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ユグの呼声《ヨビゴエ》  作者: 黄昏の罅
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第2話:輪廻転生の輪から飛び降りて

(。・ω・)ノどもども。読んでいただきありがとうございますm(*_ _)m









ぱちり、と目が覚めた。

寝坊したかな?と思って焦ったけど、そういえば今日は日曜日だったっけ。

もう一度寝ようかな。そんな事を考えながらぼーっと何も無い空間を見ていると、一気に意識が覚醒した。




そうだった。

私は彼との契約を切るために日本全土を巻き込んだ大犯罪を起こしたんだった。

死者はいないように狙ったけど、間違いなくたくさんの人の人生が狂っただろう。



じゃあ、ここはどこ?まさか、死ねなかったのだろうか。そして、死ねなかったことにどこかホッとしている自分に自己嫌悪に陥る。


彼の幸せを願うなんて言っておいて、私がまだ彼のそばにいられる事に心底安堵している。その事実。




やっぱり私の心は汚い。彼の隣に堂々と立てる存在じゃない。そんなことを考えながら、周りを見渡す。



あの瞬間に彼が何らかの方法で違う場所に転移したのかと思ったけど、違うみたい。

夜と月に愛された私だからこそよく分かる、とても濃い太陽の気配。


色々な神社なんかにも行ったことがあるけど、しっかりした神社からはかなりの気配を感じた。




それがまるで寒い日に口から出る白い息のように儚く脆いもののように感じるほど濃厚な気配。



こんな所が地球にあるのだろうか。これだけ濃ければ、世界の反対に居ても感知する自信がある。



なら、ここは地球じゃない?私はやっぱり死んだの?ここは死後の世界?地獄に準ずる悪なる場所?



だってこれだけの大犯罪を犯した私が普通の天國あまつくになんかに行けるはずはないんだしね。


というか、そもそもそんなの存在するの?ここが死後の世界なら今の私はどういう存在?彼との契約はどうなってるの?

一気に思考が溢れ出す。



こうなったら止まらない。一つ仮定して解決してはまた新しく浮かぶ疑問に自問自答を繰り返す。そうして1通り思考が終わるとゆっくりと顔を上げてみた。



誰も居なければなにもない。それなのにここでじっとしていても埒が明かないじゃないの。

取り敢えず探索してみよう。



血塗れのワンピースを浄化してボックスにしまう。ボックスとは容量無限の異次元ポケットみたいな感じのだ。ここでも使えるみたいでよかった。



ほかの能力も問題なく使えるみたいで安心した。あ、でも太陽の領域で対なる属性の夜匀様やひとさまからもらった能力が使えるということは。



もしかしたら、彼との契約は切れていなくて、魔力で守られているから影響を受けていないのかもしれない。


そう思って彼からの恩恵の能力を使ってみる。これは万物の流れを見る能力。でも、使えない。



どうにかして彼のバイパスを辿ろうとして気がつく。全く繋がっていない。どうやら本当に私は死んで、契約は破棄されたらしい。




そう。これでいい。これで彼は幸せになれるから。


そう思っているのに。それは、心からの願いなのに。



嘘じゃないけど、やっぱりどうしても寂しくて。これなら、我侭で彼を縛り続けていたらよかったと、耳元で私の汚い部分が囁く。




「ふっ、つぅ……ぅぁっ」




堪えきれなくなって涙が溢れ出す。だめだ、泣くな。私に泣く権利はない。お願い、止まって。



いやだ、だめ、泣いちゃダメ。



そうだよ、泣いちゃダメ。泣いたら、泣いていたら。



ま̀た̀、殴̀ら̀れ̀て̀し̀ま̀う̀。




嫌だ。痛いのは嫌だ。

お願いお母さん。許して。

いつもちゃんと笑っているから。


迷惑なんかかけないから。

新しいお父さんに腕にタバコを押し付けられても文句なんて言わないから。



お願いします、ここにいさせてください。


ここしか居場所は無いんです。


死にたくないの。

生きていたい。




あぁ、お腹が減った。


腕が痛い。

喉も乾いたし

視界がくらむ。





あぁ、本当に私の居場所はココしかないの?


