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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
ジンセキ
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91.造るべき物

 シンがあの夢を見てから、もう5日目が入った。

 その日は「ショップ」や「自動開発」等の使用魔力量が元に戻る日だった。

 恐らく今後必要となるだろうと思われる物は「ショップ」から今日までに全て手に入れていた。

 そのせいで「収納スペース」(インベントリ)では収納されたアイテムの数がほぼ全てが数千種類以上となって、どこに何を入れたのかすら分からない程にまでになっていた。


「・・・・・・・・・」


 シンは「ショップ」を開いて。変化が一番わかりやすい物であろう駄菓子のコーナーに移動して、価格欄にある必要魔力量を覗いた。


(確かに100倍になっているな)


 確かに必要魔力量が100倍になっていた。一番安いはずの某有名な麩菓子が大凡8円程であるはずなのに800円程になっていた。


「・・・・・・・・・」


 シンは試しに駄菓子のコーナーにある水飴を買ってみた。


(価格表示の間違いであってほしかったな・・・)


 どうやら間違いなく必要魔力量は100倍になっていた。水飴を買った感想は間違いなくネガティブなものだった。これは当然だろう。だが、シンは対して驚く等のリアクションを起こさなかった。


(まぁ、これを見たら、もう驚けないんだけどな)


 シンの視線は表示された画面から自分の周りの様子に目を向けた。


「・・・ここまで発展するとはな」


 シンの足元にはコンクリートかアスファルトの地面があった。コンクリートかアスファルトの地面であるところであれば、中心にあるコンクリートで出来た格納庫のような建物を丈夫なフェンスで囲い込まれていた。

 周囲の施設以外であれば奥の方には飛行機やヘリ等の為の発着場や管制塔もあった。


「どうしてこうなった・・・」


 つい2日前まではいくつもある巨大なコンテナと物々しいキャンピングカーだったのに、今では一気に進み、ちょっとした軍事基地と化していた。


(もう既に対空兵器が備え付けているし・・・)


 よく見れば至る所に対空兵器等の迎撃システムが備え付けられている。離着陸場もそこそこある為、将来的に航空優勢となりうる兵器を造っていくのだろう。


「・・・・・・・・・」


 シンは誰かこちらに来る事に察知した。


「若~!」


 その声がする方へ振り向くシン。そこにいたのは優雅に手を振ってシンの方へ近づいて来るリーチェリカだった。

 リーチェリカを見たシンは心底では出た、と呟いていた。


「・・・今の進捗状況はどうなっているんだ?」


 シンが思っていた事はどうやらリーチェリカには悟られていない様だ。


「今、あの洞窟を掘って材料を確保しつつ、地下施設を建設しとります~」


 どうやらリーチェリカは地下に基地を建築しているようだ。


「規模はどれくらいになるんだ?」


「取敢えず~、地下1km程まで掘って~、大きい格納庫か倉庫を建設やろな~?」


「それなら可能な限り巨大な貯水施設を造って欲しいんだが?」


「何でそれが必要なん~?」


「この島の天候はやたら激しくてな、大雨で洪水一歩手間になる事があるんだ」


 シンがそう言うとリーチェリカは何か閃いたかのように両手をパンと鳴らすして手を合わせる。


「それやったら、あの離着陸場も改築する必要があるな~」


 それを聞いたシンは静かに頷き別の案件を口にする。


「それと・・・」


「どうかしたん~?」


「後方支援専用のA.Iをいくつか造っておこうと考えているんだ」


 それを聞いたリーチェリカはパアァ・・・!、と輝いた様な笑顔になって即座に提案する。


「ほな、それらはうちが改造~・・・」


「いや、それらの改造は俺がする。リーチェリカにはそれらのA.I達の格納庫などを造って欲しいんだ」


 声を挟み、これからしようとする事に反対に近い意見するシン。


「え~、何で改造したらあかんの~」


 それに対して頬を膨らませてブ~垂れた顔になって抗議するリーチェリカ。


「・・・改造を口実に調べようとするだろうが。お前が取り返しつかない位分解されたら困るんだよ」


 静かではあるものの、ギラリと鋭い目つきで牽制するかの様にリーチェリカを睨み付けるシン。


「え~、そないな事しいひんって~」


 嘘だ。

 明らかに嘘だ。

 その証拠にリーチェリカは動揺して目が少し泳いでいた。


「(お前A.Iだよな?そんな見え見えな動揺してどうする?)まぁ、取敢えず任せたぞ」


 アンドロイドでA.Iであるはずなのに動揺して目が泳いでいる事に心の中でそうツッコミを入れ、フ~と大きく溜息を付くシン。


「分かった~」


 リーチェリカはそう言って元来た方角に戻っていった。シンはリーチェリカが戻っていく様子を見送っていた。


(・・・またか)


