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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
ジンセキ
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88.一人の一日

最近なって一行空欄をあける方法を知りました。ここしばらくの間、急に改稿のラッシュが続いたのは単に一行をあけただけです。ですので文章そのもの自体に改稿したわけではありません。

何か特別何かしたと期待された方々には申し訳ありませんでした。もし何かありましたらご連絡ください。

 朝の日の出を見終わり、洞窟に戻り朝食にシシ肉の串焼きを食べたシン。串焼きを食べ終えたシンは串を「収納スペース」(インベントリ)にいれて、そのまま洞窟の外へ出て行った。


「アカツキ、突然で悪いんだが、すぐに降りて来てくれ」


「マジで唐突だな・・・。それは何故なんだ?」


「実は・・・」


 シンは夢でノルンと出会った事、以前あった事、そして自分とノルンとの関係を全て話した。その話をアカツキは黙々と聞いていた。


「ちょっと信じられない話だが・・・」


「まぁ・・・大体分かったよ」


 何とも曖昧な答え方をするアカツキ。当然と言えば当然だろう。シンの話で信じろという方がおかしいだろう。しかしこの世界は魔法が存在する。だから、決してあり得なくない話と判断してもおかしくなかった。

 それ故かアカツキはシンの話は半信半疑で聞いていた。

 シンも何となくアカツキが半信半疑で聞いている事が分かりつつも取敢えず、そのまま最後まで話す。


「それでアカツキに燃料を補給するよりもアカツキそのものを改造するつもりだ」


「ん~・・・まぁ確かに、場所も取るし色々面倒だしな。・・・俺の方を改造した方が良いか」


「だろ?」


 シンは真上を向き、空を見上げた。


「そういう訳で、お前をすぐに改造する」


「・・・OKボス、一旦ボスの元まで降下を開始する」


 アカツキがそう宣言して数分経った頃。上を向いていたシンは空に浮かぶ小さな黒い点を見つけた。


「アカツキ、お前の姿を視認できたぞ」


「OK、これよりスピードを落として降下する」


「了解、俺は7時の方向に少し避ける。そのまま降下してくれ」


「OKボス」


 シンはそのまま7時の方角へ歩いていった。すると何か聞こえてきた。


 キィィィィィン…-


 それは徐々に大きくなっていった。その音はジェット機のエンジンのような音だった。


 キィィィィイイイイイイイイイイイイイイイ…-


 大きな音になっていき、ゆっくりと空中に固定したままスライドするかのようにアカツキが下りてきた。


「久しぶりだな、ボス」


「ああ、久しぶりだ」


 こうして本体を対面するのは何か月ぶりだろう・・・。アカツキ本体にある複数のカメラがシンの方へ向き捉えていた。


「じゃあ早速・・・」


「頼んだぜ、ボス」


 シンはアカツキに必要な機能を考えて「自動開発」に入れた。すると画面表示が現れた。「これを改造しますか?YES NO?」とあり、シンは迷わずYESを選択した。

 シンはアカツキがいつできるのか期限を見ていた。


「・・・次に会う時は次の日か」


 小さな溜息を付きそっと画面を閉じる。


「何をするかな・・・」


 今日一日の事について考えるシン。


(そう言えば、「ロータス」に入れる材料ってこの世界の物なんだよな)


 この世界は魔法がある。という事はシンがいた世界、「ブレンドウォーズ」の世界とは全く違う物質があってもおかしくはない。


(それを解析、開発を任せられる()()が必要だな)


 シンの「自動開発」には物を作る事は可能だが、食品や薬品は作る事は出来ない。その為シンは後方支援システムを構築するには、まず「ロータス」の様な物を開発できる装置が必要と考えた。

