第50話 不憫な主
レイさんに先程の技の解説をしていると扉が開いたので、誰か来たと思ったら、なぜか矢が飛んできた。とりあえず風で流れを誘導して飛んできた方角に返した。
「うおっ!?あぶねぇっ!?」
矢を飛ばした本人は返ってくることを予想していなかったのか驚いていた。その人は40代前半くらいの見た目をしており、ギルド長も一緒にいた。
「防ぐとは思ってたが、そのまま返してくるとはな」
ギルド長は驚いていたが、矢を打った人を指をさして笑っていた。矢を打った人は頭をかきながら部屋に入ってからソファに腰かけた。
「お前がソウタという異世界転生者か。なかなかいい腕してるな。まさか矢が返ってくるとは思わなかったぜ。わしはこの砦で王みたいなことをやってるリシトという。砦までの物資の輸送助かったぞ」
リシトは少し困惑しつつもこちらに笑いかけながらお礼をして来た。
「いえいえ、たまたまアイテムボックスを使えただけですし。ずっと抱えられてたので僕は入れたり出したりしかしてませんよ」
本当に抱えられて来たので苦労といえば周りからの反応に困ったことぐらいしかなかった。
「そうかそうか、まぁ今日はゆっくり過ごすといいさ。物資は後程出してもらおう。そういえば先程ギルドの方で喧嘩があったらしいが、なにか知らぬか?」
「それは多分僕たちのことですよ。僕とレイさんが先に受付に行ってたのが気にくわなかったらしいですよ」
「レイに絡むとはなかなか面白いことをするじゃないか。レイが壁にぶっとばしたのか?」
「いや、俺じゃなくてソウタがやったよ」
「なにぃ?」
レイさんに話しかけていたが、僕がやったことをしてこちらを見てきたので、事実だけ話した。
「武器を出したので吹っ飛ばしました」
「ふむ…武器はいかんな。魔物や犯罪者になら向けてもいいが、冒険者同士で武器を出すなら決闘や練習試合などなら許すのじゃが、喧嘩でならそれ相応の罰を与えなければならない」
魔法っていいのかな?乱用しちゃったけど、ある意味武器ではあるよな。
「それってもしかして魔法やスキルもだめですか?動きを止めるのにつかったのですが」
「相手が何かしらの行動を、殴りかかってきたとか武器で斬りかかって来たとかそんな理由だったら別に構わんぞ。自分の危機には対応しなくてはな。たとえばわしがレイに先程の矢を飛ばしたときなんかは矢を避けた上で全力で殴りかかってきたぞ。あれは痛かった…」
特に怒ったりせず坦々と説明してくれた。レイさんに殴られた話をする際には頬を擦りながらレイさんをチラ見していた。
「いやぁ~あのときは若かったなぁ~」
それに対してレイさんは悪びれもなく、思いに更けていた。
「ちなみにどんな魔法やスキルを使ったのかのぉ?」
「これです」
リシトさんの身体をエアロックで縛り付ける。
「こ、これはなかなかえげつないのぉ。ソウタは特になにかしたように見えない上、こちらは抵抗できないと来たか。まぁわしは振りほどけるがな」
リシトさんは困惑を見せるが冷静に分析して魔力を放出してエアロックを解除した。
「なるほど、そういう欠点があるのか…」
「これも使いようによるな。まぁBランクそこらじゃあ振りほどけるほど魔力を持っとらんがな。できるのはAランク以降じゃろうな。ソウタはトウヤの話では魔力はAランクと聞いておる。もっと研鑽すればSランクも封じれるだろう」
「そうですね、まだまだ弱いですし、能力値を狩りイベントでもっと上げないといけませんね」
「今回は荷物持ちだけでなく、ちゃんと戦ってもらうぞ」
そう言ってまた遅いとか言って抱えるんでしょ?
トウヤはギルド長です。