり、さっさく作業が始まった。すでに200mまで刈り終わっているが、まだまだ先は長い。100m毎間を開けて見張り台と休憩所をつくっていく。飛ぶ魔物の警戒を怠らないためだ。
それから砦の職人が来て門からの真っ直ぐな道を作り始めた。それから、農民や牧場の人も来て、畑を作ったり囲いをつくって牛やら豚を離していた。気のせいだろうか、オークもいるようにみえるのだが、気のせいかな?
夕方になる前に周囲500mまで刈り終えたので、刈った地域を囲むように木で壁の骨組みをつくっていく。それから、土魔法でつくった石をそれに組み込んで固めていく。高さは3mのものだが、ここの近くに家をつくるわけでもないので、それほど高さは必要ないとのことだ。それができたら、今度は溝を3重ほどつくっていく。そして700m地点に1mほどの高さの壁をまた作る。溝は森側から、2m,1m,2mと幅1mほどのものを5m間隔でつくっていった。
これで大型の魔物以外なら大丈夫なようだ。それが終わったぐらいで真っ暗になったので、解散となった。次の日はこれの続きをやるので、参加することにした。