第15話 感情豊かなスライム
その日はぐっすり寝たらしく、昼近くまで寝ていたようだ。起きたらシエスタはいなくなっていた。焦って食堂に行くと、おやじさんに餌付けされていた。
「シエスタ~だめだよ、勝手にいなくなったら」
シエスタはこちらに気づいて、ぽよぽよ跳ねてきた。間近に来た瞬間に勢いよく跳ねて、腹に突撃してきた。
「ぐふっ!」
シエスタは朝起きなかったことに怒っていた。それほどお腹が空いていたのだろう。
「そりゃあ~寝坊する方がわりぃよ。シエスタだって腹は空くんだからな」
おやじさんは笑いながら話し掛けてきた。確かに寝坊は悪い。でも、眠いんだからしょうがないじゃないか。
「ごめんごめん、シエスタだって食べるし、よく眠るもんね」
シエスタは器用に触手で丸をつくって、許してくれた。
「すいません、おやじさん朝御飯を作ってくれませんか?」
「いいぞ~、昼だけどなっ!」
朝昼御飯はシチューとパンとサラダだった。シエスタはそのあともおやじさんに餌付けされていた。
昼になったので、ジパーズのところまで向かった。ジパーズは相変わらず酒を飲みながら仕事をしていた。
「ジパーズさん、こんにちは」
「おぅ、坊主か。今防具が出来上がったところだ。試着してみな?」
その防具は身体にぴったりはまり、動きにくいところはなかった。これなら近接も大丈夫そうだ。
「ジパーズさん、これすごいです!身体にぴったりです!動きを全く阻害してませんよ!」
「そうかそうか!まぁわしが作ったからな!どこか不具合はあるかのぉ?実際つけてもらわんと、わからんのじゃよ」
「特にこれといった不具合はありません!」
ジパーズは笑いながら酒をあおり、次に盾について話始めた。僕は魔法使いでもあるが、盾は小回りがきくように、タンクのようながっしりしたものではなく、片手剣と小盾のセットにする。身体全身を守るのではなく、一部のみを守るものとする。素材は防具にも使われた、魔黒鉄を使用する。片手剣も同じものを使用する。片手剣と盾は既製品でもいいが、せっかくなので、オーダーメイドにしてもらった。ついでに解体用の小刀もつけてもらった。片手剣と盾は明後日までにできるそうだ。
「そういえばその防具には『付加魔法』を使用して、【魔法耐性】【物理耐性】【衝撃耐性】をつけておるから、通常価格5万リノのところなんと!20万リノするのじゃ!」
「高過ぎませんかね?僕本当にお金稼いでませんよ?今も3万リノしか持ってませんし…」
「いいんじゃよ!今度素材採掘と魔物討伐に駆り出すから、心配せんでも、その分働いてもらうからのぉ!」
なんてドワーフだ。あとで払うの待つとか言っておいて、労働力として駆り出すなんて!ま、まぁいい防具と武器をつくってもらったから文句は言えないけどさ…。
「よし、装備ができ次第行くからな!その間にしっかり準備しておくんじゃぞ!」
すでに予定が勝手に決められているだと!?拒否権もなさそうじゃないか!予定なんて元々なかったようなものだし、いいけどさぁ…。
「ついでにわしの知り合いも手伝いに来てくれるから、気楽にするといいのじゃ!」
「その労働をすればどれくらいの借金返済になるんですか?」
「そうだのぉ…仕入れ価格は自分で掘るから無料じゃから、それを売るとした時の値段の3割分としよう」
「ちなみに、鉄は1Kg5000リノ、銀は1Kg7000リノ、金は1Kg10万リノ、ミスリルは1Kg150万リノ、オリハルコンは1Kg1000万リノ、ヒヒイロカネは1Kg1億じゃ。加工技術がないと使用できないものもあるから、その分値段も上がるのじゃよ。」
ある意味一攫千金となるわけだな。かなりの重労働だろう。
「今から作業にかかるから、明後日にまた来てくれ」
ジパーズのとこから出ると、すでに夕方になっていた。今日は特にすることもないので、シエスタと一緒にお昼寝をすることにした。宿に戻り、ベッドに横になった。シエスタはお腹の上で眠ることにしたようだ。
夜に起きると、ちょうどご飯時で酒盛りしていた。夜は炒飯とサラダを食べた。シエスタは相変わらず餌付けされていたが、お酒に興味を持ったのか味見をしていた。酔っぱらったのか、触手を出して、ぷるぷる震えていた。そして僕の頭の上に乗って、寝始めた。