第49話 砦の城
デラミスは壁に寄りかかり気絶したまま。傍観者と取り巻きは呆然としたままこちらをみている。デラミスってなんだかデミグラスソースみたいな名前だな。
「レイさん行きましょ?なんだかデラミスさんは壁で寝始めましたし、他の方も用はないようですし」
「お前っ…やっぱすげぇやつだったんだな!なかなかいい腕してるぞ!」
レイさんに笑いながら褒められた。わりとうれしい。ちなみに取り巻き達は一連の事があったが、エアロックをかけたままだ。そのため戸惑い震えている上、僕から目を背けている。
「えっと?デミグラスさんだったかな?の仲間の人達?デミグラスさんに伝言よろしいですか?」
「お、おぅ…」
わざと名前を間違えても先程の事で素直に応じる。エアロックはかけているが、口は動かせる。
「じゃあ、若いからって弱いわけでは無いことを伝えておいてくださいね」
取り巻き達は激しく頷こうとするが頭が動かない。
「あれ?無視ですか?」
「わ、わかった…」
取り巻き達は汗をだらだらかきながら了承してくれた。
「お願いしますね~、レイさん行きましょ」
「あぁ」
僕らがギルドを出ると扉の向こうから騒ぎ声が聞こえたが、ギルド長を探さないといけないので、ほっておいた。
「ギルド長いませんね」
「そうだな」
先程門のところにいたはずのギルド長はいなかった。門には着々と冒険者達が着いていた。ケモナー達はこちらに気がついて手を振ってくるので、こちらも返すが、ギルド長のことを聞くと「知らない」という。やはりここにはいないのだろうか。
「ギルド長がいそうなところってありますか?」
「そうだな…あっ、もしかしたらここの主のところにいるかもしれない」
主?領主みたいなものかな?これだけ大きければいるかもな。
「その方はどこにいるんですか?」
「ギルドの真向かいにギルドと同じ大きさの建物あったろ?あそこにいるんだよ。まぁ机仕事もするが、魔の森の奥地侵攻にも参加するから、打ち合わせでもしてるかもな!行ってみるか!ソウタも強制参加だしな!」
やはり僕には拒否権はないのか。ギルドは木の建物だが、真向かいの建物は石造りだ。重厚な感じがして威圧感があった。なんだか城のようにもみえる。
「なんだか城みたいですね」
「まぁ、城だしな。砦の主はここの王みたいなもんだからな。それに城好きとか言ってたから、無理いって城風にしたんだろ」
王か。そういえば未だに貴族とか見たことないな。みんな隠してるけど実は誰か貴族とかかな?名字名乗ってる人も見たことないな。
「入ってもいんですか?」
「あぁ、Sランクは自由に入っていいな」
「僕はSランクじゃありませんけど?」
「まぁ!気にすんな!行くぞ」
レイさんが構わず入っていったので着いていくと、外の重厚な感じとは違い、どちらかというとホテルのロビーのような感じだった。入ってすぐのところに女性が立っていた。こちらに気付いたのか、近づいてきた。
「Sランクのレイ様ですね。おや?そちらの方は?」
「こいつは連れのソウタだ」
「Sランクではない方は入室できませんが?Sランクの方ですか?」
「いんや、Cランクだが、それなりにいい腕してるし、今回の物資も全部持ってるぞ」
「物資ですか?失礼ですが、アイテムボックスを見せていただけませんか?」
「いいですよ。ちなみにこれが物資のリストです」
手に物資のリストを持ち、女性に手渡す。それからアイテムボックスで物資を出したり引っ込めたりしてた。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。ではこちらへどうぞ」
女性は物資リストを返してきたので、アイテムボックスに収める。それから女性についていくと、一つの部屋へ案内された。「こちらでお待ちください」と言われたので、ソファに座って待つことにした。部屋は3人掛けできそうなソファが3つと机が中央に一つと窓からは冒険者ギルドが見えていた。ギルドには相変わらず人が並んでいた。数分待つと先程の女性がお茶とお茶うけをもってきたので、待つことにした。