第4話 千年樹のカルラン
またまた現世に戻ったお話です。良ければ1話から是非お願いします。
※タイトルを間違えておりました。【平和な日常の終焉】は次話のタイトルでした。
申し訳ございません。
ルシア、バド、リアの三人はバケモノとの戦闘を避けカルランへと走って向かっていた。
その道中でバドが息を切らしながら、
「はぁ、はぁ━━━━━━っ!おぃ!ルシアッ!急に退却命令出しやがって!これだけ離れたんだ━━━━━━はぁ、はぁ、そろそろ説明しろっ!」
いつになく強気な口調で問い詰めるバド。初めて見るグラーズのバケモノに戦闘を仕掛ける寸前のところを突然の退却命令に切り替えたルシアに不信感を抱いていた。その背景にはルシアのみ知り得たデッドラインの存在があった。それを越えずに避けたことで死の運命から逃れることに成功した訳だが、作戦変更した事情を彼等にはまだ説明していなかった。だが素直にすべて話すかどうかをルシアは森を抜けたあたりから悩んでいた。
━━━━━━━予知に似たあの現象を話したところで二人はすぐには信じてくれないだろう。作戦が突撃寸前で退却命令へ変わったことに不信感を抱くバドとリアには理由を明かす必要があるが・・・・あの瞬間に起こった現象を信じてもらえるのだろうか?かといって二人に適当な嘘はつけない。
そう判断したルシアは事実のみを伝える事とした。
「実は・・・・あのバケモノは二頭で行動していたんだ。俺達が狙っていた奴の他にリアの背後にもう一頭迫ってきていた。」
「━━━━━━━━━!」
二人は絶句する。
「あのまま戦闘になれば俺達ならば正面の奴を仕留められた可能性が高い。だがひとたび戦闘になればリアの背後に迫っていたもう一頭に気付かれ引き寄せることになる。もし仕留め損ない二頭相手となれば流石に勝てなかっただろう・・・・。」
ルシアは落ち着いた様子で淡々と話した。
「マジかよ、まさか二頭目がいたなんて・・・ごめんなルシア、怒鳴るように問い詰めちゃって。」
バドはルシアを問い詰めた時の態度を猛省していた。だがそれもあの状況では致し方無かった。彼等もまた目の前の初めて見るバケモノに戸惑い不安に押しつぶされそうになったいたのだ。
「いや、バドの怒りも当然の反応だ。気にしないでくれ。」
ルシアが落ち着きを見せることで二人の心に冷静さを取り戻させていった。
━━━━━━ひとまず二人の不信感はこれでうまく拭えただろう。だがあの予知のような現象・・あれが気がかりだな。うまく説明出来る時が来るまでは黙っておくべきか?でもまた同じ事が今後起こらないとは限らないし、その時に話を円滑に進め対処する為には後から話すのでは遅いかも・・・か?いや、今はそれどころではない。とにかく今は目の前の事だけを・・・
ルシアは悩んだが下手に混乱を招くタイミングでもないと判断した。バケモノからうまく逃げ切ったであろう彼等だけがこの非常事態に遭遇していたとは限らないからだった。
カルランまで後僅かのところでバドがルシアの足を止めた事を利用してルシアが
「二人ともこのまま聞いてくれ。・・・カルランに着く前にこれからの行動を二人に相談したいと思うんだ。まずはカルランでどうやって奴の事を信じてもらうかだ。これを俺達がしくじれば事態の対処も出来ず森に近いカルランは危険に晒される可能性が出てくる。」
深緑の森から一番近い町が今向かうカルランであり、現状一番差し迫った危機を迎える可能性があるのはカルランだった。
「加えてもう一つ。多分こっちの方が重要だ・・・あれがもしグラーズの進化後なら俺は人為的な何かを感じるんだ。━━━━━バド、リアどう思う?」
新種の生物ならばまだ可能性もあるだろうがあのバケモノはそうではなくグラーズを基に自然の摂理からかけ離れた存在であった。つまりルシアはそこに確かな違和感を感じていたのだった。
「私も変だと思う。あんなバケモノ初めて見たわ。それに、この前行ったグラーズ狩りは一ヶ月前だったかな?いつものグラーズならもう少し奥まで・・・1時間くらい奥に入らないといないよね。でもあのバケモノ見つけたの森に入って15分くらいだったよ?」
リアは聡明な女性だ。状況が差し迫るほどより鋭さを増す。だが小さい頃はそうでもなくどちらかというと感覚型の無鉄砲、後先顧みないただ無謀な活発少女といった感じだった。
バドが続いて
「俺も同感だな。嫌な予感しかしない・・・すぐにでも親父に報告したほうがいい。」
そう言うバドの親父、それは国王を意味した。バドは【バルザルード王国】の第2王子だ。だが王子と呼ぶには落ち着きがなく、誰もが想像する煌びやかな衣装を纏いながらそれらしい振舞い等も見せたことがない。そんな様子から″バドは王子って柄じゃない″なんてよく言われてきたのだがそれは本当のバドを知らない者が言う事に過ぎなかった。
「その後俺がカルランの警護人員を確保して戻る。それでいいか?」
そんなバドにルシアが釘を刺すように、
「わかっているとは思うが、人為的な何かを感じたことは今は取り敢えず言わない方がいい。憶測での混乱は何も解っていない現状では避けるべきだ。」
ルシアが続けて、
「後、手続きが厄介だが武装で固めた精鋭を寄こしてくれないか?王子の権力を利用する形になって悪いが早さにおいてはそれが最善だと思うんだ。」
申し訳なさそうに頼むというよりは、頼りにしているといった感じの頼み方をする。言い方に棘があるように聞こえる事もあるが、利用できるもの使えるものはすべて使い、言うときはハッキリ言うのがルシアだ。時と場所、使い方を誤ればそれは信頼を失う事に直結する諸刃の剣であるが躊躇わずに使える強さと賢さが持ち味だ。
「精鋭に武装か・・・特に″武装″に関しては期待に応えられるかわからないからね?じゃあまぁ理由もわかった事だし僕はカルランで馬を借りて早速王都へ向かうよ。━━━━━━二人とも後で会おうねっ!」
そう言って先にカルランへと駆けて行ったバドを見送る。二人は少しの休憩を挟みカルランへと再度走り出した。それから約30分程走ったところでカルランの町のシンボルである高さ150メートル程の千年樹を漸く捉える事が出来た。町を確認できたところでルシアが、
「リア。まず町に着いたら大人の男達を広場に集めてくれ。先にその人達だけに説明して不要な混乱を避けるぞ。」
「うん。わかったわ!」
息は荒く体は疲労を蓄積し辛そうだったが表情には出さずリアは笑って答えた。
━━━━━━━━この様子なら町のみんなを手早く集めて話を進められそうだな。後は俺がうまく″説得″
出来るか・・・だな。
そうしてもう暫く走ったところで漸く二人は無事にカルランに着いたのだった。
※お詫び
4話の投稿時間が予告の12時から1時間遅れてしまいました。
申し訳ございませんでした。
簡単な登場人物の性格などの設定を盛り込んだお話を箸休め程度に入れさせていただきました。
誤字脱字の修正が全く終わっておらずお見苦しい点が多々ございますが0話から順に修正していこうと思っております。時間のかかる作業ではありますがお付き合いいただければ幸いでございます。
もし、万が一、このお話を読んでくださった方がいらっしゃればの話なんですが・・・。
それでは最後になりましたが最後までお読みいただきまして有難う御座います。