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ニューゲーム?コンテニュー?それとも強くてニューゲーム?  作者: おれんじじゃむ
第1章 魂は経験値の塊
7/15

第5話 平和な日常の終焉

今回の話の最後の方から目まぐるしい動きを見せますが来週からバケモノとの話が続きます。飽きずにお読みいただけると嬉しいです。

※ティル家表記からエミロッテ家へ修正しました。すみませんでした。

カルランを経由して王都バルザルードへ向かったバドと、カルランに迫る危機的可能性を町の人々に伝える為に今しがた到着したルシアとリアの二人。

 そんなルシアとリアが到着したカルランの人口は約1500人で王都の1/100にも満たない小さな町だ。近くには例の深緑の森があり、町と森を繋ぐ地形は少々独特で、遥か昔に存在したいくつもの巨大な河川による浸食によって出来た切り立つ絶壁がうねるように幾つもあり、まるで迷路のようである。

 一転、町の周囲は開けており米や畑といった作物を育てる事に適した地形で、地味だが食べ物が美味い。千年樹そっちのけで美味いものを求めた観光客も多い程だ。綺麗な景色に美味い飯、今勢いのある町がカルランだ。

 そんなカルランという町はリアの故郷でもあった。

カルランに入ってすぐのところでルシアとリアの二人は一人の女性に声を掛けられた。


「リリアにルシアじゃない。さっきバドも見かけたわよ?慌てて王都に向かったけど・・・」


 そう言って歩み寄ってくる女性はリアの姉ミリアだ。

リアの本名はリリア・エミロッテ。リアは三人姉妹の三女でエミロッテ姉妹を周囲の人たちは「レア、ミア、リア」と呼ぶ。


「ミリア姉さん、実は今ちょっと立て込んでで・・・一緒に町の男達集めるの手伝ってくれないかな?」


手を合わせてあざとい上目遣いでお願いするリア。


「━━━━━━━!?ミリア姉さんに任せなさい!」


ミリアもまたバドと同じく単純だった。リアバカとでも言おうか。リアは長女レアとは12、ミアとは4つ離れた末っ子で家族や近所でも特別可愛がられて育ってきた。容姿端麗で頭も賢く生態学者でもありリアはエミロッテ家自慢の娘だった。


「はぁ・・・・じゃあ集めたら千年樹の麓に集合だ。時間は・・今から2時間後の18時で。」


「えぇ、わかったわ。じゃあ行きましょうミリア姉さん♪」


リアにベッタリ引っ付いて幸せそうな表情を浮かべたミリアとリアの二人は人混みに消えていった。

 ルシアは初めからリアに男を集めさせるつもりだった。リアだけでも十分だろうと計算していたルシアにとってミリアの登場は棚ぼただったが若干急がなくてはいけなくなってしまった。

━━━━━━あの二人が集めるとなると数も相当なものに・・・・はぁ、俺も急がなければ・・・。


 ルシアは速足でまずは足取り重く酒場へ向かった。

酒場に着いたルシアはスーっと深呼吸し意を決して扉を開ける。時刻は16時、仕事を終え疲れた体にアルコールを求めた人々が早くも酒場を埋め尽くす程で相変わらずの賑わいを見せていた。カルランの特産とも言える酒米を醸したアルコールの匂いが鼻を突き抜け若干目眩を起こす。

 ルシアは下戸だった。

━━━━━━うぅ・・・気持ち悪い・・・・。


 ルシアは酒場に集まる男達を無視。カウンターに向かい、

「熊殺しを・・・一升瓶で、包んでくれ。」


声を振り絞るようにしてそう言ったルシアは代金をカウンターに置いた。そのまま振り返りカウンターを背にして

「━━━外で待つ。」


フラフラとした足取りで店の外へ。匂いで酔うほどの下戸にとって酒の良さなど微塵も理解できなかった。暫くして呆れた顔の店主が丁寧に包んだ熊殺しを持ってきてルシアに手渡す。受け取ったルシアは一言も発さずそのまま男達に目もくれず酒場を後にした。