 また、この世界の特有の物質を調べる為の研究機関や薬品製造機関等々に関わる()()も必要だった。


「・・・・・・・」


 シンは徐に「ショップ」を開いて書籍のカテゴリーを開いた。


「ここにもあるんだな・・・」


 そう呟きその視線の先にあるのは1冊の本。その本のタイトルは「ブレンドウォーズ 公式設(パーフェクト)定資料集(ガイドブック)」とあった。


「・・・・・」


 その本は大雑把に言えば「娯楽」の様な物だった。今後に役に立つ本かと問われれば到底頭を縦に振る事が無い本だった。だが、シンは何の躊躇いも無くその本を購入した。

 シンは購入した本を「ショップ」から手に取り、本を開いた。


「え~と・・・」


 シンは本をパラパラと開いて、あるページを探していた。すると流す様にパラパラとめくっていた中あるページに目に留まった。


「・・・あった」


 そのページにはある女性が描かれていた。ページの上には「リーチェリカ」とあった。

 その女性・・・正確には14~5歳程の少女の姿。綺麗な黒に近い灰色の長髪。眉毛より少し上の所で均等に切りそろえられた前髪に、優雅で、それでいておっとりとした可愛らしい顔に、ややタレ目気味の優しい雰囲気が出る目には同じく黒に近い灰色の瞳。第一ボタンを外した白いワイシャツに、ワインレッドのクロップドパンツ。白いサンダルを履き、病院で見かける様な白衣を着て、いかにも科学者のような格好だった。


「こいつには苦労させられたな~・・・」


 シンが見ていたページはD(ダウン)L(ロード)C(コンテンツ)のエネミーボスの設定資料だった。様々なボスが描かれている中シンはリーチェリカのページを見ていた。

 シンが見ていた科学者風の少女、「リーチェリカ」。

 設定では「ブレンドウォーズ」の世界では京都のある地下の研究機関を担っており、人間とアンドロイドの交配実験を阻止するミッションのボスだった。彼女はアンドロイドで非常に高い観察力と分析力を持ち、長期戦になれば確実に勝てない様に設定されていた。

 因みに「リーチェリカ」というのはイタリア語で「探求」或いは「研究」という意味だ。

 シンの考えはリーチェリカを改造と共に一から作ろうとしていた。


「取敢えずこいつが先だな」


 シンがリーチェリカを最初に作ろうとしていたのには理由があった。

 まず彼女には非常に高い観察力と分析力があった。また、今後何が必要なのかについても瞬時に判断する情報処理能力も非常に高いのだ。

 その為、今後必要になってくるモノ(アイテム)を開発するに当たって非常に有難い能力なのだ。

 あらゆる物を開発、物質の解析、情報処理ができる者はリーチェリカしかいない、とシンはそう考えた。


「・・・・・」


 シンは「自動開発」でリーチェリカを開発と改造を施し、例の「これを開発しますか? YES NO」と出た。シンは迷う事も無く「YES」を選択した。


「ふ~ん・・・リーチェリカも明日にはできるのか、意外と早いな・・・」


 そう言って画面を閉じた。


「そう言えば、「自動開発」(これ)ってこんなSFの様な物でも作れるんだな・・・」


 アカツキやリーチェリカはシンの世界ではとてもでは無いが作る事ができない代物だ。そればかりか、リーチェリカに至っては「ブレンドウォーズ」よりもさらに性能と新機能を追加して明日という短期間で出来るのだ。如何に「自動開発」の優秀さを改めて思い知った。


「次は何をするか・・・」


 アカツキとリーチェリカの件については取敢えず終わり、次の事を考えていた。


(ノルンから言われた事を今どうにかできる所までやってみるか)


 以前ギルドで血まみれになったシンが自分の振舞いの事を思い出していた。


(殺気を抑える・・・と言ってもやっぱり誰か必要になるよな・・・)


 血まみれになっていた事については今後気が付いたらどうにかできる問題だ。しかし、殺気に関してはそうはいかなかった。


(・・・やってみると言っておいてもうする事が無くなったな)


