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流されたものの行方  作者: 『食べられません』を食べた人
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第107話 彼の有名なくっころさん

 アッシュとオークくんかくんか娘との関係に終止符をうつために、僕は二人に歩み寄る。二人はまだ僕には気付いていない。僕は自然に二人に話し掛ける。


 「アッシュ、僕達はそろそろ行かないといけない……。だからその娘は連れていけないんだ……」


 悲しそうに呟いてみたものの、二人には全く聞こえていなかった。悲しい、無視されるのが。


 「ブモゥ(私は生肉も好きなのだが、実は料理と言うものも好きなのだ。だからぜひ君に作ってもらいたい!)」


 「も、もちろんです!私が丹精込めてつくりますよ!」


 そ、そうだったのか!知らなかった……。とは言ったものの、僕は塩コショウ頼りの料理しか作れないから。きっとアッシュ好みの料理なんてつくれないんだよね。スズネなら死ぬほどま、おいしい料理を造ることができるけど、あれは一度食べたらやめた……やめられないからな。


 うん、この話はやめようではないか。誰も得しないし、なにもうまないのだからさ。あれ?この人もしかして料理つくれるの?じゃあ連れていったら道中の食事事情が改善されるのかな?


 「ブモゥ(アリス……私は君が欲しい。(料理を)食べたいんだ!)」


 「ほ、欲しいだなんて……た、食べたいのでしたら……ここではちょっと……」


 なんだ、その誤解をうむような言い方は。しかも満更でもないぞ、あの顔。てか名前アリスっていうのか。今気づいたけどさ、彼女の耳尖ってるけど、あれは作り物なのかな?それとも本物?


 昔あっちの世界の外国でヴァンパイアになりたいとかいう中二病センスで耳を尖らせるという整形がはやってたけど、それとは違うのかな?


 だったらやっぱり獣人と同じように種族の特徴かな?ファンタジーでよくみるエルフというやつなのかな?


 はっ!?まさか彼の有名な『くっころ』さんではないのか?エルフとオークの組み合わせと言えば、誰もが知ってるものだ。嫌がるエルフの騎士をオークが襲うというあの!


 いや、待てよ。彼女はそもそもオークの異臭がたまらなく好きだし、むしろオークに襲われても喜びそうだ。さらに言えばどちらかといえば彼女が襲いそうだ。


 対するアッシュは人を襲うような狂人ではない。さらに言えば温厚で紳士だ。むしろ『くっころ』さんとは真反対なのではなかろうか。


 嫌がるエルフの騎士をオークが襲う、のではなく、喜ぶエルフの学生が紳士なオークに襲う。うん、彼女にはこれの方が適切だね。


 そろそろ場所を考えて行動してくれないかな?一応街は出てるけど、ここ門の目の前なんだよね。街の顔とも言われるところの真ん中でいちゃつくのはやめようね。


 奇跡的に人が現れないのが救いだな。こんなところ見られたらアッシュが討伐対象になっちゃうよ。


 「アッシュ、アリスさん?そろそろ僕らは王都に向かいたいんだけど?」


 「ブモッ!?(吃驚した!いきなり話し掛けないでくれよ!?)」


 「ひゃわっ!?」


 お、おう。そんなに驚かれるとは思わなかったよ。可愛い驚き方だな。


 アッシュは周りの状況を確認して焦っていたが、アリスはみんなにこの状況を見られていたことに気付いてどんどん顔が真っ赤になっていく。


 「もう夕方も近付いていってるし、今日はもう行けなくはないけど、アリスさんが着いてくるかを明日までに決めてくれるか?アッシュは僕の従魔だから置いていけないからね」


 「そ、そうですね……。私のせいでごめんなさい……」


 「ブモゥ…(すまない…)」


 アッシュとアリスを連れて街に戻る。アリスが旅人ならば気にしなくてもいいが、アリスはこんなんでも学生だ。アッシュとの都合で勝手に連れていくわけにはいかない。


 オークと駆け落ちするエルフなんてのも凄いけど、今までの出来事をスルーして僕らがまだ滞在することに嬉しそうにメルサははしゃいでいた。

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