90. 由来
2日連続投稿させていただきます。
取敢えず書いた!・・・と言うモノですのでおかしな箇所があると思います。
アカツキの改造とリーチェリカの製造を行ってから2日経った今日。
当然アカツキは遥か空の彼方へと消えて、定位置について空からの監視をしていた。
LPを渡した後、シンが嵐から避難したあの洞窟は改良した「ロータス」をシンが設置した。すると、リーチェリカは「ロータス」を利用してさらに改良した「ロータス」を造った。更にシンが「ショップ」で今まで買ってきた物、全てを渡す様に言われてシンはその通りにした。
それからはリーチェリカのやりたいように開発してきた。
まず、現状では「ロータス」が3台もある。しかも、全てリーチェリカが全て改良した物ばかりだ。当然それらは洞窟の中にある。
洞窟の前には軍用のキャンプが張られてその中心には修復されて更に改造を施された例の黒いキャンピングカーがあった。
見た目が黒い観光バスの外見から完全に黒いHEMTT(アメリカ軍が運用する8輪重高機動戦術トラック)で荷台が列車の客車の様な形になっていた。そのせいでより一層物々しいキャンピングカーとなった。
そのキャンピングカーの周りには複数の巨大なコンテナがあった。キャンピングカー位なら通れるように等間隔に空けられていた。コンテナの中にはシンが買った生活必需品や武器、食料があった。その内の一つのコンテナの中にはシンが買った書物が所狭しとあり、その本の壁に囲まれて読書に耽っているのがリーチェリカだった。
「・・・・・・・・・・」
そんな黙々と読書に耽っていたリーチェリカにある者が近付いて来る。
「失礼します」
白い手袋に白いワイシャツ。赤いネクタイに黒いスーツ姿。2mもある大柄な体格。頭部は金属製の立方体の赤い箱。6面全てに観音開きの取っ手の無い蓋が付いていた。
そんな大男が本を持ってリーチェリカの側に立っていた。
「リーチェリカ様、ご所望されていた本をここに持って参りました」
礼儀正しく丁寧で機械の様な規則性を窺わせる男の声。その声に対してリーチェリカは素直にお礼を言う。
「おおきに~、グーグスはん~」
リーチェリカはそう言ってグーグスという男から手渡された本を受け取る。
「いえいえ」
元々グーグス・ダーダは「ブレンドウォーズ」のハロウィン限定のミッションのボスキャラで「ドイツで“収納スペース”をベースにした空間移動魔法と分身を工場生産を可能にして、魔法と現代兵器を融合させた人型兵器」という設定だ。ドイツのある地方の洋館にいる。元々は手には片方には刃、もう片方には多くの棘のついた大斧を持っていた。
因みに「ブレンドウォーズ」での攻略方法は館内にある全てのグーグス・ダーダの頭部を館に仕掛けられた巨大な「落とし穴」に落とせばミッションクリアとなる。
「他に何か必要なモノはございますか?」
「う~ん、今の所は特にあらしまへん~」
グーグス・ダーダの存在理由は人手だ。リーチェリカは開発や資源の入手の為の人手が欲しいと言われ、シンは「グーグス・ダーダ」を開発した。
一旦改造された「グーグス・ダーダ」を造り、更にリーチェリカが改良を加える。それにより、より良いプロトタイプのグーグス・ダーダが造られてそれを大量に生産する。
「承知致しました。また何かございましたらお呼びください」
「おおきにな~」
グーグス・ダーダはそう言ってそのまま立ち去った。リーチェリカはニッコリと笑いながら手をヒラヒラと振って見送った。
リーチェリカとグーグス・ダーダが外にいるにも拘らず、その場にシンの姿は無かった。そのシンはというと洞窟にいた。洞窟の奥で「魔力吸収」で魔力の補充を行っていた。
「・・・・・」
今から1日前の事。残り魔力量で「ショップ」手に入れていなかった商品を残り全ての魔力量で買った。子供の玩具や女性の生理用品等、明らかに今後に必要なさそうな物すらも買い占めてしまったのだ。その為残り魔力量はほとんど残っていなかった。
何故こんなにも買い込んだのか、原因はリーチェリカにあった。今のリーチェリカは生まれてこの方知っている知識は「ブレンドウォーズ」の基本的な科学知識や魔法、現実にある知識と技術しかなかった。今見えているほぼ全てが見た事も無いモノばかりなのだ。その為、ヒントとなる様なモノとして子供の玩具や女性の生理用品等々をシンに買う様に頼んだのだ。そしてシンはそれをアッサリ頷いて残り全ての魔力量で買ったのだ。
