第3話 初めてのコンテニューの前に《天界編》
ようやく通して5話目となりましたがなかなかペースがあがりません・・・週2話くらいで書けたらいいなぁと思いながら結局週1です。それでもなんとか書き切ります。
誤字脱字等、修正しながら進めていきますのでどうかお時間の許されます時にお読みいただけると嬉しいです。
今回はルシアが一度死んでから現世に戻るまでの天界編となります。
今回は少し謎めいてます。
ルシアはリアを庇いに入りバケモノに一撃を喰らわせようと突撃するも紙一重でかわされ逆に反撃された。
バケモノの鋭い爪と腕力の威力は絶大でルシアの腹部を簡単に貫き、ルシアは無念のうちに命を絶たれる。その後の天界で起きた話だ。
━━━俺は確か━━・・・・。
辺りは真っ暗でなにも見えない聞こえない。あの悪夢のような記憶が夢ではなければと、恐る恐る胸から撫でるように手のひらを下ろし腹部を確かめていく。
━━━━穴がない!?バケモノにやられて死んだ━━━ハズ・・・夢?にしてはリアルだったな。それにここは?
『あぁ━━ルシアよ。こんなところで死んでしまうとは情けない。』
━━━━っ!!
背後から聞こえた声に驚きはしたが、それより先に体は臨戦態勢に入る。先程のやり取りもあり緊張感はそのままに、両腰に手をやり剣を抜こうとするも
━━━━無い?!
「━━━━なぜ俺の名を知っている!どこにいる!ここはどこだっ!?」
腰を低く落とし攻撃に備えるルシア。
『まぁそう身構えなくてもいい。気分も優れないだろう?楽にしてくれ。』
[パチンッ!]
指を鳴らした様な音が聞こえた。同時に背後に煙が立ち込め中から椅子が現れた。そのままルシアの膝裏目掛けてひとりでに動きだし無理やり座らされた。
「━━━━っ!そんな事はどうでもいいっ!ここは何処でお前はは誰だ!?」
気味の悪い手品のようなものでもてなされた事をこの際全て無視して納得のいく返答を待つルシアに。
『まぁまぁ、焦っても仕方がない。時間は無限にあるとも言えるのだ、とにかく落ち着きたまえ。』
彼は何人もの魂を相手にするうちに常識力が欠如していた・・・というよりは、毎度毎度の自己紹介に飽々してきて遂には面倒になっていた。
期待とは違う返答が返る。ルシアの混乱など全く意に介さぬ発言に加えて、突然置かれた状況に説明がない不安に苛立ちを覚える。不親切も甚だしい。
相手のペースに乗るのは何においても後手にまわる悪手ではあるが現状致し方なかった。
研ぎ澄ました緊張感はそのままにルシアは彼のペースに乗り黙って座ったまま待った。すると突然、
『なぁ、ルシア。暇だしゲームでもしないかい?』
━━━は?
そう言うと、未だ姿を現さないままの彼が十八番の指パッチン。と、同時にルシアの目の前に真っ白で巨大な爆煙が発生し立ち込める。
中から大きなブラウン管テレビとファミリーコンピューターが現れる・・・も、ルシアは勿論それが何か解らない。突然電源の入るテレビからブラウン管独特の静電気を帯びた磁波と、特徴的な砂嵐の音が発生する。
「━━━━━あああぁぁ!?」
初めて見るテレビに映った白黒砂嵐とザーっという音は勿論ルシアの理解の至るところではなく、驚いたルシアは椅子ごと後ろに派手にひっくり返った。拍子に後頭部を強く打ったが痛みどころかその衝撃すらも感じなかった。
━━━ふっ・・ふざけるな!なにが起こった!?