ここは、本当に私の居場所なの?


もう、分かんないよ。


誰か、助けて。お願い。

誰でもいいから。独りで生きていかせて……






そして、意識を失う瞬間に




「大丈夫。必ず助けるよ」




そんな、優しい声が聞こえた気がした。聞き間違えでも何でもいい。

私にかけられた、私に向けた優しい言葉に心底安堵しながら意識を手放した。








そんな夢を見ていた。これは過去の記憶。にしても、やけに鮮明だったけど、私は本当に眠っていたのかな?




ずっと起きていて、まるで、ゲームをしているような感覚だった。

なのに、やけに鮮明な記憶を見ると感じてしまう。




だめだ、やっぱり大好きだ。




そして突然、頭が漠然と理解する。それは唐突で、何故か、なんて聞かれても理由何か知らないけど。誰かが昔教えてくれた事を今、たまたま思い出したみたいに。


どうやら、ここは転生の前の場所みたい。それを認識した瞬間、私は四角いプレートの上に立っていた。足元には村が見える。




飛び降りたらきっとあの村に住む誰かのお腹の中に入るのだろう。そして、私は輪廻転生の輪にのって赤ちゃんになり、また新たな生を生きるのだろう。


知らないことなのに、頭だけが認識してるってなんだか変な感じ。




でも、なかなか飛び降りる気になれない。ここから降りたらそこはもう彼から遠く離れた世界。

彼との、思い出も、記憶も、その気配も。何も無い世界。



きっと彼はもういい人を見つけているのだろう。

なんたって、かっこよくて優しくて強くて……もう、私だけの彼じゃなくなっちゃったんだけど。



ここにいればこの記憶を失わずに済むのだろうか。彼との時間を忘れずに済むのだろうか。

もう、私のものじゃなくなってしまったなら、せめて記憶の中だけは。



私だけの彼で、彼だけの私だった時の記憶は、絶対に忘れたくない。出会いも喧嘩も、変なことで怒って家出したことも。

彼との事は全部良い思い出になってるから。






何も知らない時は、この関係は永遠に続くものだと思っていたのに。


なんだか、嫌だな。ここは落ち着かない。彼の気配を思い出せば思い出すほど明確に他人のテリトリーという感じがしてどこか居心地が悪い。



それでも、彼との記憶が守れるならば、ここにいてもいいだろうか。ここから飛び降りてしまったら、すべて忘れてしまうのでしょう?そんなのは嫌だ。



だから、私はここにいる。突き落とされたなら、覚悟したかもしれない。なんたって、一度はしていたことなんだから。



でも、こうして考える、思い出す、愛しい時間を振り返る場を与えられてしまったらもう、わたしは耐えられないかもしれない。



神様、私が邪魔になったら問答無用で突き落として下さい。私は、もう自分から彼に関わるものを一つも失うような真似はできない。



ここにある、彼が私の隣に居た証拠を抱かせて死なせて。

私の死はこの記憶の喪失。でも、沢山の人に迷惑をかけてしまった自覚はもちろんある。


だから、転生は拒否するつもりは無い。でも、こうして選択肢が与えられている限りはここに居ます。我侭ですがごめんなさい。




下を見下ろすと、子供たちが駆け回っている。それを微笑ましく見る親と思われる女性。


母親は子供を見てあんなに優しそうに笑うことが出来るらしい。洗濯物を干すと、母親が手を洗濯物に向ける。


すると母親の手に気配が集まる。何かを唱えたように見えたら、洗濯物がふわりとして残っていた汚れが落ちた。



次の世界には魔法が有るらしい。それは、純粋に嬉しい。憧れもあるけど、一番は彼の力の大部分を占めるその力に触れることが出来る世界だから。


そう考えると転生も悪くないのかなって思えてきてしまう。あぁ、もう。さっきから彼の事ばっかり。すぐに切り替えられてしまうなんて。




大好きで大好きで、愛してるからこそ、幸せになって欲しい相手。




彼が関わるものならば、何だって愛しく感じれてしまうの。ほのぼのとした優しげな雰囲気の村を眺めていると心が暖かくなる。



決して埋まらない大きな穴はあるけど、それを補うために癒しを求めてる。





