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ユグの呼声《ヨビゴエ》  作者: 黄昏の罅
4/9

第4話:私と幼馴染み。そして神様。












「ユー!今日はあなたと同い年のお友達が遊びに来てくれたのよ!」





毎日魔法の練習をこっそりするようになって早1年。わたしは一歳になった。


そして、子供の出生率が低い村では珍しく私には同い年の子、幼馴染みになるかも知れない男の子がいるらしい。


お母さん、そんなに嬉しそうに言われても。私の精神年齢は百歳超なんですよ。赤ちゃんと遊んでもどうしても、自分が面倒を見てあげるような感覚になってしまうのですよ。

仕方が無い事なのです。仲良くキャッキャウフフとか出来ないんですよ。精神年齢の壁が……




「あー、うー!」


「うー?うぁ!」




……可愛かったんですよ!それに、地球では見たことのないおもちゃとかもあったから……決して幼児退行してる訳じゃない!


まぁ、身体に精神が引っ張られている感じはあるけども。一年経って昔よりも随分感情表現ができるようになった。意識的に動かさないと、動いてくれなかった表情筋も今では楽しくなれば自然に笑えるようになった。



自分の表情とは思えないくらい自由に感情表現ができるのは、それだけで楽しい。私の幼馴染み(になったらいいなー)はレキと言うらしい。私よりも半年早く生まれたから一応お兄さん?になるね、という事をお母さん達が話していた。



私にはお兄ちゃんがいるもん。現在4歳のお兄ちゃんは順調に爽やか度を増していき、近所のおばさま方に溺愛されている。

なんか、世渡り上手になりそうだなって思ったのは秘密だ。


でも、お兄ちゃんはいつもニコニコしてる。私はやっぱりたまに無表情というか、表情が完全に抜け落ちてしまうことがあるけど、お兄ちゃんはそんな事は無い。


いつも笑っていて、起こったところなんて見たことはない。泣いてるところはあるけどね。何度もこの人も転生者何じゃないかと疑った。だって、4歳で愛想笑いができるってそういうことでしょ?と思っていた。


でも、お兄ちゃんは本当に楽しくて笑っているようだったから驚いた。ただ話している事の何がそんなに楽しいのか。撫でられることの何がそんなに嬉しいのか。



相手が大好きな人なら分かる。だけど、初めてあった人や、ただ隣に住んでいると言うだけで話しかけてくるお隣さん。そんな人達にも笑顔を振りまく。


本当に、心の底から楽しそうにニコニコしているのだ。ある日の事だった。お兄ちゃんは私の頭をぽんぽんしながら言った。




「僕はね、騎士様になりたいんだ。ユーも家族も村の人達も全部守れるような強い騎士様に。」




これでなんで転生者じゃないの!?と思ったけど、この世界の子供は精神が熟すのが個人差はあるものの早いらしい。地球と比べてだから、この世界ではそれが普通。


きっと、村の貸本屋さんで騎士についての物語でも読んだんだろう。でも、何でいつも笑っているのかは分からないままだった。そうしたら、私は変な顔をしていたのだろうか。




「ふふ、ユーには少し難しいね。僕はね、守る人が増えて行くことが嬉しいんだ。僕に笑ってくれる人達がいるのが嬉しくてしょうがないんだ。」




価値観なんて人それぞれとはよく言ったものだ。全くその通りじゃないか。私には、元の人格があるからそのまま成長したけれど、何も無い、真っ白な状態からこの世界を見ていたら。


死と隣り合わせのこの世界に育ったら、守ろうと考えるのはおかしくないどころか、むしろ立派な考えなんだろうと。地球じゃ、そんな事言ったら頭のおかしい人扱いされる可能性だってあるもんね。


それか、痛ましいものを見る目で微笑まれそう。でも、そんな事を誇らしげに語る彼はお兄ちゃん、というより兄さんだなって思った。


大きくなったら、兄さんって呼ぼう。そして、兄̀さ̀ん̀ならその夢を叶えられるよ、きっと。そうやって思いながら笑ってみた。




「やっぱり、ユーは不思議だな。まるでこちらの話を理解して考えているみたいだ。まぁ、そんな訳はないか。まだ一歳になったばかりだもんな。まず、喋れるようになって、僕と沢山お話してね。」