『あはははははは!あぁ!すまんルシアっ━━━ぷっ!』
ふざけた笑い声が何もないはずの空間で複雑にコダマする。
ルシアは転んだまま少しひんやりとした床に寝そべったままだ。体に溜まっていた熱は床へ抜け、次第に体と頭は緊張感を失い冷えていく。そんなルシアは
「これだけ聞かせてくれ・・・バドとリアは無事に逃げ切れたのか?見てたんだろ?」
彼が最初にルシアに放った言葉から自分が死んだことをとりあえず受け入れ、仲間の無事を祈るだけのルシアがいた。
『いいや・・・・彼等も死んだよ。』
先程までの緩い雰囲気の一切が消え失せ彼の言葉が冷たい空気と静かな時間を作った。
寝そべったままのルシアの目から頬を伝う大粒の涙がポツリポツリと幾つも落ちる。
━━━━俺のせいだ。・・・・俺のせいで皆まで?バドならリアを抱えてでもきっと逃げきってくれると信じていた。だが、ただ信じていただけで俺は逃げる時間すらも稼げず二人の命をこの手に握ったまま一緒に死んでしまったのか。
「・・・それなら、俺は今からどうなる?バドとリアはどうなる?」
彼は答えた。
『━━ゆっくり話そうではないか。なぁルシア!ファミリーコンピューターでもしないか?お気に入りのゲームがあるんだが?』
━━━━はぐらかしている・・・というよりは単純に話し相手を欲しているのか?この自分のペースを譲らないって感じ、子供の頃兄さんと話してるみたいでなんか懐かしいな・・・いい思い出って懐かしさじゃないけど・・・・な。
「ゲームというのは解らないが時間は無限にあるんだったか?ならゆっくり話そうか━━。」
ルシアは未だに姿を現さない彼の事を今はそれでもいいと思ってしまっていた。彼の兄に似た独特な雰囲気にあてられたのだろうか。そんな彼にルシアは興味を持ちしばらくの歓談を楽しむ事を望んでいた。
と、同時にルシアの容姿はみるみる子供の頃の姿へと戻っていた。
━━━━ははっ、ここはなんでもアリなんだな。まぁここに来てからわかったことは皆死んだ事と得体の知れない奴と二人だけだという事くらいだしな・・・・今さら何が起きても驚きもしないって。
「ところでこのゲームってのは面白いのか?フラフラ三人が歩いているだけだが・・・・???るしあ?ばど?りあ?この名前はなんだ?」
『これか?面白くはない、でもルシアの役には立つものかな?おっ!━━━━ほら敵が来たぞ?』
「あっ?どうするんだこれ・・・・、━━━━!?━━━━はっ?なん、だよこれ・・・おいっ!・・・お、まえ━━━━ふざけんなっ!出てきやがれぇぇえぇぇ!!!」
ルシアが血相を変えて立ち上がる。ここへ来て一番の怒りを見せた。
『・・・・いいからそのまま黙って戦えよルシア。来たぞ?《あのバケモノ》が・・・・・。』
ルシアが怒号するのも無理はなく、ゲームと呼ばれるモノの中で[るしあ、ばど、りあ]がバケモノと遭遇して戦闘となっていた。
『言ったろ?ルシアにとって役に立つものだと。戦うんだルシア。また大切なものを失うぞ?』
ただ淡々と喋る彼にルシアは殺意を覚える。だが今は目の前のゲームの中で起きている事から意識を逸らすことが出来ずにいた。ゲームが何かもわからないまま二度までも大切なものを失うことをルシアは許さなかった。
━━━どうすれば!・・・・はっ?!ヤバい、またみんな死ぬ・・・嫌だ!もう見たくない━━━━っ!
ルシアは訳のわからぬままにバケモノに殺られ二度目の死をもたらされてしまった。
『あぁ・・・・ルシアよ。死んでしまうとは情けない。』
「なんでっ━━なんで、こっ━━━こんなことをっ!・・・・」
『どうする?ルシア・・・諦めるか?』
「諦めるかだと?死んだら終わりだろうが!?━━━諦めるしかっ━━━━」
ルシアはうつむき黙り込んでしまう。自然の摂理。誰もが知る常識だ。だが彼は、
『諦めるのはいつでも出来る。今の君が望むまま、願う事を言ってみろ。』
先程までの様な冷たい印象の声とは打って変わりその声はルシアの心に優しく問いかけるようだった。
━━━俺の望むものだと?決まっている。
「バドとリア・・・・二人を助けたい。」
小声で呟くルシアに彼は━━━
『聞こえない・・・・・それでは願いは届かないなルシア。』
彼はルシアにもう一度問う。
「俺は二人を助けたい━━━っ!助けたいっ!だす━━けたかっただけなんだっ!!なんで二人とも死んで━━━俺のせいでっ!」
うつむいたままのルシアが頭を何度も床にぶつける。心の痛みよりも強い痛みを求めるように、何度も何度も・・・・・そのうちにルシアの額からは血が流れていた。
『ルシア、顔をあげてみろ。願いは聞き届けた。』
ルシアは彼の言うままに顔をあげてみる。
そこには「コンテニュー?はい。いいえ。」の二択が記されていた。
