第2話 初めてのコンテニュー
ご覧いただきありがとうございます!
ペースは遅いし誤字脱字は多い、それでも書きたい一心で修正しながら毎週ペースでアップしております。
話はなかなか進みませんが1話毎に読んだ時ズッシリした読み応えを感じていただける様な話を目指して頑張ります!
良ければ0話から第2話までお読みいただけると嬉しいです。更に欲を言えば毎週是非よろしくお願いいたします。
━━━━━━バケモノの一撃で腹部に穴を開けられた俺はリアとバドの前で多量の血を辺りにぶちまけた。あの時の俺の顔を見上げたリアの目には、針の先のほどの希望の光りもさえも見えないといった絶望の色が見えた。
色が見えたといっても俺にはどこまでも深い闇にしか見えなかったのだが、そんな吸い込まれるような瞳をしたリアの顔が目に焼き付いて忘れられそうもない。なんて、これから俺は死ぬのに・・・。
リアの虚ろな瞳を見つめながら徐々に意識はなくなり目は開けているのか閉じていたのか、やがて何も見えなくなる。なにも見えない暗闇に一人ぼっちの感覚が寂しく、そんな時に命を諦めざるをえない俺が考えることは大切な仲間の無事だけだった。
━━━━━頼むから無事に、無事に逃げ切っていてくれ・・・・。他にあのバケモノはいなかったか?バケモノは奴だけでなく新種もいたら?
ルシアの中にはあの時の自分の選択ミスの『後悔』の感情が膨れ上がり、他の何もかもは初めから無かったかのように、溢れ返るほどに埋め尽くした。
そんな想いが何度も反復するうちに次第に何も考えられなくなっていく。
━━━━━これが死ぬってことか・・・・。━━━━━無事に逃げてくれるだろうか━━━。情けな━━━い最後━だ。あっけ━━━な━━━い━━━━━━な。
もう命が幾ばくもない事を、体が寒気も感じなくなってきた事から感じとる。そうして間もなく思考と意識はプツリと絶ち切れた。が、
「━━━━ア━━━━━ルシ━━━━━━━━シア!」
「(ルシア!聞いてるか!?)」
ルシアの肩を布団でも叩くかの様にバシバシ叩くバド。
「━━━━痛っ!」
バドのガタイで叩かれたこの肩の痛みの感じ━━━ヤバイ・・結構気を失っていたか?俺は今何をしていた・・・?
「(急にボヤッとしやがって!━━━んっだよアレッ!)」
バドがリアの腕を握りながら俺とリアに問う。
「(ちょっ!離してよっ!これヤバいって!━━━あんなのわたしだって初めて見たわよ!)」
リアは腕を振り払おうとするが、固く握られた手は離してくれそうもなかった。
「(バドっ!リアっ!━━━今は黙ってろっ!)」
バドとリアは両手で口を塞いだ。リアは握られていた腕を解放され、バドを睨み付ける。
ルシアは自分がボサッとしている間に窮地に立たされている事に気付き、右手で顔を覆うようにしてこの状況をどう切り抜けるか思考を巡らせる。それは初めて見るバケモノの向かう先に自分達が隠れていたからだ。
━━━━━あれ・・・?俺は奴を初めてみる?━━━んだよな。・・痛っ━━━━!?
何故か腹部がチクりと痛んだ。それに奴を見ると今まで感じたことの無い悪寒がする。
「(ヤバイよルシアっ!━━━ねぇってば!どうするの?!)」
リアが背中を掴んで離さない。
「(━━━なぁ、俺達あのバケモノ初めての見るよな?)」
嫌な予感が杞憂に過ぎないことを仲間に聞くことで確かめてみる。
「(いつまでボケてんのよっ!?)」
「(いつまでボケてんだよっ!?)」
同時にツッこまれた。
━━━━━━そうだ。とにかく今はこの現状をどうにかしなければっ!
奴はグラーズに似ている。グラーズの特性と有効な手段が奴に通用する可能性も考えられる。試してみる値値はあるが効かなければ万事休すか。だが他に策もない。
「(・・・・俺たちのよく知るグラーズは匂いと音に敏感だ。いつも狩るグラーズは複数で多方向から同時にかかれば対処できない。加えて急所は右脇から真横に40センチだが━━━それも通用するのか解らない━━━とにかく現状試せることはこれだけだ。いつものように俺が一瞬早く出る!それまでになんとか奴の左右に回って突撃の合図を待てっ!大丈夫、いつも通りやれば俺たちなら殺れるっ!)」
「(バドっ!お前の一撃に掛かってるからなっ!?頼むぞっ!)」
ルシアがバドの胸を軽く小突くと、
「(━━━━━リアも見てるぞバドっ!)」
もう一押しする。
「(!?━━━わかったよっ!リアは俺が守るっ!)」
━━━━━昔からバドは単純だった。
瞬間3人とも口を塞ぎ息を殺し、先程とはうって代わり彼等の目付きが命のやり取りを思わせるものに変わる。
バドとリアが森に同化するようにスッと姿を消す。奴はまだ遠く気づいていない。
ルシアも極限まで気配を絶ち殺気を抑える。時間にしたら20秒程だったが、そのたった20秒が神経を磨り減らしていく彼等にとっては凄まじく長く感じた。そしてなんとか二人は配置に着いた。
が、先程から何かを見逃しているような不安が募る。
━━━━━━っ!!なんだ!?それにさっきから腹がチクチク痛むっ。
それと同時に心拍と息が一気に上がっていった。
「(はぁっ!はぁはぁはぁっ!━━━ヤバイ?!嫌な予感しかしない!なんなんだよ!この違和感と腹部の痛みが強くなるこの感じ!)」
ルシアは理由の解らない嫌な予感のせいで尋常ではない量の汗を流していた。次第に顔色も悪くなる。
体調は最悪、だがルシアは自分に言い聞かせていく。自分が迷い、臆すればバドとリアの二人の命に関わる事を、二人の命を自分がが握っている事を。
━━━━━相手は一頭・・・だっ!手はず通り、いつも通り出来れば・・・はぁはぁっ!殺れるっ!