 シンは誰かこちらに来る事に察知した。


「失礼します」


 するとまた後ろから声が掛かった。シンは声がする後ろへ振り向く。


「何だ?」


 今度は恭しく一礼するグーグス・ダーダだった。


「先程、頂いた数々の書籍を揃えさせておきました」


 身なりがキッチリと整えており、一礼をしていた上半身を起こし、恐ろしい程に正しい姿勢でシンと接する。


「ああ、ありがとう」


「いえいえ」


 シンはグーグスに書籍を一定の箇所に本屋の様にキッチリと揃えるように言っておいたのだ。グーグスはその作業が終わり、シンに報告したのだ。

 そんなやり取りをしているとシンはふと思い出した事を口にした。


「あ、そうだ、()()()()()進捗状況はどうだ?」


「はい、()調()でございます」


 リーチェリカといい、先程といい丁寧な受け答えで接するグーグス。


「そうか」


 シンはそう言って頷くとグーグスから恐る恐る進言する。


「それから私からのご要望を一つ叶えてくださいませんでしょうか?」


「何だ?」


「今後()()増えて参りますので、それ必要な数々の格納庫や装置部屋、可能な限り大きな洗濯機をご用意してくださいませんでしょうか?」


 今後、格納庫や何かしらの装置専用の部屋は取り付ける予定だ。いや寧ろ、早速作業に取り掛かっていると言ってもいい位だ。

 しかし気になるのはグーグスの言葉の「大きな洗濯機」。服を必要とするのはシンとリーチェリカ、グーグス。そこそこ服は居るが何故「大きな洗濯機」、それも複数も必要とするのかが分からなかった。


「格納庫とか装置部屋は分かるが、何故洗濯機?」


「私の服でございます」


「服?」


 シンがオウム返しに答えるとアカツキは両手を上に大きく掲げる。


「はい!服と私としての自身の次に大事な物!それが汚れてしまったままでは旦那様や他の方々にご迷惑でございます!」


 急に大きな声で熱弁を講じるグーグスにシンは少し圧倒される。


「それ故に何卒、何卒っ!お願い申し上げます!」


 グーグスはそこから一歩も動かなかった。それなのにグーグスの顔がシンの眼前まで迫ってきた様な圧倒する程の迫力にシンは後ずさるか否かの瀬戸際まで追い詰められたような気分に陥っていた。


「わ、分かった、分かった、用意する!」


 その言葉を聞いたグーグスは恭しく一礼する。


「ありがとうございます。旦那様から何かご要望はございますか?」


 口調も普段の丁寧な口調戻った。さっきのグーグスは何だったのか、一体何が引き金でああも口調が変わる程になるのか、とか思いつつも普段とほぼ変わらず接するシン。


「いや、これと言った物は無い。引き続き増やしていってくれ。お前が言った必要なモノは考えておくから」


「ありがとうございます。では私は失礼させて頂きます」


「ああ」


 恭しく一礼し、踵を返す。グーグスも少なくともリーチェリカから頼まれた仕事に戻る為その場を後にした。シンはグーグスがこの場から後にしていくのを見送った。


(何で俺の造るA.Iは、ああも人間臭いんだ?)


 少なくともシンが想像しているアンドロイド、A.Iは無機質でどこか冷めている。しかし、シンが造ったアカツキ、リーチェリカ、グーグス・ダーダは必ずどこか人間臭さが付き纏っていた。


(この調子だとこれから造るのもこうなるんだろうな)


 そう考え小さな溜息を鼻で着いた。


「まぁ別にいいんだがな・・・」


 シンはそう呟き、これから作る物の為の材料の調達に洞窟の方へ向かった。


 あれ程暗くて静かだった洞窟内は「ロータス」や一般的なスポットクーラー等の光や機械音のせいで騒々しかった。その近くに()()()()がそれぞれの「ロータス」の様子を見ていた。


()()()()()()


 シンは冗談めかすように言った。


「はい、()()()()でございます」


 それに対し、グーグスは変わらず丁寧な対応をする。


「悪いんだがこれから作る物の為にかなりの材料を貰いに来たんだが、いいか?」


「それはどの位かによりますか?」


「あ~、そうだな・・・」


 シンは「収納スペース」からペンとメモを取り出した。


(壊れるのが嫌だから、「収納スペース」(インベントリ)に入れていたが、ペンとメモを取り出すのに一々取り出すのは面倒だな・・・。「自動開発」で丈夫なペンとメモに作り変えるか・・・)