その瞬間、とてつもなく大きな気配を感じた。これは、夜匀神様の気配。





夜匀様はこの世界に繋がりがあるのだろうか。そもそも、夜匀様は人間に深く関わるのはめんどいからと言ってたまにしかしない。それこそ星の危機、とかの時にしか。



まぁ、夜匀様の司る二つの属性を強く持つ愛し子だった私は夜匀様にも随分と良くしてもらったんだけどね。


本当は今回のことも一言言いたかったけど、そうしたらきっと夜匀様は彼に話してしまう。だから言えなかった。




強い気配が星を多い、何かを探し出すように動いている。これだけ充満している今なら届くかな?





夜匀様、勝手に死んでごめんなさい。

それでも私は、私の為に苦しんでいる彼が私の我侭で縛られ続けるのは耐えられなかったの。


でも、離れた今、苦しくて苦しくて仕方が無いんです。

自業自得なのに。彼はとてつもなく強い悪魔なので私なんかよりも魅力的で素晴らしい契約者がもう見つかっていると思います。


どうか、お元気で。






届いていると願ってメッセージを紡いだ。すると気配は収束して消えていく。もしかして、わざわざ私のことを探してくれていたのだろうか。




私なんかの為にわざわざ世界を渡ってくれるなんて夜匀様も優しい人だ。あっ、だめだ。また泣けてくる。



なんか、涙腺が緩みっぱないだなぁ。はぁ。現実逃避もほどほどに。そろそろ決意しないと。




本当は最初からわかってるもん。




私がここにいるのは私に夜匀様の加護があるから。この星の太陽の神様は夜匀様よりも格が低いのだろう。だから、強い加護を持つ無下に扱えない。



これで太陽の領域で夜匀様の力が問題なく使える理由もわかった。もしかしたら、ここは夜匀様の管理世界の一つなのかもしれない。



基本的に放任主義の夜匀様はほかの神々よりも多い世界を同時に管理している。なのに、ほかのどの神よりも自由時間が長いという矛盾。



昔から干渉していることが少ないから、夜匀様の星の民は常日頃神に頼るということをしない。

存在は証明されているし、夜匀様は主神だけども彼らにより寄り添っているのは悪魔達や精霊だろう。



夜匀様の世界は夜と月がシンボルだから。

ここだけは夜匀様が必ずしている事。夜と月にきっと夜匀様は自分の司る属性ということ以外にも思い入れがあるんだろうなって何度も感じた。


まぁ、しかしこんな所まで迷惑かけてるなんて、もう本当に最悪だなぁ。こんなことして私の記憶が歪んでしまったら霊体に記憶が定着してしまったらどうするつもりなのだろう。



魂が歪んで意思を持たいない破壊兵器になってしまったらどうするつもりだったのだろう。

はぁ、私ってこんなにネガティブだったっけ?ヤンデレみたいな感じだったっけ?

やっぱり彼が隣にいないと自信なんて持てないな。



何処までも彼に依存しきっていたことを改めて自覚して苦笑してしまう。

むしろ、こうして離れないと私は究極の駄目人間になっていたかもしれないな。




いや、もう手遅れか。


自分で言う決意してやった癖に、今でもズルズルひきずってしまっているんだからね。はぁ、ともう一度ため息をついて重たい腰を上げる。



そして下にあるのどかな村を見下ろす。

大きい訳では無い。発展している訳でもない。


それでもここなら私が一番最初に失った、彼の手を取ることで手放したそれをもう一度得られる気がした。




いつか、彼から離れたことで出来た大きな心の穴も埋める事が出来るだろうか。

魂に刻まれたその穴は記憶を無くしても私に違和感として残るだろう。



そんなものを抱えていても優しくしてくれる家族がいいな。未来を夢見てからゆっくりと後ろを向いてお辞儀する。




長々とご迷惑お掛けしました。わざわざ私が決意するまで待ってくださりありがとうございます。




それでは、行ってきますね。




そうやって言うとトンっと軽く地面を蹴って飛び降りる。



今度こそ、優しい家族を持ちたいな。




そんな私の願いに私の苦手なはずの太陽の気配は優しく微笑んでくれた気がした。






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