 ルシアが酒場に向かった目的は、酒場に集まった男どもを集める事ではなく町長お気に入り《熊殺し》を仕入れる事であった。

 昔から歴代町長は千年樹を守る為麓の屋敷に住む事をしきたりとし、カルランを守ってきた千年樹の管理を任されてきた。当然町の神木である千年樹への供え物も多いのだが、守り人である町長への感謝と敬意を表すために手土産を用意する者も少なくなく、ルシアもまた右に倣えと用意した物こそが熊殺しであった。ちなみにこの熊殺しだが文字通りのキツさである。

 嗅いだだけの酔いから冷めたルシアが町長の住む屋敷へと着いた。3m程の高さの両開きの門を押し開けルシアは大声で、

「ヨー爺ぃぃぃ!熊殺しをお持ちしましたあぁぁ!!」


らしくない大声でルシアは叫んだ。それと同時にバタバタと屋敷を駆け回る足音が聞こえてくる。


「よう来たルシアー!まぁあがれぇぃ!」


声だけでルシアと分かった町長がその姿も見せぬうちから叫んだ。爺と呼ばれる程の御老体ではあるがその声は屋敷の外まで響く程だ。玄関でヨー爺の姿を見たルシアは深く一礼する。

━━━━━━相変わらず元気そうだなヨー爺。


齢95となる御老人とは思えない身のこなし、軽快さにルシアはほっとした表情を見せる。


「よく来てくれたなっ!早う上がれ、奥の居間でゆっくり話そうかっ!・・・その手に持っとるやつも早速頂くかな!?」


会ってから一度目が合っただけで、その後はルシアの手に握られた″熊殺し″に熱い視線を送り離さなかった。


「それでは・・・失礼致します。」


ルシアはグッと踏み出し廊下を歩く。

 歴代町長により大切にされてきたこの屋敷は二階建ての木造で、柱はすべて千年樹の枝から削り出し出来ている。年月を経る事で硬く締まり、それでいて程よいしなりを生む。家屋に用いられる事も多々あるが、その他には狩猟用のコンポジット・ボウの木材料とされてきて王国認定の最高級品として限られた者だけが持つ事を許される弓の材料となる。

 そんな歴史ある千年樹の恩恵を受けた屋敷は築200年を超えるが痛み等は見られず、色は程よく黒く染まり重厚な味を醸し出していた。

 それだけの歴史ある屋敷の廊下を歩くヨー爺の背中を見ていたルシアはある昔のことを思い出していた。

━━━━━━子供の頃よくこの屋敷でバドとティル姉妹みんなで、かくれんぼとかしたよなぁ。なんていい思い出みたいに振り返るけど今思うとそゾッとするな・・・。しょっちゅう暴れまわる俺達に手を焼いた兄さんとお手伝いさんの顔、あれはマジで怒ってる顔だったな・・・・・・今なら分かるな。


そんな若干後ろめたい気持ちもヨー爺を見れば吹っ飛んでしまうのだから不思議なものだった。


━━━━━━人には話せないような黒歴史だなぁ、ほんと。この屋敷に来るといつも思い出すが、その時ヨー爺はいつもの部屋で″熊殺し″を飲みながら俺達を見守るようにして座って笑ってくれたっけ。俺達みんなそれが嬉しくて何度も暴れまわったんだろうな・・・。


そんな事を思い出させる貫録ある背中に付いて20m程歩いた先に在る、例のその部屋へと通される。


「忙しい中よう来てくれたな。適当に座ってくれ。」


「はい。」

スッと座りルシアは熊殺しを手渡した。その後直ぐにルシアが口を開いた。


「早速で申し訳ありません。本題に移らせていただきます。」


ルシアの周囲の空気が変わったのを感じ取ったヨー爺が先程までとは違う表情を見せる。


「半年に一度の生態調査を行いに本日深緑の森を訪れたのですが新種かと思われる個体を発見いたしました。・・・いえ、恐らく超進化という方が正しいでしょう。人型グラーズを目撃しました。」


