第6話 人型グラーズ掃討作戦
ご覧いただきましてありがとうございます。
今週からバケモノとのバトルとなりますが、バトルの緊張感や疾走感をどう表現していこうかと楽しみながら考えてます。
しかし、毎週日曜というのは遅く私が読者ならまぁ待てない。と思います。それでも長い時間をかけながら毎日時間のある時に少しずつ書いております。また、誤字脱字等は挨拶代わりとなってしまい相変わらず酷いですが少しずつ修正しながら進めています。
こんな感じで正直いつになったら完結するのか自分でもわからないのですが、第0話からブクマして下さった方や第4話でブクマして下さった方々を初めにアクセスしていただきました方々がいらっしゃる事が励みになりもっともっと頑張ろうと毎日思っています。
よろしければどうか最後までお付き合いいただけたら嬉しいなぁと思っております。
それでは第6話、是非お読みください。
深緑の森で発見したバケモノによる危機的可能性を知らせるために森から一番近い町、カルランへとやってきたルシアとリア。一足先にカルランを経由して王都バルザルードへ向かった第二王子のバド。
発見したバケモノに後れを取らないよう万全を期す為それぞれが動き出したのだったが事態は彼らが思っていたよりも悪くバケモノはすでに森からカルラン方面へと動き出していたのだった。
━━━━━━とにかく集合場所にっ!
ルシアはヨー爺の屋敷を飛び出し集合場所へと向かった。600m程の距離を全力で走り切り息を切らすルシアの期待とは裏腹にそこにはまだリア達の姿はなかった。
━━━━━━リアッ!どこだっ!?早く見つけて編成を組まないと・・・すでに後手に回っているだけに事態は一刻を争う!あの姉妹の事だ、相当数の男達を連れて集合場所へ向かっているハズッ!
瞬時に思考を切り替えたルシアはリアが辿るであろう道筋を逆に迎えに行くことにした。
暫く走った先で人だかりを発見したルシアはその中心へと潜り込むようにして入っていった。
━━━━━━せ・・・せまいっ!ここまで集めて来るとは・・・あの姉妹の何がそんなにいいのかいつもながらわからない━━━ってどんだけ集めてんだあのバカ姉妹っ!
「ミア姉、リアッ!どこだっ!!」
潜り抜けた先でポッカリと穴が開いたような空間が出来ていた。中ではレア姉も合流してエミロッテ家三姉妹全員が揃っていた。
「あっ!ルシア!集めたよっ!(事情はお姉ちゃん達にだけ話してあるわ。)」
そう言ったリアはドヤ顔を見せる。
━━━━━━そのドヤ顔に突っ込む時間すら勿体ない。適当に流して早急に作戦を練って部隊の編成をしないと間に合わない・・・。
「(よくやったリア!だが事態は一刻を争う。いいかっ!人型のバケモノが森からカルラン方面へ向かってきているっ!距離は町からおよそ8キロだ。時間が惜しい。このままここで作戦を練る!)」
そう言ったルシアは顔を手の平で隠す仕草で集中力を高めていく。ルシアのいつもの癖、ルーティンである。この時のルシアにはもはや周りの音は聞こえていない。それ程に深く深く思考の海に潜っていく・・・・
ブツブツとつぶやくルシア。時間にして約10秒程で、
「ぶはぁっ!はぁ、はぁ、はぁ!」
深く潜っていたルシアの意識が現実に戻ってきた。たったの10秒程であったが、息切れし深呼吸を必要とする程に脳は酸素を消費していた。息も整わないうちからルシアが、
「(はぁはぁっ!━━━━━━レア姉、ミア姉、リアから事情は聞いてますよね?)」
ルシアの真剣な表情を見た二人はコクリと頷く。いつもの緩い雰囲気のミア姉と面倒事は極力避けてきた面倒くさがりなレア姉のいつもの二人はいない。
「(三人の協力が必要不可欠なのでリア以外にもレア姉、ミア姉にも作戦に参加してほしいんです。お願いします!)」
ルシアは三人に深く頭を下げた。
「(まず、作戦指揮権は俺に預けてください。でも、表向きはレア姉にお願いしたいんです。レア姉ならこれくらいの男達を動かすことくらいは容易いでしょう?)」
そういうルシアの顔を見て若干面倒だ、といった顔を見せるレアだったが言いたい事はすべて飲み込み渋々頷いた。
「(ありがとうレア姉!じゃあ早速『人型グラーズ掃討作戦』を説明します!一度しか言わないのでよく聞いていて下さい・・・)」
周りの男達が聞き耳を立てる中で、聞こえない様に簡潔に作戦を伝えるルシア。その作戦はたった10秒程で考えた内容とは思えない程緻密に考え抜かれた作戦だった。
━━━━━━これだけの作戦をあの一瞬で考えたの?それともある程度想定してたとでも?