 殺気を勘づく事が出来る程の誰かが必要になる。シンが知っている限りではギアかネネラ、グランツギルド長、マリー副ギルド長だろう。

 だが、今は超大陸からかなり離れた島にいる。簡単には戻れない上に後方支援システムの構築が最優先である。


「何をやればいいんだ・・・」


 シンは誰もいないこの島で力無い声でそう叫び、洞窟前の原っぱで大の字に寝転がる。


「・・・・・・・・・・」


 シンはそのまま何も言う事も無く、ただ茫然と空を見上げていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 数分程空を見上げていると不意に自分の右手を見た。


(そういや、この世界って剣と魔法の世界なんだよな。という事は物理攻撃とかが効かない敵とかもあり得るのか)


 この世界では物理的な魔法以外もあるだろう。一番いい例がアウグレントだろう。アウグレントの様に相手を洗脳する事ができる魔法がある。その時の一件ではシンには一切効かなかった。だが、物理以外の攻撃方法はいくらでもある。


(仮想の敵はレーザー砲の様な物とバリアの様な物を持った相手もいるかもしれないな)


 シンは頭の中でバリアに弾かれ、その瞬間を狙われてレーザー砲に焼かれるところを想像した。


「っ!」


 明らかに自分にダメージが入ったイメージをした瞬間、眉間に皺を寄せる。「BBP」の箇所は絶対的にダメージが通らないわけでは無いがほとんどの場合は問題ない。しかし、いくら「BBP」を持っているとは言え、頭と胴体の筋肉や皮膚等は生身の身体であるのは事実だ。

 長期戦になれば不利になる可能性も決して否定はできない。やはり何かしらの対策が必要だった。


「・・・・・何か盾になる物を持って行った方が良いか」


 やはり防御面では何処か心許無い面が多くある。どうしても盾や鎧の様な防御手段が必要になる。

 しかし、鎧であればいくらか体の自由が制限されてしまう。特に「BBP」を持つシンにとってはかなり問題だ。中世ヨーロッパの様なプレートアーマーは論外。タクティカルベストや防弾チョッキの様な物でもそれなりに自由が制限されてしまう。

 となれば盾その物であれば守る面積は限られてしまうが自由は鎧の様な物と比べればかなり良い。

 しかし、これでも問題はあった。盾はどんなに小さくとも頭部を守る位の大きさはある。しかも常に腕に装備する。これでは「BBP」が主な攻撃手段のシンにとっては邪魔以外何物でもない。


「そういった魔法は持っていないし・・・」


 この世界の魔法は使う事は出来ない。シンの言う魔法は「ブレンドウォーズ」の時の物だ。しかし、シンのP(プレイヤー)C(キャラクター)は「BBP」を多めにとっていた為、使える魔法はかなり限られていた。それ故に攻撃はおろか防御に関する魔法は一切持たず、支援に関わる魔法が中心となっていた。


(レーザーとかでも守れるものと言えば・・・バリア・・・とかになるんだろうな)


 実は「ブレンドウォーズ」の世界では「テスラシールド」という装置がある。武具にある篭手の様な形をしており、見た目はかなり近未来的なデザイン。これを腕に装着して電磁バリアを発生させ身を守る事ができる。盾の様に守る面積こそ限られるがほとんどの攻撃を防ぐ事ができる。


(装着ではなく手に持ち、武器として使用ができて、電磁バリアが発生できる物・・・)


 欲を言えば傍から見ても原始的に近い武器に見えて、いざという時武器としても使える盾。


特殊電磁警棒(バリアバトン)、か・・・)


 これは「ブレンドウォーズ」のオリジナル近接武器だ。護身用の市販されている様な伸縮する細身の特殊警棒とスタンバトンが組み合わされた様なデザインで、伸ばすと70cm程になる。

 先端部分を相手に押し付け、グリップのスイッチを押せばスタンガンと同じように電流が流れ、相手を一時的に麻痺(スタン)させる効果がある。しかし、「ブレンドウォーズ」のプレイヤー達では「これを使うなら断然撃ち殺した方良い」、「見せ武器」、「ネタ武器」と言われる程無用の長物(武器)だ。