「人型じゃと?ワシも初めて聞く、詳しく調べられたのか?」


「いえ、戦闘になればこちらも無傷では済まないと判断し退却いたしました。━━━申し訳ありません。」


深々と頭を下げ続けて、

「人型の生態調査もサンプルも採れず終いでしたが事態は極めて深刻であると判断し森に近いカルランへ緊急事態の通達に参りました。」


報告のみで実物も目の当たりにする前ではあったがヨー爺も事態を重く見ていた。


「カルランはあの森のグラーズを含めた動植物の恩恵を受けて発展してきた。千年樹もそうだが森がなければ今のカルランも無かったであろう。それ故に代々町長が森の管理を任され長年に渡り共存を図ってきた大切な土地じゃ。」


「はい。差し当たりまして大きな問題が三つあります。一つ目はは人型によるカルランを含めた人的被害。二つ目は生態系の変化に伴うカルランへの影響。三つ目に人型が他にも存在する可能性です。」


曇った表情のヨー爺にルシアは続けて、

「まずは人的被害を想定した対応として、カルランの戦力をお貸しいただきたいのです。人型のバケモノを差し迫った驚異と判断しヨー爺に協力を求めて参りました。」


「わかった。ルシアの思うようにしてくれ。お前なら信頼に足る。こんな爺には他に力になれることはないからの。町の者をくれぐれも宜しく頼む。」


グッと頭を下げたヨー爺。その想いに報いるべくルシアは動き出した。


「有り難うございます。今現在バドは王都へ向かい、リアは戦力を集めています。まずは少数精鋭での調査に、その後どうするか?といった詳しい話を後日いたします。」


そんな話をしていた矢先であった。千年樹の最頂部にて枝の選定をしていたサリアが慌てた様子でかけ降りてきていた。

その経緯はこうだ。


「なんだろ。あれ。・・・・グラーズ?じゃないのかな?まだ遠いけど━━━━!?数が多い!」


サリアが目撃したグラーズこそルシア達の目撃した人型のバケモノであった。サリアは目がよく8キロ先程まで見渡せるのだがサリアの目でギリギリ捉えられる範囲でグラーズの集団が森の方面からカルラン方向へと向かうのが見えていた。


「━━━━爺様に知らせなきゃ!」


慌てて降りてきたサリアが屋敷内に響く声でヨー爺の名を叫んだ。


「爺様あぁぁっ!森からグラーズの様な生き物がカルラン方面へと向かってきてますっ!」


その声はルシアにも聞こえた。勿論ヨー爺にも・・・・。

ルシアの判断は間違ってはいなかった。だがルシアが思うより状況は悪く切迫していたのだった。


「マズイっ!ヨー爺、直ぐに隊を編成して俺は森へと向かいます!混乱を避けながら人々の避難を・・・うまくやっていただけますか!?」


「わかった!こっちはまかせぃっ!」


ルシアは慌てて屋敷を飛び出す。


━━━まずリアと合流だっ!思っていたより展開が早い・・・何か見落としていたのか!?くっ━━とにかく今は一刻も早くリアとっ━━━━!


ルシアの想像を超えたバケモノの行動だったが、この事が考えの甘かった自分を捨てるスイッチを入れるきっかけとなったのだった。






お読みいただきまして有り難うございます。有り難いことにブクマも2件いだだきとても嬉しくおもっています。

それと同時に時間厳守が守れない自分が情けないです。13時更新となり申し訳ございません。

毎週日曜日12時に一話づつではありますが更新させていただき最期まで書ききりますのでどうか最期までお付き合い宜しくお願い致します。




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