レアを驚かせたルシアの作戦とは″被害を0に抑える″その一点だけに焦点を当てた作戦で、誰一人として死なせない。それを大前提として譲らないルシアの決意が見える内容の作戦であった。
「・・・わかったわ。」
そう言ったレアが長い髪をすくい上げ集まった男達に向かって意を決した表情で、
「みんな聞いてっ!このカルランの町から西にあるみんなもよく知ってる深緑の森で人型のグラーズが発見されたわ。その人型がどういう訳か森からカルランへと多数向かってるの!」
集まった男達が不穏な空気を感じ取りざわつきだした。それもそのはず、彼等は何故集められたか知らされてはおらず、たった今初めて聞いた内容が人型のグラーズと来たのだから当たり前の反応であった。
更にグラーズと言えば、町の人々でもグラーズ狩りには入念な下準備と訓練を必要とし昔から死者、怪我人の絶えない命を懸けた狩りである。
それ故の場の混乱。だがここまではレアの想像通りであった。そしてここからが肝要でミスは出来ない。
「でも安心してっ!今王都にバドが向かって武装精鋭をカルラン防衛の為に要請しているところよ!それにヨー爺様が町の女性、子供達を念の為に避難させる方向で動いてくれているわ。だからそれまで耐える為にみんなの力を貸して欲しいの。貸して欲しいといっても人型のグラーズと正面切って戦おうって訳じゃないわ━━━━━━━━━・・・」
━━━━━━うまい。レアは次に男達がどんな不安を抱えて何を考えるかを先に読んで話している。レアに任せて正解だったな。ここはもう大丈夫だろう・・・
安心したルシアは最後まで聞かずに今自分がすべき事をする為、走り出し町の中に姿を消したのであった。
それから約一時間分程で下準備を終えたエミロッテ三姉妹と数十人の男達が町の外に集まっていた。そこへ遅れてルシアと他3人の若い男女がやって来る。
「ねぇルシア先輩。人型ってそんなに見た感じヤバいの?私とハルシオンとレンでも無理かな??」
茶髪で髪の長い16歳、体の線は細く突っつけばそれだけでフラフラとしそうだ。しかしその見た目に似合わない獲物を二本、左右の腰に付けている。彼女もルシアと同じで短刀使いの二刀流であった。
「━━━━━━おいおいソフィー、俺達でも狩れねぇって事はさすがに無いだろっ?なぁレン?」
そう言って余裕の表情と佇まいでソフィーの頭をポンポンと軽く叩く。いまからバケモノと一戦交えようかという者の雰囲気ではない。ハルの背格好はルシアによく似ているが若干ルシアより背が高い。
それに自信に溢れるその態度は伊達ではなく、背骨に沿うように背負われた大剣はずいぶんと使い込まれてはいたが隅々まで手入れが行き届いており歴戦の貫録を放っていた。それはハルの実力を意味するのと同義であった。
「・・・・どうかな・・・やってみなきゃわかんないよ。」
空まで伸びる一本の線のようにピンッと伸びた背筋に細い体に程よくついた筋肉。注目すべきは上半身の筋肉で、剛柔兼ね備え鍛え抜かれた筋肉により背中に背負う弓の練度の高さを物語るようである。
このレンという青年は17にして弓の名手でカルランナンバーワンと言われ、国王より与えられる千年樹を使用した数少ないコンポジット・ボウの使い手でもあった。
「油断はしてくれるなよ?俺はこれからも絶対誰も死なせない。死なない為にも油断は今ここで捨て置いてくれっ!」
いつもより若干きつめの一言を放つルシアに対して、その後ろを歩く例の三人がルシアの喝にしゅんとする。
