第45話 世界の異物
僕が異世界転生者ということが周りに知られてしまった。僕は思わず返事をしてしまったが、どう考えても普通この世界に存在しない異物だ。そんな人が普通にいたら驚く。
たとえば、日本に人の形をしたエイリアンが普通に学校で授業を受けていたり、未来人や過去の人、死んだ人がいたときは驚きを隠せないはずだ。でもこれはそんな空気ではない気がする。それよりももっと異質な空気のような気がした。そのことに不安になっていると、そのことに気が付いたのか、ギルド長が戸惑った。
「違うんだ、異世界転生者は別にこの世界では珍しいってわけじゃねぇんだ。ただ、実際に見るのは初めてだったからな。みんなそれに驚いているんだ。異世界転生者は昔色々やらかしたり、偉業を叩き出したり、よくも悪くも有名なんだ。だから少し警戒しただけだ、気にするな」
なるほど、そんなに珍しい存在じゃないのか。確かに洪水で転生させられた僕が言うのもなんだが、転生神があんだけ適当だったらそりゃあ人格の良し悪しもなく適当に送り出されるもんな。だからけいかいもするだろうな。感覚的にはVRしてるみたいなもんだもんな。犯罪おかすやつもいるだろう。転生したことに気が付かず、夢の中とでも思った人もいたよな。
「気にしませんよ。僕もこの世界の生まれでもないないので、世界の異物がいたらそりゃあ警戒しますよ」
僕の言葉にさらに警戒心を強める人もいれば、軟化する人もいた。警戒するかは人それぞれだ。
「それに僕はこの世界結構好きですから、犯罪者みたいなことはしませんよ」
警戒心は薄れたようだが、なぜかギルド長はにやにやしていた。さすがに恥ずかしい台詞でも言っちゃったかな?
「確かにソウタは良いやつだ。こんなに面白い称号持ったやつが悪いやつなんてわけねぇよ!それにこいつはこの世界の創造神様から加護を頂いている」
ちょっ!?なにばらしてくれてんすか!?加護はいいけど、称号に触れてはいけない!
「創造神様の加護だって!?」「神様からの加護だと!?」などと驚いていた。そんなに騒ぐことなのかな?スズネなんて二人の神様から加護をもらってるぞ?
「そんなにすごいことなんですか?転生神がやらかしたお詫びに普通に頂きましたよ?」
「お前…わかってねぇな?神様の加護だぞ?普通はもらえるものじゃねぇ!過去にいた英雄ですら持ってねぇものだぞ!これでテンションの上がらねぇやつなんていないぞ!昔現れた異世界転生者で持っていたのだって数人なんだぞ!」
「そうなんですか?スズネも持ってますよ?結構メジャーなことじゃないんですね?意外です」
「ちょっと!?ソウタなんでばらすの!?」
「いやいや、僕がばれたんだからスズネも道づ…一緒にばれた方がいいかなぁ~と」
「ソォウゥタァー!」
「ちょっと!?くすぐらないでぇっ!あははははっ」
「スズネもだと!?」
僕はスズネにくすぐられて動けない間はみんなこちらを見ながら呆然としていた。ギルド長はもちろん、レイさんやレイジュさんは呆然としていた。先程到着した冒険者達はなんのことかわからず、戸惑っていた。
「まぁ、なんだ。グダグダになったが、加護持ちはすごいってことだ。いいか?ソウタ?生きてるか?」
「あぁ…はい、生きてます」
スズネのくすぐりによって先程まで悶絶していた僕はなんとか反応することができた。そのスズネはシエスタを抱えていじけていた。その姿に冒険者は癒されていた。すでにこちらを注目してるやつなんていない。
「まぁ、能力値は良い感じに上がってはねぇとだけ伝えておくから。砦に入ってくれ」
「あ、はい」
いじけてるスズネをシエスタごと抱えて砦に入った。レイジュさんとレイさんは驚いていたものの、あんまり気にすることなく、一緒に砦入りした。