第2話 転生神の嫌がらせ
名前は後付け。
転生神は僕が死んで、この真っ白でセンスの欠片もない空間にいると言ってきた。嘘だよな?だって河原で寝てただけだぞ?おかしいでしょ?死んだこともこのセンスの欠片もない場所が死後の世界とか、もっとマシな場所用意しろよ
「いやいやいや…河原で寝てただけで死ぬわけないでしょ…」
車に引かれたとか通り魔がきたとかそんな可能性ないしな。まさか…猫に首噛まれたとか?あそこらへんよく猫見かけるもんな。前はよく一緒に寝てたけど、数時間枕にして寝てからは見なくなったもんな。その仕返しかな?
「あれはすごかったぞ。見てて面白かったぞ」
光ってるおっさんは腹を抱えて笑っていた。
どういうことだ?死ぬことに面白いもくそもないはずだ。
「大雨降ってるのに気付かず、洪水に飲まれていくにも関わらず、全く起きる気配がなかったぞ」
全く笑えねぇ。あの日はぽかぽかして気持ちよくてつい寝てしまったんだが。あんなにいい昼寝スポットは早々見つからない。なにより河原の角度がよかった。草の種類も臭いが気になるものもなかったしな。
「その大雨と洪水のせいで仕事が多忙すぎてやっと終わったかと 思っていたが、まだいたとはな…はぁ…」
おっさんは笑うのをやめて、ため息をついた。
なんだかお疲れのようで。死んだ人には優しくしませんかね?仕事だからって職務怠慢はだめですよ?
「それで僕はどうなるんだ?気付いてなかったわけだが、死んでるにしろ、何にしろ、何かないのか?」
洪水に飲まれて死んだ。痛みで死ぬよりかはいくらかましだ。でもやっぱりふかふかのベッドで眠るように死にたかった。寝てるといえば寝てたけどもさ。
「本来は天国に行くか、転生するかを選ばせるのだが、今回は独断と偏見で決めていく」
転生神は早口で捲し立てた。目が冷たく、どこか人を人とは思っていない視線を感じた。
「なんで?」
「私は疲れているのだよ。だからさっさと終わらせて休むのだ」
おっさんは大きくため息をついた。
「次に転生の特典を決めるが、これも独断と偏見で、私がかつて使っていたスキルを与えよう」
転生について異世界転生ものの小説好きだ。多少の考慮はしよう。だが、独断と偏見で、決められるのは悔しい。本来であれば、チートスキルなんかを選んで無双すべきなのだが。この感じだと無理そうだ。
ここは少しでも褒めて良いものに変えてもらおう。
「神様が使ってたってことはきっとすごいスキルなんだろうなぁ」
「いや、トイレの水と汚れを流すためだけに使っていたスキルだ。よかったな!トイレを自らいつでもきれいに使えるぞ!」
トイレに使うスキル?つまり神様にも、便意があるってこと?
「ちなみに今から行く世界には地球のようなトイレはない」
どこに使えるの、それ。
「あ、ちなみにもうそろそろ飛ばすぞ?心の準備期間などない」
おっさんはめんどくさそうに告げた。ベルトコンベアに流れてるもののような扱いだ。
「は?え?ちょっ?待って!せめて、よく寝れる布団をくれ!」
転生神は無詠唱で彼を、異世界へ転移させた。しばらく飛んでいった彼がいなくなった場所を眺め、
「仕事も終わったことだし、さっさと帰ってしまおう。面倒な方がくる前に」
そう言って立ち去ろうとした。
…
「ちょっと待ちなさい、転生神」
去ろうとした転生神の後ろから、若い青年のような声が響いた。
「はい?なんでしょ…っうか!?創造神様が、なぜこのような場所にぃ!?」
いつの間にか背後に現れたのは最高位の中でもさらに上に位置する創造神。重要なことがあることがない限り、姿を見せることがない神だ。
「また、転生者をてきとーに扱って仕事を終わらせたね?」
青年は青筋を浮かべながら、転生神に迫り寄る。
「そそそ、そんなわけ…ないじゃ…ありませんか!」
今までにない焦りを感じながら、弱々しく言葉を綴り、創造神を誤魔化そうとした。
しかし…創造神に通じることはなかった。
「今日という今日は許しませんよ…処罰を与えませんとね…」
徐々に迫ってくる創造神の覇気にやられた転移神は、尻餅をついて後退りをした。
「わ、私はなにもして…おりませんよ!」
逃げ惑っていた転移神は、創造神にすがり付いて、赦しを仰いだ。しかし、創造神の怒りは今までに感じたことのない圧力があった。
創造神は転移神の肩に手をやり、覇気のない笑顔を見せた。そのことに安堵した転移神だったが、肩に痛みを生じるほどの苦痛が徐々に加えられていった。
「そ、創造神様!?い、痛いです!?」
それでもやめることのない苦痛を与えた創造神は、逆の手で転移神の襟を掴み、身動きの取れないように、持ち上げた。
「問答無用です。今日から毎日、100年間トイレ掃除の仕事に戻ってもらいます」
それにはさすがの転移神も絶望の雄叫びをあげた。容赦のなくなった転移神をそのまま、相手もすることなく、ある場所へと連れていった。
俺が食べた『食べられません』は白くて透明でじゃりじゃりしてました。