今は洞窟の奥で湧き出る魔力を「魔力吸収」によって手に入れている。ある程度溜めたら「ショップ」でまだ買っていない何かを買う。魔力が無くなれば吸収してある程度溜めたら「ショップ」・・・という作業を繰り返している。
シンがそう集中して「魔力吸収」をしていると声が掛かった。
「ボス、今いいか?」
声を掛けたのはアカツキだった。シンは作業を止めた。
「ああ、いいぞ。何だ?」
「前に言っていたこの島の名前の事なんだが、その「ジンセキ」ってのは、どういう意味だ?」
「ああ、それはな・・・」
シンは右手の人差し指を「BBP」で細く鋭い棒状にして地面に文字を書いた。
「漢字で書けば「晨夕」だ」
地面には漢字で「晨夕」と書かれていた。シンはワークキャップにあるカメラを書かれた地面の方へ向けた。
「「晨夕」・・・もしかして「薄明」の事か?」
「そうだ」
薄明とは日の出のすぐ前、日の入りのすぐ後の、空が薄明るい時の事である。大気中の塵による光の散乱により発生する。英語のトワイライトも薄明の事である。
「何故「薄明」何だ?」
名前の意味こそ分かったが何故こんな名前にしたのかについてアカツキは尋ねる。
「この島の朝と夕方の景色を見て思い付いただけだ」
「それだけなのか?」
「いや、それだけじゃないな。日の出の様に始まり、日の入りの様に終わる。それを0から始まり、0に終わる。そして、また新しく0から・・・と言う形で、全て生死に繋がる様にと共に初心を忘れるべからずっていう意味でこの名前にした」
シンの拙い説明にアカツキは何となくではあるものの理解ができた。
「OK、何となくだが分かったぜ。俺も今後、この島の事を「ジンセキ」と呼ぶ」
「ああ」
アカツキは、「ジンセキ」という名前でふと思い出した事があった。
(そう言えば前の世界でも最も早く日の出が見られるのってカロリン島だったな・・・。位置としてはカロリン島じゃないし、その位置に島もないがここが最も早く日の出と日の入りが見れる場所なんだよな・・・)
設定上「ブレンドウォーズ」の地球は、現実の地球をベースとなっている。その為国名や地名も変わらず、変動する気候も完全に地球と一致している。その為カロリン島が世界一早く、日の出が見られる事をアカツキは知っていた。
アカツキがそんな事を思い出している時、シンは「魔力吸収」の作業を再開していた。
「それにしても、リーチェリカは早いな・・・」
「ああ、俺もあそこまでとは思わなかった」
リーチェリカによるこの島の文明の発展がたった3日ともう少し時間が過ぎれば小規模の町レベルに入る位にまで発展している。
「普通、対空迎撃装置を3日で揃えるってどうなんだ?」
「最近じゃ、アカツキみたいな戦車とか戦闘機を作る気でいるみたいだしな」
「マジか・・・」
確かに、後方支援が欲しいのは欲しい。だが、ここまで早く発展するとは思っても見なかった。
「ボス、まさかとは思うが、島全部をコンクリートの塊にする気か?」
「いや、それは流石にしない。ただ、地上の5分の1と、地下を5分の3、海域の7分の3は俺達の好きなようにしようという事にしている」
島全体を要塞化すればどんなに離れていても遠目で見れば流石に目立つ。これだけ早いと規模が要塞はおろか一国家レベルまで大きくなるのは最早、時間の問題だろう。見極めるのが遅れたとしてもせめて要塞レベルまでに留めたい。何としても早く見極めなければならない。
「・・・聞くと見る限りではかなり規模がでかいと思うんだが?」
「・・・リーチェリカと話し合った結果がこれなんだよ」
「Oh…」
恐らくここまで規模がでかくなった要因はやはりリーチェリカだろう。もしリーチェリカがこのジンセキを要塞化する事を考えていたとすれば、リーチェリカの欲の底が見えない。
アカツキはそこまでイメージすると思わずアルファベットで声を漏らす。
「まぁ、実際俺達が作ってんのは軍事施設が多いしな」
「・・・確かに。軍事施設の様な物以外を作る気でいるのか?」
「ああ、水道施設とか農業関連の施設、海上にプラントとかもあってもいいかなと考えている」
「・・・最早国家レベルだな」