取り敢えず兄さん直伝?のニコニコ笑いで誤魔化したけど、かなり焦った。両親は気がつく素振りなんて見ないから、前世について警戒すべきは兄さんなのかもしれないな……。

そんなことを考えていると、




「うー!あーう!」




多分、ユー、遊ぶ!的なことを言ったんだと思われる。可愛いなぁ。そう思って頭をポンポンしてあげてみる。そうすると、ゴキゲンになって、両手をあげてじゃれついて来た。



だから私も両手を広げてぎゅーっと抱きしめてみた。なんか、犬とかにする感覚で。でも、傍から見れば同い年の赤ん坊が2人でじゃれついている感じなんだね。一人で納得して頷いていると




「あら、大丈夫?クマができてるわよ?」




お母さんがレキ君のお母さんに心配気に話しかけていた。




「そうなのよ、うちのレキったら夜泣きが酷くてね。全然眠れないの。リサは元気そうね。ユーちゃんは夜泣きとかしないの?」



「ええ、それに意味もなく泣いたりすることもないから夜も良く眠れるのよ。昔は全然笑わなくて心配だったからお医者様に見せたこともあったんだけど、生まれてから表情筋が硬いだけだからしばらくすれば動くようになるって言われていたんだけど、その通りで安心したわ。

ユーもレキ君のことを好きみたいだから、1日くらいで良ければ預かるわよ。」





お母さん……ごめんなさい。あれ赤ちゃんの検査じゃなくて私の表情筋を心配していたんですね。寝ぼけてて何を話してるかよくわかんなかったんだよねー。


心の底から笑えるようになって良かったと心底思う。やっぱり心配させちゃってたみたいだし。そして、私がレキ君を好きなんじゃなくて、レキ君が私を好きなんだよ。


勘違いしないでよね。むーっと頬を膨らませてお母さん達の方を見ていたら、





「あら、怒ってるわ。ふふ、やっぱり女の子はおませさんなのかしら。」


「そうねぇ、夜匀様の夜と月を連想させる綺麗な髪と瞳の色をしているからきっとモテるわよ。王都に呼ばれちゃったりして。」




なんて話してる。やっぱり夜匀様はこの世界の神様なんだ。そして、夜と月を連想させるこの髪の色はおモテになる虹彩らしい。


うわっ、面倒くさいぞ!特に王都なんて!自分であちこち回るのはいいけど、呼ばれて行くなんて絶対にゴメンなんだから。





「あらあら、さらに拗ねちゃってー!可愛いわねぇ女の子は。」


「そうでしょう?でも男の子みたいに外で元気に遊んで狩りや畑を手伝ってくれるのもイイじゃないの。」




それからお母さん達の他愛の無い話は続いて、私とレキ君はずっと木のおもちゃで遊んでいた。レキ君に付き合ってあげていただけで決して楽しくなっちゃった訳じゃないんだから……。


それに、女の子だけど狩りとか畑仕事もお手伝いするもんね。だから、お母さん。私を捨てないでね?きっと前のお母さんとは違う。それは分かってる。だけど、やっぱり不安になっちゃうんだよ。





「あらどうしたの?寂しそうな顔をして。大丈夫よー。お母さんはここにいるからね。」




何の偶然か、お母さんは私の欲しい言葉をくれる。それにほっとして眠りにつく。思ったよりも疲れていたのかな。おやすみなさい。お母さん。














「……ー!…………グ……!」


誰かが私の名前を呼んでいる。誰だろう。でも、今はいい気持ちなの。もう少し寝かせて?




