第14話 寄生スライム2
朝食を食べ終わり、ギルドに向かった。依頼掲示板には冒険者が群がっており、この軍勢に巻き込まれるのは疲れてしまうな。と思い、人が少なくなるのを見計らって見に行った。今回は街の依頼を受けようと思っている。【流体操作】が得意そうな街の外壁の掃除があったので、それを受けることにした。掃除するだけで、1万リノとはなかなかいい物件ではないかと、今は後悔している。
外壁の内側の掃除なのだが1m×10mで1万リノのようで、めちゃくちゃ広い上に高い。掃除用にブラシと井戸の水を自由に使っていいと言われた。
上から流したら早そうだなと気付き、【流体操作】で水に回転を加えて汚れを落として、頑固な汚れは【風魔法】のエアサーフィーとエアロックという技を編みだし、エアサーフィーで風にのって動き、エアロックで止まるという、空中で離れ業を見せつけながら掃除すること3時間で終わらせることができた。もうこんな仕事やりたくないとか思ってると、思ってたよりきれいになったと依頼主が言っており、報酬額を1.2倍にしてくれるとのことだったので、次回も受けることにした。
依頼書にサインしてもらい、ギルドで報酬をもらいに行くと、ランクをFランクからEランクにあげてもらった。これで初心者冒険者から一般冒険者になったといえるだろう。
昼になったので、宿に向かい、おやじさんにEランクに上がったとの報告をしたら、よかったな!おめでとう!との祝福を受けて、昼御飯を大盛りにしてもらえた。シエスタは相変わらずみんなからご飯をわけてもらってぽよぽよ跳ねていた。それを微笑ましく見守る冒険者の図ができあがった。
ジパーズとの約束は明日の昼頃である。まだまだお金が足りないので、狩りに行くことにした。門に向かうと、兵士さんが門の向こうを眺めていた。
「どうしたんですか?そんなに向こうを眺めて?」
こちらをみて、一瞬ビクッとして答えてくれた。
「いや…。あそこに変な歩き方をして、肩にスライムくっつけて歩いてる人がいるんだが、あれ、寄生スライムじゃないかな?」
確かにテイムしてるとしたら、ちゃんと普通に歩けるはず、肩に乗ってるだけだと、揺れで落ちてしまう。粘り気の強いスライムは別として…。
「あの人…目が虚ろじゃないですか?それに口をみると、ヨダレがすごいですよ」
兵士の方に緊張が走る。槍や剣を持ち、近づいていく。
「すいませんがちょっとお聞きしたいのですが、そのスライムはテイムしたものですか?」
一応聞いてみるが反応が全くない。それどころか変なわめき声を発する。どう考えても寄生されている。
新しい宿主を見付けたとばかりに、人の身体から触手を出していく。その触手は兵士たちを襲う。
兵士の方は触手は剣や槍で防ぐ。後方に距離をとり、一人は応援を呼びに向かい、一人は近づかないように槍で応戦する。
「兵士さん!支援します!」
ウィンドカッターで触手を切り刻み、その触手を吸って回復しないように遠ざける。
「助かる!火魔法は使えるか?スライムは火に弱いんだ!俺は風と土は使えるんだが…火は使えなくてな…」
「一応使えます。人の身体ごと焼いてもいいんですか?」
「身体をスライムに寄生されているからな、全部破壊するか、核を壊すかしないと倒せないだろうな…」
【流体操作】で風を寄生スライムに集めて風圧で触手を動けないようにする。掌に火の球ができるイメージをしてそれを圧縮させる。それを銃弾のように身体に撃ち込む。火により焼かれ、風圧によって逃げることができず、燃え尽きるまで焼かれ、魔石だけがその場に残った。
「なんだか、焼け過ぎた気もしなくもないですが…。一応討伐はできましたよ?」
「お、おぅ…」
兵士さんは口をぽかーっんと開けつつ、反応した。
「おーい、大丈夫か?応援呼んできたぞーっ!」
先程応援を呼びにいった兵士と、冒険者数名が駆けつけてきた。寄生スライムの現状をみて唖然としている。そしてこちらをみて、近付いてきた。
「お、おい…これはお前がやったのか?」
「は、はい、一応僕がやりましたが…やり過ぎましたか…?」
「ま、まぁ…討伐できたならいいさ。それより怪我はないか?あと戦いの内容を知りたいから、話してくれないか?」
そう言われ、やったことを【流体操作】を省いて話してみた。
「案外えげつないことをするな…。しかも2属性同時操作とは、なかなか魔法の腕前がいいな?誰かに教えてもらったのか?」
「一応独流ですが、そういえばこれって報酬とかもらえるんですか?」
「そうだな、一応応援してくれたので、こちらからの依頼という形で報酬を出そう。魔石の方はギルドの方で売ってくれて構わない。そこから研究所の方へ送ればいいだけの話だからな」
その後、寄生スライムの特徴を話し合った後、そのまま狩りに向かった。ゴブリン5匹と薬草5本をとり、750リノ稼いだ。寄生スライムの依頼は2000リノと魔石が1000リノで合計3750リノ稼いだことになり、その日は終わった。