 そんな事を考えつつも必要な複数の材料と数量が書かれたメモを千切ってグーグスに見せる。グーグスはそのメモに無言で目を通す。


「・・・・・・・・・・・・」


「どうだ?問題あるか?」


 シンがそう尋ねると頭を軽く横に振った。


「いえいえ、これ位でしたら問題ございませんでしょう」


「そうか」


「どうぞ、好きなだけ取りください」


 グーグスは改良された「ロータス」のマテリアルとなった物質があるドアを開ける。シンは静かに頷き、「収納スペース」を開いて必要な物質を数量分入れていった。



 必要なマテリアルを「収納スペース」(インベントリ)に入れたシンはそっと「ロータス」のドアを閉じる。

 その様子を見ていたグーグスは声を掛ける。


「他に何かございますか?」


「いや、もうない。作業の方を進めてくれ」


「畏まりました」


 恭しく一礼するグーグス。シンはそれを見てそっと元来た道へと戻っていった。

 それを見送ったグーグスはシンが扱った「ロータス」とは別の「ロータス」に近付き、()()マテリアルが出来るドアを開けた。


「182・・・」


 グーグスは謎の数字を呟き、「ロータス」の中から取り出したのは赤い箱・・・グーグスの頭部だった。



 シンは洞窟からだいぶ離れた例の小規模の軍事基地の離着陸場にいた。


「何から先に作ろうかな・・・」


 一言に後方支援と言っても様々な役目がある。整備、回収、補給、輸送、情報、備蓄管理、支援砲火等々がある。

 今は備蓄管理、整備、補給、輸送、を整えていっている。現状欲しいのは情報と支援砲火だ。


(「情報」はグーグスでも十分いける可能性が高い。という事は支援砲火システムか?)


 シンは現状の事を鑑みて今造るべきなのは支援砲火システムと判断した。「自動開発」を開く。


(え~と、オリジナルの戦車、戦闘機、潜水艦、空母、揚陸艇、強襲揚陸艦・・・)


 シンは複数の欲しい兵器を造り始めた。これから造ろうとしている兵器はどれもこれも、自立して移動や戦闘ができるようにA.Iを搭載しており、搭載兵器も充実させている。


(あ、あと、ペンとメモ、あのヘリを改造・・・と)


 ペンとメモは予め必要な事を書いておけば相手に伝える時に時間をあまりとらせずに済む事が多い。その為ペンとメモを使う機会は多かった。一々「収納スペース」(インベントリ)から取り出すのは普段使うに当たっては面倒だろうし、時間もかかる。

 だが、戦闘等の激しい運動するシンに普通のペンとメモはあっと言う間にお釈迦になってしまうだろう。

 そこでペンとメモを丈夫な物に改造する事にした。

 また、ヘリ自体はあまり問題無い。だが、あまり速度が出ない。そこで飛行機の様に飛ばす事ができる様に改造を施す事にした。


(最後は爆発物だけど・・・)


 ミサイルや爆弾の様な爆発物を造る事も考えていた。

 それに当たりある重要な問題がある。


「・・・大量破壊兵器」


 そう核兵器、生物兵器、化学兵器、放射能兵器と言った一つで多大な被害を与え、最悪人類を一気に死滅させる大量破壊兵器を造るか否かの問題にぶち当たっていた。


(後遺症が残るのは当然アウトだよな・・・)


 攻撃を指定した場所で破壊した後に自分や味方に被害が及んでしまうのはおおきな問題だ。

 放射性降下物(フォールアウト)が起きてしまう為、まず核兵器は完全にアウト。

 次に放射能兵器だが、放射性物質の散布による破壊や負傷を引き起こす事を意図して設計された、核爆発を起こさない兵器の事だ。これも放射性降下物(フォールアウト)等が起きてしまう。その為しばしば汚い爆弾と呼ばれる。

 生物兵器はこの世界の生物事情も知らない上に、気候等の関係でどれ位の被害が及ぶのか不明の為これも除外。

 残るは化学兵器だが、この世界の物質の事情があまり分からない。どれとどれを合成して有効なのか危険なのか等のイロハのイの字も知らない。これもダメだろう。

 色々考えてみるも、どれもこれもが余りにもダメな物ばかりだ。


「そう考えるとこの4つが現実にあるって本当に怖いな」


 どれもこれもが敵はおろか味方にすら大きな被害を齎し、最悪の場合は滅亡の一途をたどる事になる。

 敵に壊滅的な被害を齎して、自分達は安全なそんな理想的な兵器。


「「きれいな水爆」・・・もアウトだな」


「きれいな水爆」事、「純粋水素爆弾」と言う物がある。それは起爆剤である核物質を一切使わない為、残留放射能が()()()利点がある。

 実用化されている水素爆弾は、重水素と三重水素の核融合反応を誘発する際に、核分裂反応(プライマリ)核融合反応(セカンダリ)の2段階を踏む。

 だが、純粋水爆の場合は核融合反応の1段階のみで済む。純粋水爆の重量は約3トンで、TNT約3トンの威力になると予想される。提案された設計では、核融合反応の発生に必要な条件を満たす為に大型の磁気濃縮型爆薬発電機を使用する。

 しかし、これは重水素の()()()()を利用した方法である為、結局放射性降下物(フォールアウト)はどんなに少なくとも必ず出てくる。


「・・・他にないのか?」


 シンがここまで大量破壊兵器を作る事に対して関心があったのは理由がある。この世界での武力は数だ。数に勝るのはこういった大量破壊兵器による攻撃以外の方法がないからだ。

 実はアカツキに例の4つ以外のオリジナルの大量破壊兵器を取り付けている。

 だが、アカツキは飽く迄も本当に()()()()()()として使いたかった。可能な限り別の切り札として欲しいのは4つ以外の大量破壊兵器だった。


「・・・取敢えずこれは後回しにするか」


 どんなに考えても思いつくものは出てこない。仕様がないと溜息を深くつき、「自動開発」の画面を閉じてその場を後にした。


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