「まったく、ユグは相変わらずですね」




その声を聞いた瞬間私は飛び起きた。




「夜匀様!?」




聞き間違えるはずがない。夜匀様の声。





「お久し振りですね。ここはあなたの夢の中。ここなら落ち着いて話せるかと思いまして。」





さすが夜匀様。夢に入り込むくらいなんてことないんだろうな。





「はい。ご無沙汰しています。御迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。」



「気にしないでください。貴女のことですから、彼のことを思って身を引いたのでしょう?そして、東京で起こしたあれも私に最も負担が掛からない方法でしたしね。」





やっぱり夜匀様に隠し事はできない。私が選んだ方法。東京で起こした殺傷事件。



本来夜匀様が大きく関われない世界で私が思いっ切り力を解放して干渉したことで『何らかの方法で神を宿さずに』独立していた地球に関わるきっかけを作った。


神々の中でも地球が神を宿さないことは大きな問題になっていた。私が、夜匀様が加護を与えた人間が『神威封印』を解いたことの咎と地球への入り口を作ったことで相殺する。


そうすれば夜匀様は咎を負うことはない。それどころか地球には干渉されたことに怒る神もいないんだからむしろ手柄になる。


そうすることで夜匀様は格をさらに上げ、私も咎から免れた。ここまでが計算。咎から逃れるのは分かっていたけど流石に転生まで許させるのは予想外だったんだよな。





「私が君に話していたよりね、地球は完璧にその殻を、宇宙という名の外核を構成していた。


路を築いたユグと私には君が想定した以上の報奨が贈られた。私には神格の上昇。さらには裁定権、つまり私の干渉出来る範囲が大幅に広がった。


そして、ユグには『最も望む』こととされた記憶を保持した転生が約束された。裁定権が上がっても私には君がどこにいるか分からない。

あぁ、今頃になってしまったのは、地上に降りると使える能力は彼と同等くらいになってしまうからね。」




下がっても彼と同等って……さすがは夜匀様。





「そうそう、私の名前は夜匀では無いよ。それはあくまで呼称だからね。シグレ。ユグにはそう呼んでほしいな。」


「はい、シグレ様!」


「ふふ、随分と素直になったようですね。もう干渉することはないのかもしれませんが、貴方の幸せを願っていますよ。それではー」




「待って!!彼は、元気にしていますか!!」





叫んだその質問に、ゆっくりと微笑むとシグレ様は消えていってしまった。微笑んだってことは大丈夫なのかな?なら、良かった。また、夜匀様……シグレ様に会えるとは思っていなかったから嬉しかったな。


あぁ、今夜はよく眠れそうだなぁ。ってもう眠っていてこれは夢なんだったっけ。なんか、変な感じ。夢なのにそれを自覚していて、自由に動ける。



これが白昼夢というヤツなのだろうか。そう思うと次に目を向けたその場所、そこは、全体的に青と透明なクリスタルで構成された不思議な場所だった。


変な素材でできた本が沢山あって、浮いていたりかってにめくれていたりする。気になるので、取り敢えず手に取ってみた。



題名は『戦略級:メテオレイン』。



あ、これ魔導書だわ。おかしいな。私の記憶では使い捨てで魔法を簡単に覚えられる魔導書は下位魔法のものでも屋敷が一つ買える値段がすることもあるって聞いたことがあったんだけどな。


なんでこんなに沢山あるんだろうな。あるなら、いいよね?夢なんだし、いいよね?独り言を言いながら片っ端から魔導書に触れていく。頭に呪文と必要魔力のイメージが流れ込んでくる。


あと、使う時の感覚も。これは楽チンだな。うん、便利だ。しかも消えてないし。だから、やっぱり夢なんだろうなぁ。ざんねん。夢じゃなかったら堂々と彼の隣に立てるくらい強くなれたのになぁ。



あっ……彼はこの世界にはいなかったんだな。でも、彼と同じく理の魔法を使えるのは嬉しいから。


ふふふ、せっかくだから知識として仕入れておこう。










そうして時間をかけて全ての魔導書を読み取り終わって満足げに目覚めた私は、あの場所はシグレ様からのプレゼントだなんて知らずにしばらくを過ごす。

































アレが本物と気がつくのはまだまださきのお話のこと。

















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