 しかし、シンが作る特殊電磁警棒(バリアバトン)には電磁バリア発生装置を取り付ける。攻撃が飛んでくる方向に先端を向けてバリアを発生するスイッチを押すと先端を中心にレーザー攻撃ですらも防ぐ事ができるバリアが発生する。


「・・・・・・・・・・」


 そう考えたシンは寝転がりながら「ショップ」を開いた。購入したのは特殊警棒と複数の電子部品、バリア発生装置だった。それらを「収納スペース」から取り出し、「自動開発」に移してある物を作った。


「・・・これも明日か。何かさっきから作る物が全部明日に出来るって・・・」


 かなり時間がかかるのではないかと考えていた。しかし、意外とそんなに時間がかからない事に少し拍子抜けするシン。


「まぁ、いいや。他には何かあったか?」


 シンは瞼を閉じて他にも何か思い当る物が無いか思い出していた。


(今回手に入れた銃器、何を使おうか・・・?)


 シンは「ショップ」で手に入れた銃器のどれを使おうか考えていた。


(ほぼ間違いなく使うのはM2だな・・・。普段持つとしたら、アサルトライフルが良いんだろうけど・・・)


 シンがどの武器を使うのかを考える為に頭の中でそれぞれの武器を使うシュミレートをした。

 今まで扱ってきたアサルトライフルを構えてそのまま撃ち続けるイメージをしてどのアサルトライフルがいいのかを考えていた。


(SCARシリーズが・・・使いやす・・・いけど・・・・・H&Kシ・・・リーズとか、あとKel-Tecのが気にな・・・て・・・・・・・・・・・・・・・)


 頭をフルに活用したせいなのか、いつの間にか微睡が徐々に襲い掛かってきていつの間にかシンは睡魔による闇に囚われていった。



「・・・・・・・・」


シンが目を開けると、オレンジとスカイブルーが丁度中間で混じり合っていた大空が広がっていた。


「ああ、もうこんな時間まで寝ていたのか・・・」

 

 どうやら正午を軽く過ぎて現在の時間は完全に夕方となっていた。そのせいでシンの腹から空腹の悲鳴が叫び始めていた。


「そういや、昼飯食ってなかったな・・・」


 シンの近くには人間はおろか人を襲ってくるような危険な生き物もいない様だ。その証拠にシンは眠っていたとしても自分に害意や悪意を持った者が違付けばすぐに目を覚ましてしまうからだ。それが無いという事は少なくともこの近辺では安全なようだ。そう呟きつつ体を起こし目の前にある風景を見た。


「・・・・・・・」


 紅く染まった太陽が山と山の間に吸い込まれる様に徐々に沈んでいく。山のせいで地上は暗く影を落として、宵闇になりつつあった。その為シンがいる場所も暗く影を落としていた。

 古い呼び方、或いは少し洒落た言い方であれば、黄昏(たそがれ)、夕暮れ、日暮れ、薄暮(はくぼ)と呼ぶ。

 また、日の入り後については宵あるいは宵のうちとも言い、日没直後は宵の口とも言う。さらに、この時間帯は逢魔時(おうまがとき)あるいは大禍時(おおまがとき)とも呼ばれており、化け物や妖怪などの魔物に出会いやすい時間だと考えられてきた。


「すげぇ・・・」


 日の出前の「彼者誰(かわたれ)」は「彼は誰」、日没後の「黄昏(たそがれ)」は「誰そ彼」が元々の意味であり、いずれも薄暗くて人の見分けがつきにくい事から、このように呼ばれる。

 シンは今朝の日の出と、「ブレンドウォーズ」での日の出前の神戸港の事を思い出していた。日の出と日の入りで共通していた事は空が青と赤が混じって独特の美しさが見えていた事。

 そんな2つの日の出と今見ている日の入りを見てふと思いついた。


「・・・この島の名前、決まったな」


 シンはそう呟き一日の最後の瞬間を見守った。


次回から新しいキャラを入れる予定です。

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