呆れた様に答えるアカツキにシンは小さな溜息を付いて答える。
「だが、相手は数の暴力を使う可能性も否定できないからな。だったらこっちも数の暴力で対抗するつもりだ」
「まぁ、そうすれば武力面では問題ないだろうが・・・」
「問題はそれ以外の面だな」
シンが言うそれ以外の面の問題。それはいくつもある。今大きな問題となっているのが資材等の必要なとなる材料の鉱石や物質の調達、自分達の経済発展等に関わる交渉等だ。
「・・・これも人手がいるか」
「唯一人型のリーチェリカが交渉が上手いとは思えないもんな」
「手玉に取られるだろうな」
リーチェリカにとってこの世界全てが未知で非常に興味深い物ばかり。前の世界では珍しくとも、この世界においてはメジャーな物であれば足元を見られて買い叩かれるか、安く売るように誘導される事だってあり得る。
「それか相手の交渉人を実験台にするか」
「ああ・・・あり得るな」
正直な所、これが最も可能性が高い。無論こんな事をすれば相手との亀裂が大きく入って当然泥沼の戦闘になる可能性が高い。
「ん~?何の話をしてるん~?」
シンとアカツキがそんな話をしていると丁度リーチェリカが洞窟の中に入ってきた。
「何でもない。それよりも材料とかで何か足りない物とかないか?」
シンはごく自然に、且つ急いで別の話題にすり替える。
「ん~あまりあらへんな~」
首を横に振るリーチェリカ。
「そうか?鉄とかプラスチックとか加工しなければ手に入らない物とかあるだろう?」
「いけるよ~。その辺適当に掘っとったらなんかしら手に入るし~。それよりも新しい装置について相談があるんやけど~」
「何だ?」
「伐採用、建設用、工業用の装置か機械のなんぼか必要なんやけど、造ってもええ?」
「造る?・・・もしかして「ロータス」を改良した新しいのを造ったのか?」
「そや~複雑な電子やらも作れるようになったんやで~」
新しい何かを開発するべくして既に新しい「ロータス」はシンが知っている「ロータス」ではなくなった。早い事の進み具合によりシンは取敢えず返事をするが明らかに生返事に近い返事しか出きなかった。
「・・・そうか」
「それで造ってもええ~?」
リーチェリカはそんな返事の仕方に対して気にも留めず、新しい機械や装置を開発していいかどうかが重要な案件な為、ゆったりとした口調で許可を求めていた。
「あ、ああ、いいぞ」
「ほな、早速造ってくるな~」
ゆったりとした口調に似合わず、ぐいぐい押し込む様に詰めかけるリーチェリカにシンは若干流されるように頷いてしまった。
シンが頷いた事を確認したリーチェリカはルンルン気分で洞窟から出て行った。その様子を見ていたシンとアカツキ。
「見た目は可愛いんだけどアンドロイドなんだよな・・・」
「ああ、お陰様で更に発展しそうだ」
「どれだけ発展できるんだろうな」
リーチェリカはアンドロイドだ。つまりエネルギーさえ途絶えなければズッと稼働し続ける。この島、「ジンセキ」の異様なまでに早く発展したのはリーチェリカが人間、生物の様に疲れたら休むという事をしなかったからだ。
またリーチェリカをサポートしているグーグス・ダーダもアンドロイドだ。こちらも休みなくサポートしている為、異様な発展の早さの一因でもある。
そんな事を考えているとアカツキはポツリと呆れた様な呟きを零す。
「少なくともリーチェリカは自然を冒涜しすぎて大きく痛い目に見るタイプだという事だけは間違いないな」
その呟きを拾ったのは当然シン。
「まぁ、自然破壊の象徴の様な物を求めていたしな」
リーチェリカが言う「伐採用、建設用、工業用の装置か機械」は言うまでも無くパワーショベルやベルトコンベア等々の事だ。どれもこれもが自然にある物を開発によって破壊させるものばかりだ。
リーチェリカによるジンセキの開発に増々拍車が掛かる。
「ボス・・・」
「ん?」
「何かこう・・・ジンセキの発展を見てみたい気もするが、何かこう怖いというか・・・」
「「怖いもの見たさ」か?」
「ああ、多分それだ」
「奇遇だな、俺もだよ」
シンとアカツキが持つの「怖いもの見たさ」。どんな結果になるのかと大きな好奇心と僅かな恐怖が生まれてくる。
しかし、リーチェリカが発展するジンセキがどれだけの影響を与えるのか、この時は誰も知らなかった。