━━━━━???
「(?・・・・グラーズが、一頭???)」
違和感はこれなのか?
グラーズは群れを作り縄張りを作る。そして狩りに出るときは必ず二頭で行動する。俺達が目の前のバケモノをグラーズの進化系と仮定した。それなら奴は当然群れか、狩りのために二頭で行動している可能性が高い。なんですぐに気付かなかった!?
これが彼等にとって致命的なミスを意味していた。
━━━━━━と、いうことは・・・・今の風向きは?ははっ、・・・俺達が風上━━━。奴は風下・・・俺達は既に匂いで捕捉されていて俺達の方へ来ていたのか?だとしたら、《俺達は狩られる側》だったということになるっ━━━マズイっ!
リアとバドが奴の左右に回り込んでしまっていた。
「(リア、バド!逃げるぞっ!)」
ルシアは二人に退却の合図を送ろうとしたまさにその瞬間だった。何の前触れも無く今日一の強烈な腹部の痛みが雷の如く腹部から心臓へ走る。その痛みはルシアの意識を簡単に奪い去った。
「━━━━━━━━くっ!?」
だがそれもほんの一瞬だけで、次に目を開けた瞬間目の前の世界は全てが白黒の世界に変貌していた。
続けざまに金縛りにあったかのように全く動けない。
━━━━早く逃げにげないと!
不思議と意識ははっきりしていたのだが次の瞬間、リアが弓をバケモノに向け放っていた。
━━━俺は合図を送ってない!!何故だ?!
理由は目の前にあった。信じ難いことにもう一人の自分が合図を出し飛び出していたのだ。
━━━ちょっ!待てっ!!
普通ならば戸惑い正気ではいられないが、事態は一刻を争う場面でルシアは飛び出した自分自身に静止を呼び掛ける。
だが、勿論反応は無かった。
後は目の前で自分の分身の腹部に穴が空くまでただ見ていることしか出来なかった。バド、リアの悲痛の表情と突然起きた恐怖からの絶望に震える二人の体をルシアは見ていることしか出来ない。自分が不甲斐ないせいで、と悔やんでも悔やみきれないが最早後の祭だった。
目の前の自分に死が近づくのを、見ているルシアも感じとる。
腹部に走る衝撃の痛み、息が出来ない苦しさ、やがて痛みはなくなり体は冷えていくのをリンクして感じる、
━━━━━俺はこんな情けない死を迎えるのか?二人を残して?俺は死ねないんた・・・・
そう分身が死ぬであろうその瞬間だった。
《ルシアはバケモノに突撃する前の自分に戻っていた》
━━━━━━!?今の映像は一体・・・・白黒だった世界も今はカラフルだ。しかも動ける?まだ突撃もしてない?
ルシアはリアル過ぎた惨劇の映像を夢や幻などで片付ける事が到底出来なかった。そしてルシアはそれがこれから起こる事だと確信したのだった。
━━━━━━このままだと俺は必ず死ぬ・・・何故時間を遡ったのかは解らないがこれは二度と無いチャンスだっ!このまま東へ逃げられれば【カルラン】にたどり着ける!時間を稼ぎ対処することも可能になる!
ルシアは直ぐ様二人に退却の合図を送る。バドとリアの二人は合図を見て『???』。当然だ。
「━━━━━━はっ?何があったルシア・・」
突然の退却の合図に戸惑うが、彼等のルシアに対する信頼がルシアの意図を理解することより先に指示に従う事を優先する。
バケモノ二頭の位置を前もって確認していたルシアは退却方向を奴らを避けるように二人に指示、その後【カルラン】への退却を伝えた。
バドとリアが気配を消し【カルラン】へと《風上を避け回り込む》ように向かう。
「(よし!これで奴らも俺達の匂いを見失うはずだ。一先ずはさっき見た惨劇を回避出来ただろう。だがここからだ・・・・)」
ルシアは冷静さを取り戻し、退却中に現状からの更なる危険性の予測と対策を練る。
━━━━━━はぁはぁ、少なくともバケモノは二頭いたっ。加えてグラーズの特性から俺達は知らず知らずに奴らの縄張りへ踏み込んでいた可能性も十分にあるっ!
上手く森を抜け、グルリと迂回した三人がやがて合流した。
「はぁはぁはぁっ!━━━っ!ルシアっ?!急にどうしたのっ?」
リアの問いにバドもルシアの返答を待つ。
「理由は後で詳しくっ!今は俺達がうまく逃げ切れるかだっ!」
その頃森の中では・・・・
グラーズのバケモノがルシア達の痕跡を探し続けていた。しかもその数は50体弱にも上った・・・・・。それはルシアが描いた最悪の事態《縄張りの可能性》が的中していた事を意味していたのだった。
最後までお読みいただきましてありがとうございます。
すっ飛んだ展開でしたがいかがでしたでしょうか?もっとぶっ飛んだ話を書いていきたいなとおもっております。まだまだ続く割にアップが遅いですが是非ともお付き合い宜しくお願い致します。