ルシアはレアにあの場を任せた後彼等を集めていたのであった。合流したルシアが指揮台前のレアに作戦開始の合図を送る。それに目で頷いたレアが指揮台を上り群衆を前に、
「準備は整いましたっ!これからカルランと森をつなぐ谷間に罠を仕掛けます!その後は先ほどの指示通りに!私たちみんなで必ず町を、それぞれ大切な人を物を守りましょう!」
レアの掛け声に呼応し群衆が咆哮をあげる。
「人型グラーズ掃討作戦━━━━━━開始っ!!」
レアの声が響き渡り、人型グラーズとカルランの戦いが幕を上げた。
ルシアとリアがカルランに到着してからここまで僅かに2時間弱の出来事である。
開始の合図と共にレアが指揮を執りルシアの作戦通りに動く人々は細やかなレアの指示のもと順調に進んでいく。
行き止まり三か所には【レア隊】が三隊に分かれて向かい、崖に上り人型を上から弓で仕留める準備を進める。
町へと続く三か所の道には人型が通る可能性の高い道順で【ルシア隊】【ミア隊】【リア隊】が準備を進め、こちらも後は人型を待つだけとなっていた。
━━━━━━これであとは人型を待つだけだな。レアのおかげで思ったより早く終わった・・・・。
作戦準備を完璧に展開する事が出来たこの時点でルシアの目論見では殲滅出来たも同然となっていた。だが事はそう上手く運ばなかった。
「━━━━━━ル━━━アッ!━━━━━━ルシアッ!」
息を切らし走ってくるのは【レア隊】で崖の上から人型の行動を観察する為に行動を共にしていたサリアだった。ルシアもサリアのもとへ走る。
「━━━━━━!?どうしたサリアッ!」
「はぁはぁっ!崖の上で、弓の準備をしていた男の一人が崖から足を滑らせて━━━はぁ、はぁ、落ちそうになったところをレアさんが男の手を掴んでそのまま・・・・」
「まさか、崖から落ちたのか!?」
「二人とも命に別状はないみたいだけど━━━━━━レアさんは足を骨折しているみたいで、男も動けそうにないの。ど、どうしようルシア・・・・」
涙を浮かべて膝をガクガクと震えさせるサリア。
人型も恐らくすぐそこまで迫っているであろうこの段階で行き止まりのルートに落下した二人がどうなるか、ルシアの表情から血の気が引いてゆく。次の瞬間ルシアは行き止まりのある崖の上へと走り出していた。
「サリアッ!作戦はそのままだっ!俺と一緒に崖の上へ戻って、開始の時が来たら作戦開始の合図をレアの代わりにしてくれ!たとえ二人ともまだ行き止まりルートから逃げることが出来てなくてもだっ!タイミングを逃せば全員の命が危ないッ!」
戸惑いを見せながら小さく頷いたサリアと一緒にルシアは走った。
━━━━━━くそっ!人型は何処まできてるんだ!?
焦るルシアが全力で向かっているその時すでに人型はレア達の目前まで迫ってきていたのだった。
お読みいただきましてありがとうございます!
週一ペースで遅いですが必ず毎週書いて最後まで書ききりますのでどうか最後までお付き合いいただけますようにブクマよろしくお願いします。小腹が空いた時にちょっとつつく未知のお菓子感覚でお時間がある時に是非最初からお読みいただけると嬉しいです。
文章力、語彙力、表現力どれも未熟ですが勉強しながら数を書いて上手くなれたらいいなと日々仕事が終わって家に着いて少しづつ書いてます。
余談ですがこの第6話で展開されるルシアの作戦内容ですが、作戦内容をセリフで説明するようにしてしまうと後の展開が読めてしまうため上手く内容を伏せながらその後を読み手が想像してわくわく出来るように書きたい!と思って書きましたが、読み返してみるとどっちつかずで中途半端になっていました。
ほんとに難しいですね。でも楽しいです。