第103話 意外とマナーは守る戦闘狂
戦闘狂を二人ほど減らしたのだが、見事にメルサからやり過ぎと怒られたが、威力を抑えたので彼らはぴんぴんしてた。今では僕に逆らわない舎弟みたいになっている。よほど先程の魔法が効いたのだろう。
周りにいた戦闘狂は僕にじりじりと寄ってきていたが、メルサの一言によって砂糖に群がる蟻のように近寄ってきた。
「ソウタ殿はSランクなのですから、生徒には手加減ということをしてくださいのじゃ!」
「一応威力は抑えて壁に当たる瞬間にクッションの風壁を置いたので見た目よりも痛みはないかと」
「それでもやり過ぎはいけませんのじゃ!」
「でもまぁ、彼らにはいい薬になったのでは?」
「そうじゃな…」
「そうですよ」
「興奮剤にはなったじゃろうな…」
「へ?」
メルサは少しずつ僕から離れていった。僕はメルサの言葉に困惑したが、周りの状態に気付いて理解した。
周りにいた戦闘狂は興奮状態で僕のことを見つめていた。女生徒もいたのだが、艶めかしい声を出しながら近寄ってきたので一瞬痴女かと思わせるほどだった。
「まぁ、落ち着け」
僕は落ち着かせようとしたが、それを合図にでもしたかのように魔法が飛んできた。一瞬びっくりしたが、風壁で防ぐことができた。【流体操作】で火は消して風は風壁の強化、水は打ち消し土は砕いた。
「落ち着こうねっ」
風壁を自分を守る大きさから拡大して守りから攻撃に変える。何人かはそれで壁に飛ばされて脱落した。メルサは壁に寄っていき、スズネは僕が風壁で守っているので問題ない。
「くっ…これがSランク…いいじゃねぇか!」
「あぁ、強敵ってのはこんな感じか、興奮するじゃねぇか!」
「そうね、いいわね。はぁ…はぁ…」
…やべぇやつしかいねぇな。この学校どうなってんだ。わりと普通なやつを見た記憶がないんだが。いや?いたのか?個性的なやつがいすぎて記憶にないだけなのか?
「はぁ…なんでこんなことに…」
「「「「いざ、尋常にっ!」」」」
と同時に来るかと思ったら、じゃんけんをし始めた。僕はそれを眺めながら待っていると一人がチョキを上に掲げて目をきらきらと輝かせていた。
きっと彼が一人勝ちしたのだろう。それから彼の後ろでは熱い戦いが繰り広げられていた。もしや全員で来るのではなく、一人ずつ来るのかな?それからあれは順番を決めているのかな?
チョキを出した彼が前に出てくると審判としてメルサが真ん中に来た。ちゃんと試合風にやるんだな。と思ってたけど、ただ単に僕が危ない人だと注意してるようだ。
それはメルサにも当てはまるのだと思うのだが、まぁいいだろう。流れ弾がメルサに当たっても責任は僕にはないぞ。たとえわざとだとしても。
一人目は体を強化して突進してきたので、風圧でベクトルを真下に変えて頭から床に埋める。
ふむ、いいめり込みだ。
二人目は風魔法のウィンドカッターを撃ってきたので掌握してブーメランのごとく返却した。すると、ジャンプして避けたので風圧を上向きに当てて、天井に頭から突っ込む。
ナイスめり込み。
三人目は剣に火魔法を纏わせて襲ってきたので、近づく前に大量の水魔法で吹っ飛ばしたら金ヅチだったらしく溺れた。
南無。
四人目は僕の水魔法を使った氷魔法を使ってきた。高等魔法にびっくりしたが、僕も使えるので同じ魔法を使ったら、レベル差で圧勝した。
レベル差はどうしようもないね。
という感じに一人ずつ相手をしていった。戦闘狂も順番はしっかりと守るようで、多数を相手にしなくてもよかった。なのでそれほど苦労せずに倒すことができた。
今回はさすがに悪臭の導きは使わなかった。僕をそれほど追い詰めるやつはいなかったが、魔法対魔法の戦闘は経験が少なかったのでいい勉強になった。
魔法といえば白猪人族の女王との戦いがあったわけだが、あれはさほど白熱したわけでもなかったし、なにより微妙な空気が流れてたので戦闘という戦闘でもなかった。
そんな感じで戦闘狂との戦いが終わった。もちろん流れ弾がメルサに何回も飛んでいったが、これは僕がわざとコントロールミスをしたので仕方がない。メルサは気にしたそぶりはなかったが、あれはわざとだと言うことに気づいている顔だな。
お互い様なので、僕もメルサもそれを言及しようとはしなかった。だって不毛な戦いになるのは間違いないし、僕とメルサの模擬戦になるのは嫌なのでしない。
その流れで喜ぶのはメルサと再戦歓喜の戦闘狂だけだ。
戦闘狂との模擬戦が終わった僕は汗を拭き取る仕草をしながらスズネとメルサの下に帰ると、スズネがタオルを渡してきた。
「ソウタ、お疲れ様っ!」
「ありがと…」
僕はスズネの笑顔に萌え死にした。
前話の伏線回収。
いくつかの伏線を全く回収していませんが、いずれ回収予定です。その話も広げ方を色々と考えているのでお楽しみに。