「これは━━━━ゲームをやり直せる・・・ということか?」
ルシアの顔は曇ったまま変わらない。のぞんだものはそんなことではなかった。
『━━━━君が求めてるのはゲームの中の二人ではない事くらいはわかってるよ。君は自分も仲間も守れず死んだ。そのまま諦めてしまうのは簡単だろう。だが何もせずに諦めるのはただの怠慢というものだ。この世界は一度諦めらたらもう二度と手に入らない物であふれているのだからな。』
その言葉を聞いた時、ルシアの中で改めて後悔の波が押し寄せて来ていた。
『━━━コンテニューを選べば、君も仲間二人も死んでいない時に戻ることができるとしたらどうする?』
思ってもみなかった選択肢を突きつけられたルシアは一瞬思考停止する。数秒経ったところで、
━━━はっ?戻れるのか・・・?理由が諦めが悪いからというのもないいまいち訳がわからない━━━が、断る理由などないっ!━━━━
「二人を助けたいっ!俺をもどし━━━━━」
ルシアが答えようと喉元まで来ていたところで、
『━━━ただしだっ!君も仲間も死んでしまう結末から逃れられるとは限らない。もう一度同じ絶望を繰り返すかもしれないが・・・・』
それでも尚ルシアの中では戻るの一択しか無かった。
「あのバケモノと殺り合う前に戻れるならば願ったり叶ったりだ・・・・二人を二度と死なせない。そのうえで俺も死なないっ!」
ルシアはそう言い放った。
ただ威勢のいい言葉を並べただけに聞こえるだろう。
だが、腹に大穴を空け、逃がしたつもりの二人まで死なせてしまった絶望を味わいながらもルシアは死なない死なせないと言い切った。
それは大切なものを背負う程に難しくなる。
だがルシアにとってバドとリアの二人の命が軽い事を意味するわけではなく、大切な二人の命を二度背負う事になる覚悟が本物でなければ到底運命など変えられはしないというルシアの決意表明だった。
『(ルシア強くなったのだな・・・それともこれも大樹君のおかげなのだろうか?)━━━ならばコンテニューを選び戻るといい。・・・・私としてはもう少し相手をして欲しかったものだがね。』
彼は少し寂しそうに呟いたが、
━━━本気で言っているならよく言えたものだ。・・・・二度と相手などしてたまるか。
ルシアはコンテニュー、はい。をさっさと選択してしまった。
『冷たいなルシアは・・・・。まぁいい、私から最後に一つだけ━━━━【魂に記憶は残らないが経験値は残る】つまり、一度死んだ経験が死を回避する何かの役に立つ事があるかもしれないということだ。あくまでその可能性があるだけに過ぎないがね。』
━━━魂に経験値・・・この経験が役に立つ━━━━か。
そんな事を考えていた時だった。ルシアの体全体から煙が噴き出しゆっくりと体が消えるように透明になっていく。
「・・・・戻り始めたのか?━━━よし、絶対二人を助ける・・・俺も生き残ってやる━━━必ずっ!」
拳を強く握り腹部を数回殴る。腹部の痛みを確かめて噛み締めるように見えた。
そうしてルシアは姿を消し時を遡っていった━━━━━。
「戻られてしまいましたわね。」
ルシアの消えた空間に女性の声が響く。その正体はアリシアだった。
『そうだねぇ。』
哀愁を漂わせる背中を見てアリシアが続けて問いかける。
「・・・・主様はなぜ姿を隠されていたのですか?」
アリシアはらしくない神に向かい問いかける。
『━━━━その答えは後々わかる。今はその時ではなかっただけなのだよ。・・・・それよりもアリシア、ルシアの運命が早くもレールを外れていたことに気づいたかい?』
「━━━はい。ルシア様の最期は王城地下にて━━━確かリリア様に刺されて・・・」
アリシアは辛うじて覚えていた内容を確かめるように答えた。
『そうだ。だが大樹君の魂を宿した今回のルシアは《グラーズに立ち向かった》そして死んだ。対して今までのルシアは《グラーズから逃げ生き延びた》。今回の結果は全滅。最悪のシナリオだったが大樹君はまたもや運命のレールから外れてみせた。驚いたよ・・・・』
それはルシアの呪われた運命に僅かな希望の光が見えた瞬間だった。
お読みいただき有り難うございます。
・・・といつも書きますが読んで下さった方は本当にいらっしゃるのか?とよく考えます。
もし読んで下さった方がいて、つまらねー!と思わせてしまっていたら申し訳ないなーなんてよく思います。
それでも書きたいから書いて、どうせなら読んでもらいたいなーと考えながら最初に戻ります。
無限ループですがそれがモチベーションになったりします。
よく分からない後書きとなりましたが、最後までお読みいただきまして有り難うございます。よければ最期までお付き合いください。